デンバーとほほ往復記


デンバーにはクレインコミュニケーションというつき合いのあるメディアがあって、行きたくはなかったけれど社長命令がおりた。「行きなさい!」
そこでしかたなく某安売り専門の代理店に頼み、デンバー往復8万2千円のチケットをゲット(でもないか・・)10月8日出発とはあいなりました。


=10月8日(日)=
さて、10月8日は日曜日、つまり連休をつぶしての出張です。しかし他に予定のとりようが無くこれはまぁ仕方がなかったんですけどね。成田エクスプレスで成田へ、無事にチェックインもすませ、飛行機は一路中継地のサンフランシスコへ。何ごともなくイミグレーションをすませ、出口とは反対の「コネクションフライト」と書いてある方へ。しかし進んでいくと人気のない手荷物チェック機があるばかり。まごまごしていると、近所のオジサンが「ドコヘイクノダ?チケットヲミセロ」というので、無言でチケットをみせると、「アァ、コレナラ84バンゲートダ」とわざわざボーディングパスに「84」と大書してくれました。「ソコノカイダンヲアガッテマッスグアルケ」とオジサン。 言葉に従って、2階に上がってとにかくまっすぐ進むとたしかに搭乗口がありました。(随分あるきましたけどね)ディスプレーの表示も間違いなく「デンバー」、時間、搭乗口とも間違いなし。これで一安心。84番ゲートには他に30〜40人が待っていました。出発時間より1時間以上早いのですが、「慎重な人がアメリカにも多いのだな」とひとり納得。
さて、のんびりとした時間も過ぎ、そろそろ出発30分前になりましたが、何の案内もありません。どうしたのかな?そういえば「84バンノデンバーイキハツゴウニヨリ90バンゲートニヘンコウニナリマシタ」、というような放送が10分ほど前にあったような気がしましたが、周囲の人たちは誰も動こうとしないし、聞き間違いだったのだろうと思ってました。そこで搭乗口にフライトの確認に行ってみると、なんとデンバー行きが出ていません。それどころか、その後のフライトの表示と、その搭乗が始まっているではないですか・・。おかしい!と思って、再度搭乗口案内ディスプレーを見に行くと、なんと90番。ひーん・・。そこでせっこら歩いて90番まで行くと、すでに搭乗が始まってました。
そりゃー英語が不自由なのは認めるけど、早口の英語の案内で、しかも一回きりというのはないだろ!ねぇ。
結局ゲートに着いたのが早すぎたということなんでしょうけど、なにしろこちとらは安売りチケット。十分な余裕を持って移動しないと、途中でフライトの変更はできないんですよ。だからもし遅れでも生じると、その後がやっかいなので、十分すぎる時間を見ているわけです。

でも、まぁサンフランシスコからデンバーまでは窓側の席でいい天気。デンバー到着までずーっとロッキー山脈をながめていました。西部開拓というのも、幌馬車をつらねてこの山を越えていったのだから大変だったんだなぁ・・とすっかり余裕も。

デンバー空港は都市の規模に比べてやたらと大きな空港でした。なにしろ各ターミナル間を地下鉄が走っている!(トラムというらしい)それに乗ってようやく出口に到着するんです。そこからデンバー市街まではいろんな方法があるのですが、まったく地理には不案内だし、それに安売りチケットでここまで来たのだからタクシー位かまわんだろ、と早速タクシー乗り場へ。
タクシーの運ちゃんは60位の気のよさそうなオッサン。「レッドライオンホテルヘ」と頼んだところ、「ソンナホテル知ラナイ、住所ヲオシエロ」というので「コルファックスストリート1150」と行ったところ「OK」。
さて、デンバー市街へ向かう途中は、荒涼とした大平原。地平線というのがずーっと見えていて、ほとんど笑いたくなりました、ホント。市街地に近づくと周りが公園のようになっていて、季節が良いせいか黄葉がきれいでした。赤い紅葉はないんですね。

「ツイタヨ」とドライバーのオッサン。おいおい、まだ市街地に着いていないじゃないか、と思ったのですが、オッサンは自信満々。ふと見ると建物のガラス窓に確かに「コルファックスST.1150」と書いてあります。しかしどこにも「レッドライオンホテル」とは書いていないし、なにしろこんなところがホテルにも見えない。・・・ホテルというと、普通にぎやかな通りに面した堂々とした入り口に、広いホールとカウンター。お仕着せを着たホテルマン、という感じじゃないですか?・・たしかに住所は間違いないので、愛想のいいオッサンドライバーに支払い、おずおずと中に入りました。「ラマダイン」と書いてありました。「イン」なんだからホテルの一種ではあるんです。
小さなロビーと汚いカウンター。中ではひとりオバサンが電話でなにやら忙しそうに話し合っている。電話が終わるのを待っていると、ロビーにいたオッサンがいきなり、「オマエハ中国人ダンタイノ添乗員カ?」と訊くので、「No。ニホンジンデアル」と答えました。どうしたそんなこと訊くんだろ?さてカウンターのオバサンの電話が終わったので、「ココハレッドライオンホテルカ?」と訊いたところ「ソウデハナイ」との返事。「デハ、レッドライオンホテルハイズコカ?」と訊くとなにやら難しそうな返事、というか、彼らもよく分からない様子。と、そこで急にカウンターのオバサンが、「オマエノ名前ハナニカ?」というので「ワタシのナマエハDAIKON(偽名)デアル」というと急に納得がいった形で「デワ、クレジットカードヲダセ」というのです。おいおい、こんな安ホテルに泊まるつもりはないよ。「シカシワタシノ予約ハレッドライオンホテルデアル」というとオバサン「シカシ住所ハココデアル。予約モラッテイル。旅行代理店ノマチガイデアロウ」、とのこと。そういえば「レッドライオンホテル」というのは「旧ラマダホテル」との注意書きがバウチャーに入っていたのを思い出しました。まぁ人間工学的なミスではありますがね。ラマダというのは、有名なホテルチェーンらしいのです。だから汚いけど氏素性の怪しいホテルでもないようなので、「オーケー、ワタシハ理解シタ」と素直にクレジットカードを出しました。ホントは泊まりたくなかったけど、代理店には前払いだし、そこを出ても市街地までの交通手段も分からないし・・。
通された部屋は(と言っても鍵を受け取ってひとりで行ったのだけど)広さは日本のホテルに比べれば立派なモノ。なかも清潔で、一応のファシリティは揃っている。ベッドはキングサイズで、縦より横のほうが長いくらい。テレビも大きく、アメリカらしくチャンネルが50ほどもある。まぁいいかぁ・・・。
しかしエアコンはいけません。GEの年代物で点けるとものすごい音がする。聞きようによっては頼もしい運転音とでもいうのでしょうか。バスタブにはお湯が溜まらない、洗面所の水はけが悪いのはまぁアメリカですから良しとしましょう。

さて、まだ陽も高いし早速散歩に出たのですが、これがね、どうも雰囲気がちがう。マクドナルドもウェンディズもあるのですが今ひとつ違うのです。荒れた様子というか・・。それでもせっせと歩いて市街地の方に。途中にあった新しいけど立派な教会に入って、ステンドグラスを拝見し、さて出てきたところで、「テンゴクカラチジョウニモドッテキタノダナ」あるオジサンがそんなことを言いながら話しかけてきました。よく分からなかったのですが多分そんな事を言ったのだと思います。でも、どう対応して良いのか分からなかったので「ワタシハリカイデキナイ」と逃げてしまいました。外を歩いているとクルマから顔をだしたお兄ちゃんが「ハロー!ハワユー?」と声をかけてくるし、どうなってんだ?この町は。

ホテルに戻ってAOLに接続、とコンピュータを取り出してアクセスしてみましたが繋がらないのです。シクシク。ウィーンからだって繋がったのにどうして?としつこくつなごうとしたのですが、回線を拝借したベッドサイドの電話機には「市内電話1回50C」と書いてある。一回つなごうとするたびに60円ほど取られるということです。外線につなぐための「8」を打って、それからAOLのデンバーの番号を入力して設定してあったのですが、ピッポッパの後は英語のアナウンスが微かに聞こえるばかり。多分日本語では「おかけになった電話番号は現在使われておりません・・」という例のテープだったんでしょう。
されば、ということで今度は力業で日本の藤沢のポイントにつなごうとしたのですが、これもあっさりと蹴られてしまいました。どーしてかなぁ?


=10月9日(月)=
翌日は9:30からの打ち合わせ。その前に朝食を、と食堂に降りていきました。ところが食堂は準備中。朝の7:20位だったんですけどね。中にいたおにいちゃんに「ココデ朝食ヲトレルノカ?」と訊いたところ「No」の返事。なにやら食堂は奥まったところらしいのです。言われたとおり廊下を進んでいくと、右手に確かに食堂、人の話し声もする。やれやれここだ、と入ろうとしたら、中は全員中国人、空いている席も一つもありません。で、出直すことにしました。20分ほどしてまた来ると、今度は中に誰もいません。で、たまたまでてきたお嬢さんに「ココデチョウショクヲトレルノカ?」と訊くと、「サァ・・タブン」と訳の分からない返事。バウチャーには「朝食を含む」と書いてあったのですが、そんなことここで言い募ってもしょうがないし、結局もとの食堂でパンケーキを頼んでしまいました。(好物なんです)おわかりのように大きすぎて食べ切れませんでしたけどね。はい、もちろんしっかりと料金はとられておりました。

9:30に訪問する会社は郊外の小さな白いビルにありました。ここの責任者であるオバサンには、ここを訪問するずーーっと前から「ホテルを紹介して欲しい」旨メールを何回も入れたのですが、とうとう返事が来なかったものです。どうもアメリカ人は自分の利益に直結しない面倒なことは無視する傾向があるようですね。ったく。
先方は3人、さすがに通訳は用意してくれていました。でもね、この通訳が勉強中といった感じで、訳は間違えるわニュアンスがオーバーに過ぎるわでちょっとねー。といった感じでした。でもいないよりはこっちもずーっと気楽でしたからいいんですけどぉ。ところで約3時間にわたるミーティング中、コーヒー一杯でるわけでなく、一杯の水があるだけでした。12時も過ぎ、打ち合わせもおおかた終わって、さて「イジョウデス」と言ったところ、すかさず「タクシーヲヨビマスカ」と来たもんです。オイオイはるばる日本から来たのに(往復24時間もかかるのですよ!)もう追い返すのか?と思いましたが、そうも言えず・・・。「サンキュー」を私は言うばかり。タクシーも到着、丁寧に追い出してくれました。クッソー!

とはいえ、デンバーは初めて、午後を市内見物にするのもいいな、と気を取り直し案内書に書いてあった「サクラスクウェア」というところまでタクシーを飛ばしました。案内書には日本人の集まるところ、というような趣旨の記述があったので、日本語の通じるレストランでもあるのだろうと想像していったのです。ところがぎっちょん、怪しげなスシバーと日本語書籍のおいてある本屋があるばかりで、他になーんもないのです。そのスクウェアを一回りし、近所のビルを覗いたところ、そこに「ビーフボウル」の看板が。「お、牛丼だ」と思ってガラス越しに中をうかがうと、中はウイークデーだというのに背広やネクタイの人は誰もおらず、ちょっと雰囲気が違う・・で、パス。
結局目抜き通りをなんどか行きつ戻りつした結果、ビルの一角のマクドナルドに沈没。まったく情けない。トホホ。食べ慣れたモノをということで、「ビッグマックのセットを頼みました。こちらでは、店内で食べるといってもやはり袋に入れてもらって、それをテーブルで開けて食べるようです。カウンターに持ってきてくれたのはやはり大きな袋。受け取ってテーブルで開けると、なんと頼んだ筈のコーヒーが入っていません。荷物が気になりながらもカウンターに戻りコーヒーが入ってないぞ、と文句を言うと今淹れているところだとの返事。たしかにコーヒーメーカーがブツブツと音を立てておりました。 で席に戻って「できれば呼んでくれるだろ」と思ったのは甘かったですね。しばらく経ってもお呼びは無し。もう一度文句を言いに行く気力も失せて、まぁいいか・・・。と結局あきらめてしまいました。時間が経っていたので、またいけば飲み物の請求をされそうな感じだったし、喧嘩する会話力はないし・・。

デンバーの人口は45万人ほど。(タクシーの運ちゃんは200万人はいるだろってなこと言ってましたが、どう見ても100万人はいないですな)コロラド州の州都とはいっても小さなモノで、小一時間も歩いているとだいたい一回りするんです。勘を働かせて市街地の繁華街を探したのですが、これが見つからなかったですね。デパートも見つからなかった・・・ないんじゃないか??街のビルはみんな新しくて、冷たい感じで好感は持てませんでしたね。こんなところに住んでいたら退屈でしょうなー。ホント。スターバックスはおいしかったですけどね。そうそうスターバックスでトイレを借りようとしたところ、男子用トイレは壊れていて、女子用のトイレを借りました。中に入って考えたのですが、中は同じなんですね、考えてみれば。


=10月10日(火)=
そんなわけで、デンバーはもういいやと、翌日10時半の飛行機だったのですが、8時にタクシーをよんでもらいました。短い間にあまりにもいろいろあったので、きっと何かまだ悪いことがあるぞ、と思いながらデンバー国際空港へ。しかし何ごともなくチェックイン。ちょっとまごまごしたけど何とか出発ロビーにたどり着いたのはまだ9時前でした。ボードを見るとサンフランシスコ行きは9:20と10:35分。後の方に乗る予定です。時間たっぷり。 ところがサンフランシスコ行きになにやら余計なことが書いてある。「9:20発サンフランシスコ行きは10:00発に変更。その後も遅れる予定なのであなたのエージェントに言って、早い便に搭乗して下さい」と書いてある(らしい)ではありませんか。エージェントってなんだよう・・。やっぱりあったよ、心配していた通り。
早い便といっても私の持っている安売りチケットは団体旅行用の切符のばら売りなので、便の変更はできないはずなのです。遅れて乗り継ぎできなかったらどなるんだろ?腹を据えて土産物屋を物色。なにかその街らしいものを一つ買って帰るのが私の習慣なんです。すると、サソリの入ったペーパーウェートが約5ドル。これこれ、と思いましたが、まだ時間はたっぷりあるのでもうちょっと見て回ろう。
しかしどうしてもフライトの遅れが気になる。それにさっきまででていた10:35発(オンタイム)というのが、「遅れ」になってしまった。困った、日本に帰れなくなるかもしれない。(本気で心配したわけじゃないですが、どうしても水曜日中に帰らないと翌日のアポイントがたくさんあったし)そこでボーディングパスをじっくり見ると、エコノミーだけど別に安売りチケットと書いてあるわけじゃない。ダメもとで、ということで1便早いフライトの搭乗口に行って、「カエテクレルカ?」と訊いたところ「シュア」だと。「案ずるより生むはやすし」の典型ですね。
さて、9:20発が遅れて10時となっていましたが、搭乗はすぐに始まりました。で、結局サソリのペーパーウェートは買えなかった。でも結局そのフライトはさらに遅れて、テイクオフしたのは10:40位でしたね。つまり後の便とほとんど同じ時間帯になってしまいました。これでフライトの変更をしなかったらどうなったんだろ?って誰でも思いますよね、普通。

サンフランシスコ空港について、やっぱり乗り継ぎで少しまごまごして、でも出発の1時間以上前に成田行きのゲートにたどり着きました。免税店でカミさんに頼まれた買い物をすませ、やれやれと思っていたところにまた場内アナウンスが・・。「東京成田行きをお待ちのお客様に申し上げます。当フライトは乗り継ぎ便の遅れのため、出発が約30分遅れ、14:30分頃になる予定です」(日本語)・・・結局デンバーで慌てなくても良かったんです。なんてこったい。


10月11日(水)=
もう何があっても驚かないぞ。通関で足止めを食うぞ。「きっと空港では『成田エクスプレス』が行ったばっかりで、1時間も待たされるぞ」などと覚悟を決めながらも、成田ではすんなりパス。エクスプレスも10分も待たずに大船行きに乗れました。「やれやれ、たった二日間だけどやっぱり日本は良いな。そばかうどんが食べたいな」そんなことを考えながら午後8:00頃に腹をすかして藤沢の家に帰り着きました。ところが我が家はもぬけの殻。
腹ぺこの私は、鍋に冷えていた豚汁と冷凍庫のご飯をレンジでチンして、ひとりでぼそぼそ食べましたとさ・・・。