望遠鏡の起源

凸レンズと凹レンズを組み合わせたガリレオ式、もしくはオランダ式と呼ばれる望遠鏡は、世間一般では1608年にオランダの眼鏡職人ハンス・リッペルスハイが発明したとされていますが、実のところ、少し違うようです。

リッペルスハイは1608年10月2日、望遠鏡の特許権をオランダ国会に申請したそうですが、同年12月15日には拒否されています。理由は「類似品が既に国内に出回っている、単純過ぎる」だとか。また、リッペルスハイの特許申請からたった12日後の10月14日、アドリアンソン・メチウスが同じく望遠鏡の特許権を申請しています。勿論、彼も特許権は認められませんでした。

リッペルスハイは望遠鏡を大きく発展させた可能性はあります。しかし望遠鏡自体はそれ以前から既に作られていたようです。 初期の望遠鏡とは、老視用眼鏡の凸レンズと近視用眼鏡の凹レンズを組み合わせた2倍前後のモノだったそうです。望遠というより視力増幅といった感覚だったのでしょうが、原理としては紛れもなく望遠鏡です。 既存の望遠鏡と彼の望遠鏡は何が違ったのでしょうか。既存の望遠鏡は一般的な眼鏡用のレンズを使っていたため、度の絶対値が近い凸レンズ・凹レンズの組み合わせでした。ですから2倍前後の望遠鏡しか作れなかったのです。 対してリッペルスハイは、普通より焦点距離の長い凸レンズ、普通より焦点距離の短い凹レンズを組み合わせる事により、(比較的)倍率の高い望遠鏡を作ったそうです。 しかしリッペルスハイの望遠鏡が今までより進化していたとはいえ、所詮は延長上の物でしかありませんし、高倍率化の第一人者であるとも言い切れません。

リッペルスハイ以前の低倍率望遠鏡の製造者の一人として、イタリアのデラ・ポルタという人物がいます。 ポルタは1589年に「Magica Naturalis(自然魔術)」という本を書いており、その中で彼は、カメラオブスキュラー(ピンホールカメラ)の穴を拡げ、そこに凸レンズを嵌め込んだ、現在と同じ原理のカメラを考案しています。 その「Magica Naturalis」に望遠鏡の原理も記されているそうで、1604年にはこの文献を元に、一般に複式顕微鏡の発明者と云われるツァハリアス・ヤンセンが望遠鏡を製作したと言われています。

ポルタの例から見て、望遠鏡の発明は1589年より前に遡る筈です。しかし一般に云われるリッペルスハイの望遠鏡は1608年。 最初の発見は、恐らく工業ギルドと呼ばれる眼鏡職人の集団あたりの誰かだろうと思われますが、人々は望遠鏡が或る程度高倍率化するまでその発見の偉大さに気付かなかったのでしょう。 その結果、望遠鏡の発明者は今となっては特定が不可能となってしまったのではないでしょうか。

いずれにせよ、望遠鏡の発明者は判らないという事は現時点では確かですが、上記のことで特筆すべきなのは、オランダの望遠鏡はイタリアから持ち込まれたとも解釈できる事柄です。 私が調べた情報(日本の文献)の中では望遠鏡は1600年前後にオランダ辺りで作られ、イタリアに伝わったというような記述が多く見受けられましたが、その辺りから既に信頼性が欠けるようです。 寧ろ、ポルタの件やイタリアでのガラス業の発達からすると、イタリアで発明された可能性の方が高いようにも思えます。

*内容の信憑性については保障できません。他の説や誤りなどありましたらご連絡下さい。


参考文献:
「最新 光学技術ハンドブック(第一章:光学技術史,鶴田匡夫)」辻内順平 他/朝倉書店
「巨大望遠鏡への道」吉田正太郎/裳華房
「天体望遠鏡クラブ」平林茂人/誠文堂新光社
「顕微鏡と望遠鏡の源流を訪ねて」久保田諄/大阪経大学会 大阪経大論集第53巻5号
FLORIDA ATLALANTIC UNIVERSITY内のガリレオのページ
情報提供:
福田様 (http://www.h2.dion.ne.jp/~kazuf/sao/index.htm)
加藤様 (http://www.asahi-net.or.jp/~nr8y-ktu/)
ありがとうございました!

First Published 2005.04.03

Last Modified 2006.01.09