The signs of LOVE







「お邪魔します!」

「はい?」

バタンと勢い良く部屋の扉が開いたかと思うと、即座に閉められ鍵をかけられた。
そしてそのまま僕の後ろに回りこむと、机の下にその小柄な体を滑らせた。

?」

「あたしはいないから!」

「・・・はぁ。」

がそこまで言い切った直後、僕の部屋の扉が物凄い音で叩かれた。

!そこにいんだろう!!」

その声の主は・・・曰く、始終不機嫌な太陽、金蝉だった。
僕は読んでいた本を閉じると同時にため息をつくと、足元に散らばる本を避けながら扉へと進んでいった。
一度はかけられた鍵をゆっくり開け、何食わぬ顔をして突然の来客を出迎える。

「おや?どうしたんです、そんなに血相を変えて。」

「あの馬鹿はどこだ。」

「捲簾なら今日は部下の方に誘われてどこかの花を愛でに・・・」

「そっちの馬鹿じゃねぇ!」

あっさり言い切られたと言う事は捲簾・・・金蝉の中でも貴方はやはり馬鹿と認識されてるみたいですよ。
我が軍大将がそんな事でいいんでしょうか。
今度もう少しキチンと教育しないといけませんかねぇ。
そんな事を考えている僕の手を掴んで金蝉が部屋の中へ視線を走らせた。

「・・・とっととあの馬鹿を出せ。」

「ですから、僕の知ってる馬鹿は今・・・」

!お前がここに逃げ込んだのはバレてるんだぞ!」

しかし金蝉の声に帰ってくるのは扉を無理矢理こじ開けようとしている事により、微妙に崩れそうになっている本の音だけ。
やれやれ、このままの勢いで屋探しでもされてたら本が傷みかねませんね。
僕は開いているもう片方の手でずれたメガネを直すと、笑みを浮べ金蝉へこう言った。

「金蝉、ここにはいません。先程から僕が書類を書いていたんですから、それは事実です。」

「書類?」

「はい。」

「本を読んでいたんじゃないのか。」

「いいえ。」



・・・書類を書いていましたよ?
まぁ読んでいた本について疑問が出てきたのでそれについてまとめていた、と言い換える事も出来ますけどね。



「・・・本当にいないんだな。」

「はい。」

何度目かの質疑応答の後、ようやく納得したらしい金蝉はを見かけたら必ず自分の所に連れてくるよう言い捨ててその場を去っていった。



――― 台風一過



パタンと扉を閉めた瞬間張り詰めた空気に耐えられなくなったよう、部屋に積まれていた本の山が崩れた。

「さて、。今度の原因は何ですか?」

クルリと扉に背を向け、のいる方へ視線を向けると・・・申し訳なさそうに手に握られていた書類を差し出してきた。
上級神へ出回る書類の裏面には・・・数行の音符が書かれていた。

「金蝉の部屋で悟空と遊んでる時に、すっごくいいメロディ思いついて手近な紙にさらさらっと書いたら・・・」

「・・・重要書類だった。」

「うん。」

素直に頷くは潔いと言うか何と言うか・・・自然と僕の頬が緩む。

「思いついたらすぐに書かないと忘れるじゃない?で、手近に紙があったらそこに書くじゃない?」

「そうですねぇ。」

「でしょ?それなのに金蝉ってば何も言わず怒るのよ?」

「金蝉はカルシウム不足なんですよ、きっと。」

「成程ね。」

ポンッと手を叩いて素直に頷くを見ていたら、どうしても想いが溢れて声になってしまいそうだ。



貴女の純粋さも、眩しさも・・・その全てに僕は惹かれずにはいられない。



「でも今日は天ちゃんのおかげで助かった!ありがとね。」

そう言うとは部屋の扉をそっと開け廊下へ顔を出した。

「・・・行くんですか?」

「うん。また戻って来ると天ちゃんに迷惑かかるし・・・」

苦笑しているの手を掴むと胸に抱き寄せ、そのまま部屋の扉へ体重をかけて扉を閉めた。
突然の事に驚いているは、ただただ目を丸くして腕の中から僕を見上げているだけ。

「天ちゃん?」

その目は僕を信頼しきっていて、一点の曇りもない。
雲に覆われる事無く、輝き続ける太陽のような瞳。

「・・・僕はの事が好きですから、別に迷惑なんて思ってませんよ。」

「え?」

「それに、今に出て行かれちゃうと・・・誰がこの部屋の崩れた本の片付け、手伝ってくれるんですか?」

抱きしめていた腕を僅かに緩め、扉の側で崩れてしまった本の山を指差す。

「勿論、手伝ってくれますよね?」

「・・・あ、うん。勿論!」

戸惑いを振り払うような笑顔を見て、僕は掴んでいた手をゆっくり離した。





――― 僕はの事が・・・



それは隠し切れない想いが溢れてしまった言葉。
けれどそれを受け止めて貰おうとは思っていない。

ただ、僕の狭い心では貴女への想いが抑えきれなかっただけ・・・



「天ちゃん!ここ片付けたらお茶にしよう!」

「えぇ、そうしましょう。」

手近な本から拾っては積み上げていくの姿を、いつもとかわらぬ笑顔で見つめる。





気付いていますか、
昔と違って僕は、貴女を少女ではなく・・・女として、見ているんですよ。





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77000hitをゲットされました ゆっこ サンへ 贈呈

『天蓬にポロッと本音を言わせる』と言う、単純なようで難しいリクエスト(笑)
さて、一体どこら辺でポロッと本音が洩れたんでしょう?・・・ってバレバレですね(苦笑)
きっとこの後は何もなかったようにお茶を飲んで、本を片付けて金蝉に見つからないよう気をつけて下さいね?なんて言いながら背中を押すんだろうなぁ。
・・・け、結構切ない話じゃないか?これ(汗)リクエスト、応えてるのか不安だ。
ゆっこさん、リクエストありがとうございましたv
少しでも楽しんで頂けると嬉しいです!
また遊びに来て下さいねvvv