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ひたすら石段を駆け上り、途中何度か呼吸を整える為に足を止め、ようやく高耶に教えられた祠に辿り着いた。

「あ、あれか・・・」

一応高耶が前もって話を通していると分かっていても、祭られている場所から物を取るというのは些か居心地が悪い。
は周囲を見回し人影がないのを確認すると、そっと小さな木戸を開け、座布団のような物に乗っていた真っ白な石に手を伸ばした。

「・・・」

軽く指先で触れ、何もないのを確認すると・・・慎重に石を両手で包み込んだ。

「と、取れた・・・?」

ホッと胸を撫で下ろし、直江から預かった袋の中に入れる。
そうして開けた木戸を再び閉め、何となく両手を合わせる。

「絶対変な事には使いません。終わったらまた返しに来ます。」

深々と頭を下げると祠に背を向け、は休み休み登ってきた急な石段を一目散に駆け下りた。




















「おー、案外早かったな。」

鳥居のすぐ側で座り込んでいた高耶が顔を上げて石段の方へ視線を向けた。
隣に立っていた直江は何も言わずにが降りてくるのを待っている。

「ただい・・・まぁーっっ!!

急な石段を一気に駆け下りた所為か、それとも2人の姿を見つけた安心感からか・・・あと数段で地面、という所でが階段から滑り落ちた。

さん!」
っ!」

砂利が敷き詰められた地面にその体が落下するよりも早く・・・直江の逞しい腕がその体を抱き上げていた。
がゆっくり目を開けると、すぐ側にあったのは心配そうに見つめる優しい瞳。

「怪我はありませんか?」

「だ、大丈夫・・・です。」

「最後に心配させんじゃねぇよ。」

「ごめん、高耶。でもほら、石は無事だよ?」

「・・・そう言う意味じゃねぇって。」

「え?」

直江が抱き上げていたの体を足から地面に下ろすと、高耶はの額を軽く指でつついた。

「そんな石よりも、お前の方が大事に決まってんだろ。」

「・・・高耶。」

「サンキュ、助かったぜ。」

時折しか見せない少年らしい笑みを浮かべると、高耶はの手から白石の入った袋を受け取り、袋の口を緩めると中を覗き込んだ。

「へぇ、結構小さいんだな。」

「そう?あたしの手の平にちょうどぐらいだったけど・・・」

「お前の手が小さいんだろ?」

「・・・うぅ、否定出来ない。」

「脳みそと同じぐらいだもんな♪」

「それなら高耶だってあたしと同じぐらいでしょ!?」

「俺はそこまで小さくない。」

「嘘っ!テストの平均点が30点のくせにっ!」

「それは昔の話だろ!!」

またいつものようにじゃれあい始めた2人を見て、直江が苦笑しながら声をかける。

さんのおかげで大分早く事が済みました。晴家との約束の時間までまだ時間もありますし、何処かで食事でもしませんか?」

直江の言葉に高耶との2人が同時に動きを止め、顔を見合わせた。

「そういえば腹減ったな。」

「・・・あたしも。」

「では、ここへ来る途中感じのいい郷土料理の店がありましたから、そこへ行ってみましょうか。」

「お、いいな。」

「郷土料理♪」

「ここの郷土料理は食べた事ありますか?」

「ないです!っていうか、まともに郷土料理って食べた事なくて・・・凄く楽しみです!!」

「では、頑張って下さったさんに今日はご馳走させて下さい。」

優しい笑みを携えながらの手をそっととった直江に見惚れつつも、不意に自分が羽織っている上着の事を思い出してが口を開く。

「・・・あの」

「はい。」

「上着・・・凄く、温かかったです。」

「それは良かったです。」

「それに、あの・・・直江さんの煙草の香りに包まれてる感じがして、何だか安心出来ました。」

「・・・さん。」

何処となく甘い雰囲気が辺りを包みだした時、ゴホンというわざとらしい咳払いが聞こえてが顔を真っ赤にして直江の手を離した。

「あ〜・・・先、行くわ。」

「高耶さん。」

前を歩き出した高耶に直江が何かを手渡すと、高耶は小さく手を振って走り出した。

「あ、高耶・・・」

後を追おうと走り出したの手を・・・直江が掴んだ。

「・・・?」

「ゆっくり、歩いて行きましょう。」

「直江さん?」

一度は離れてしまった手を、今度は直江の方から・・・しっかり指を絡めて握り締める。

「今日は本当にありがとうございました。」

「そ、そんな事・・・」

さん。」

「は、はい?」

「今度、お食事にお誘いしてもいいですか。」

「・・・は?」

突然の直江の申し出に思わずの足が止まる。

「今日のお礼を個人的にしたいのですが、さんのご都合は如何でしょうか。」

「お礼って・・・今日、高耶と一緒に食事をご馳走して貰えるだけで充分ですよ!?」

「私が、貴女と2人で食事したいんです。」

「・・・」

「今度の日曜日はお暇ですか?」

驚きの余り声がでない。
けれどはイエスを意味するよう、精一杯首を前後に振った。
それを見た直江は僅かに口元を緩め、高耶のいる駐車場へ視線を向けた。

さんはイタリア料理が好きでしたね。ちょうどいい店を知っているんです。」

「・・・」

「また改めて連絡します。」

「・・・は、はい。」

「楽しみにしています。」





そんな会話を繰り返しながら先に車に戻っていた高耶の元へ戻った時、の顔はまるで熱でも出たかのように真っ赤に染まっていて高耶を酷く驚かせた。
けれどその原因である直江は、まるで何も無かったかのように携帯でこれから向かう店へ予約も兼ねた連絡を入れている。










高耶の服のポケットに入っている白石が、袋の中で気づかれないよう眩い光を放つ。
血を受け継いだ女性しか入る事の出来ない神社、と言う云われは・・・ひょっとしたら孫の恋の応援をしたいご先祖様からのメッセージなのかもしれない。





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121212hitをゲットされました みこと サンへ 贈呈

『高耶&直江と一緒に調伏』と言う、サイト初の蜃気楼リクでした!
調伏力が夜叉衆にしか存在しない力なので、調伏現場に密着、と言う形を取らせて頂きました。
桑原先生のような素敵な臨場感には爪の垢程にも近寄れませんが、調伏シーンは頑張りました!
少しでもあの緊張感が近くで感じられれば嬉しいなぁと思います(ドキドキ)
ちなみにこの話、何度もボツをくらってます(苦笑)全部で5回程書き直しました。
最初に千秋と高耶のシーンを持ってきたら、流れがスムーズになったんですが、意外にオイシイ部分を安田殿が持って行ってしまいました(苦笑)千秋好きな私の所為かもしれません(笑)
えー、結局高耶達が何の為に石を必要としてるのか、その石を祭ってる場所は何!?と言うのはさらっと流してください!何も、考えておりませんっ!(キッパリ)
みことさん、リクエストありがとうございましたv
少しでも楽しんで頂けると嬉しいです!
また遊びに来て下さいねvvv