学術研究

※ここでは「ダイグロシア(diglossia)」を「音声言語(話される言語)と書記言語(書かれる言語。文字言語とも)とが異なる系統の言語によって担われている状況」という意味で使用しています。

ダイグロシアと書記言語(Diglossia and written language)

 研究概要

合わせると日本の数倍の面積という広大さに,政治体制や歴史,文化の相異が存在しているのが下記の地域ですが,ダイグロシア社会であるという点ではこれらは逆に共通点を有しています。例えば,香港と澳門では音声言語は広東語(学術名称は粤語(エツゴ))ですが,書記言語は(少なくとも建前は)規範的な中文です。広東語は漢語系諸語(日本では中国語方言と言われることが多い)の一支系に当る言語と考えられますが,規範的な中文とコード上対応する北京方言や南京方言に代表される官話(日本では北方中国語と言われることがある)とは系統を異にしています。
 吉川
の研究はこのダイグロシア社会を中心テーマの一つとしています。歴史的に下記の地域では「読み・書き」は唯一の書記言語によってのみ担われてきました。その「読み・書き」という言語活動とその産物である書記言語が音声言語との間に有する・生じる動態を,扱っています。@音声言語の書記言語化,A音声言語の影響による書記言語の変質,B言語規範とその受容,などが課題として挙げられましょう。
 音声言語を体系的に表記する文字システムを持たなかった,あるいは持つも当該コミュニティで共有・浸透するに至らなかったことが下記の地域に概して認められる特徴ですが,19世紀以降は欧米人により様々な表記法が考案されてもいます。そのため,近現代における書記言語体系の開発・付与という点では「ダイグロシアと書記言語」というテーマは,吉川にとってもう一つの研究テーマである「東西言語文化交流」と繋がっています。


香港・澳門
〈準備中〉
中国南部
〈準備中〉
台湾