私の田舎は高知県の漁師町だが、小さな町にもかかわらず、二つの映画館があった。夏休みシーズンには満員でドアの閉まらない上映室の中を、祖母に抱かれて通路から覗いた記憶もある。二階の客席には椅子がなく、畳の上に正座して見る形式だった。昭和40年代半ばの話である。
この映画館はサイレント時代の産物だから、内部にはオーケストラピットが用意され、弁士席だったらしいスペースも残っていたという。図面を見る限りでは、二階にもちゃんと客席があったようだ(笑)。
これは後の話だが、昭和45年には映画の上映をやめ、その後は島民の集会場として利用されたという。それだけテレビが普及していたということなのか。
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