西郊ロッヂング 東京都杉並区荻窪3−38
『東京人2000年5月号〜集合住宅物語26』などで報じられましたとおり、荻窪の元高級下宿「西郊」の新館(昭和13年築)は、賃貸マンションとして生まれ変わりました。
 以下の写真は昨年6月上旬。オーナーの平間さんのご厚意により、改築後の西郊を見学させていただいた際の写真です。賃貸部分への入居が始まる一週間前のことでした。
西郊ロッヂング全景
 新しい賃貸マンションの名称は「西郊ロッヂング」。戦前の名前の復活です。それに合わせてプレートも張り替えられ、文字の流れも右から左へ。この外観に限らず、今回の改築は戦前のイメージに近づけるというのがコンセプトになっているようです。
1階の丸窓
 改築前に伺っていたお話の通り、丸窓の隣にあったソファーを置いていたスペースが、新しい賃貸マンションの入口になっています。階段の手すりは向かって右手が昔のままの真鍮で、左が後に付け替えられたステンレス。ただ、これは真鍮に付け変えるという案が持ち上がっているそうです。
 この部屋、見覚えがありませんか? 前回紹介した、作りつけのベットのある101号室です。
 現在、新館のほとんどは賃貸契約した方が入居されていますので、住人の許可なく室内の写真を掲載することはできません。ただこの部屋に限っては、改築は施したものの賃貸の予定はなく、今後も家族の私室として使用される予定であるということで特別に許可をいただきました。
101号室
 もと壁だった部分を、庭に張り出すようなかたちで流しとバストイレが増築されており、いつでも賃貸できるような状態になっています。ではマントルピースはどこへいったのかというと、壁の反対側にまるで家具を移動するかのように移築されていました。
ドアノブ
 トイレのドアノブは昔のドアから外してきたものを使用。こんな感じで、随所に昔のイメージを残すための工夫がされています。
1階の部屋
 101号室の隣、この部屋もオリジナルの状態に近く、今回の改築の際にもほとんど手が加えられていません。今後も家族の私室として使用される予定だそう。

 昭和初期の下宿屋を、賃貸マンションに改築するなんてどこまで… と思っていたけれど、どの部屋も住み心地がよさそうで、荻窪駅にも近いことを考えると、これは掘り出し物と言えるかもしれません。
 不動産屋に配布したパンフレットも見せていただきましたが、笑ってしまったのが「築62年」の文字。女将さんいわく「昭和62年築と間違えてくれたらいいんですけどね(笑)」… だそうです。

(2001.1.22記)