射出瞳径

双眼鏡を明るい方に向けて接眼レンズから30cmほど離れると、光(向こう側の景色)の円が見えます。これを射出瞳と言い、この直径が射出瞳径です。

射出瞳 大 射出瞳 小

この数値は主に明るさに関する数値です。 射出瞳径が大きいということは目に入る光量が多いわけで、 その分像は明るくなり、識別能力も高くなります。 又、光量が多くなるということは目に入ってくる情報量が 多くなるということで、理論上では僅かながら解像度も高くなります。

実は対物レンズ有効径とこの射出瞳径の比が倍率で 次のような関係式が成り立ちます。

射出瞳径 = 口径 / 倍率

倍率が上がると像が暗くなるというのは射出瞳が 小さくなるからなのです。 例えば瞳孔が6mm、射出瞳径が6oだったとすると瞳孔に対して 100%の光を得られますが、射出瞳径が3mmであれば、 瞳孔の面積は36πcm2、射出瞳径は9πcm2ですから 得られる光量は25%になってしまいます。 最高の明るさで見るためには瞳孔と同じだけの射出瞳径が 必要となるわけです。

夜だとヒトの瞳孔は開くので、射出瞳は大きい必要があります。同じ倍率で射出瞳を大きくするためには口径を大きくしなければなりません。 だから天文用の双眼鏡は大きいのです。逆に、瞳孔が開かない、明るい状況で使用する場合は射出瞳も小さくて済みます。詰まり、日中に使うときは大きな双眼鏡は必要ないのです。

ヒトの瞳孔は一般的には、およそ

日照下  2.5o
屋内      4o
暗闇      7o

だそうです。ヒトの瞳孔は約7mm迄しか開かないのですから、 射出瞳径はそれ以上大きくてもあまり意味がありません。 5×50の射出瞳径10mmの双眼鏡を瞳孔4mmの状態で使ったと すると、周辺光は遮られて実質の対物レンズ有効径は20mmと なってしまいます。 それなら初めから20mmの双眼鏡を使った方が軽いし、 恐らく値段も安くなりますからお得です。 詰まり双眼鏡の使い道によって射出瞳径を選択し適切な 双眼鏡を使うコトが大切なのです。 あ、いや、別に用途別に双眼鏡を複数台買えって言ってる 訳じゃないですよ(^^; 夜間は多少暗くなっても8×32とかはオールマイティに使えますし。 専門性をあまり求めないならば大丈夫です。・・・だと思います。

余談ですが、光学機器においては(カメラ用語か?)光線が 遮られることを「ケラレる(蹴られる?)」と表現するようです。 名詞形は「ケラレ」のようで。


先程、瞳孔以上の射出瞳径は意味が無いと言いましたが 実はそうでもない事もあります。 瞳孔と射出瞳径が等しければ、眼球を動かすと瞳の位置も 動きますからケラレることは必至です。 しかし、射出瞳が大きいと眼の位置がズレても視野がブラックアウト しないのです。

また、第二次世界大戦中の日本空軍では、揺れの激しい機内での 使用に耐えるよう、射出瞳の大きな双眼鏡を使っていたそうです。 (とか聞いたことがあるような気がする) メガネ着用で覗くときも有効かもしれません。 又、人によっては瞳孔が7.6mmまで開くという話もあります。 現にツァイスでは7×56という双眼鏡があったそうです。 (だとか、どこかで見た記憶が・・・曖昧) やっぱり射出瞳径は大きいに越したことはありません。

最終更新日 2006.01.09


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