二十世紀のうちに公開しなくては、という使命感に駆られての登場となりました、日本堤の廿世紀浴場。建物の持ち主が何度か変わっているため、正確な竣工年は不明ですが、昭和4年ごろではないかと言われているそう。
建物の外壁はスクラッチタイル(表面を櫛引きして溝をつけた粘土タイル)。これまで私が撮影あるいは見学にいった建物のなかだと、
同潤会虎ノ門アパート=昭和4年竣工
千住郵便局(現NTT千住)=昭和4年竣工
同潤会大塚女子アパート=昭和5年竣工
などがスクラッチタイルの物件で、昭和4年頃に集中しています。
松葉一清著『帝都復興せり!』の中には「小学校はともかく、上級学校の設計に際して、文部省は建築に威厳をもたせるためか、フランク・ロイド・ライトの帝国ホテル以来、昭和初期の建築で大流行となったスクラッチタイルを多用している」という一文があり、その他の書籍でも昭和初期にライトの影響でスクラッチタイルが大流行したという記述があります。
ライトの旧帝国ホテルといえば、大正12年9月1日(関東大震災の当日)という劇的な日に竣工しながら、倒壊しなかったことで名を上げた物件。当時の人たちにとって印象深い建物であっただろうことはうなづけます。 |