狭い鎌倉とはいえ、ルートから200メートルも外れるとすぐに観光客はまばらになる。 海蔵寺は、源氏山公園の登り口からやや奥まったところにある、閑静な寺だ。手入れの行き届いた寺域は狭いがそれなりに観光に力を入れているようにも見える。建立は1394年というから、新しい寺ではないが、何度かの戦災で消失し立て直されている。現在のものは関東大震災によって倒壊した後に再建されたものだ。ご本尊は「薬師如来」。開け放たれた仏殿からは、脇侍仏と12神将とともに拝観できる。 さて、問題の井戸は本堂の手前を左に進み、小さなトンネルをくぐったところにある。鎌倉石を穿ったかたちは、まさに「やぐら」そのものだ。しかし内部には縦4列、横4列に綺麗に並んだ16の井戸?が? 「井戸」と言ったところでその深さは40センチ〜50センチ程度。水をすかしてみると誰かが投げ入れた「お賽銭」も見える。これが屋外で、地域が明日香か北九州なら、弥生時代の掘っ建て柱の跡、ともいえるだろうが。 古くは「功徳水」と呼ばれ、衆生の病を癒したとされるため、このごろは仏教に用いる「あか水」を採取するためのものと考えられているようだが、どうだろうか。 |