一緒に・・ネ
「何で俺が・・・」
「だって・・・あたし一人じゃ買い物できないし・・・」
「わーい!と買い物♪」
不機嫌な顔をした三蔵と、嬉しそうにスキップをしている悟空、そして八戒からの買い物リストを手にしたあたしは町まで買い物にやってきた。
「・・・とっとと済ませて帰るぞ。」
「うん。」
「あっ、肉マンみぃーっけ♪」
「え?」
何処にそんなのがあるの!?
悟空が勢いよく走って行った方向を見るけど屋台らしきものは何も見当たらない。
ちょっと小走りに悟空の後を追いかけて角を曲がると・・・その先の路地から湯気らしきものが見えた。
ま、まさかこんな遠くの匂いが分かったの!?
「なぁ!肉マン食いたい!!」
目の錯覚かな・・・犬の尻尾のようなものがものすっごく勢い良く揺れてるように見える。
「なぁ〜〜!!」
「んっと・・・えーっと・・・」
買ってあげたいのは山々なんだけどこのお金は八戒から預かった買い物用のお金で、更に遡れば悟浄が賭場で一生懸命稼いだお金だから勝手に使えないんだよね。
あたしのお金だったらすぐにでも買ってあげたい所なんだけど・・・。
「〜」
でもこんなに大きな目でおねだりされると・・・その気持ちが簡単に揺らぐ。
「じゃあ1つだけね。」
「やったぁー!!」
「二人で馬鹿やってんじゃねぇ!!」
バシッ バシッ と言う二段階の音の後、頭に走る激痛。
これはもしや・・・ハリセン?
「三蔵・・・痛い・・・」
頭を押さえながら後ろに立っているであろう三蔵に視線を向ける。
すると不機嫌のオーラを漂わせた三蔵がこめかみに怒りマークを貼り付けて立っていた。
あたしと同じように叩かれた悟空は、あたしも叩かれた事に驚きつつ三蔵に食って掛かった。
「三蔵!まで叩くなんてひでーよ!!」
「誰の所為でが叩かれたと思ってんだ?」
「へ?」
「・・・お前が馬鹿な事言ったからだろうが!!」
スッパ―――ン と言う先程より数倍痛そうな音が隣から聞こえた。
「イッテェー!!」
「自業自得だ。次に勝手な行動したら・・・殺すぞ。」
「「ハイ」」
思わず悟空と手を取って小さくなってしまった。
こ、これが三蔵の威厳か!?
スタスタ歩いていく三蔵の後をちょっと距離をあけて着いて行く。
うぅぅっ、あたし無事に悟浄達の待っているお家に帰れるかな・・・ちょっと心配になってきた。
「おい、ここでいいのか?」
三蔵があたしの方を振り向いて顎でスーパーを示した。
「あ、うん。」
いつものように店に入ってカゴを持とうとしたら、悟空があたしより先にカゴを持った。
「悟空?」
「俺コレ持ったげる!八戒が女の人にはいつも優しくしなさいって言ってたから!」
「・・・どうもありがとう。」
「へへっ」
鼻の下を指で擦りながら少し頬を赤くした悟空は、先に店の奥へと入って行った。
やっぱり悟空はいい子だなって思った。そして残されたのは三蔵と・・・あたし。
「三蔵も・・・行く?」
「外にいるからとっとと終わらせて来い。」
それだけ言うと三蔵は店の外へと歩いて行ってしまった。
三蔵と一緒ならお買い物も楽しそうって思ったけど・・・一緒に歩いてるだけで満足しなきゃダメかなぁ。
小さくため息をつくと先に店に入って行った悟空の後を追いかけた。
「えーっとあれは買った、これも・・・買った。それで・・・あ、これ忘れてる。」
「何か買うもんスッゲー多くねぇ?」
「悟空達が来たからいっぱい料理作るって八戒張り切ってたから・・・んー・・・」
「マジ!?」
カゴいっぱいの荷物を一生懸命両手で持ってる悟空と話をしながら棚の一番上に置いてある調味料を取ろうと手を伸ばす。
当たり前だけど・・・届かない。
小さい人の為に踏み台置くとか上の方には物を置かないとか考えて欲しいよね。
な〜んてこんな所で文句言ってもしょうがない、諦めてお店の人に声掛けて取って・・・貰いたくても言葉話せないじゃん!!
こうなったら何とか自力で取るしかないと一生懸命背伸びをして手を伸ばしてみるが、ビンに指は触れるけど取る事は出来ない。
「!頑張れ!!」
「うん・・・頑張・・・る。」
身長の低い人間はどんなに頑張っても上の物は取れない。
でもこの時のあたしは悟空の声援の所為で無意味に頑張ってしまっていた。
ようやく人差し指と中指でビンを挟んだと思ったら急にビンが指の間からすり抜けた。
「あっあれ!?」
「・・・これか。」
声のする方を振り向くと、入り口で待っているはずの三蔵があたしが取ろうとしていたビンを手にして立っていた。
「違うのか?」
「あ、どうもありがとう。」
「まだかかるのか。」
「あともうちょっと。」
「三蔵!さっきから一人でスッゲー頑張ってるんだぞ!!」
「あぁ?」
「他にも上にあって取れないのとかあるかもしれないじゃん!」
「・・・何が言いたい。」
悟空の視線があたしの方に向いたので三蔵もチラリとあたしの方を見た。
ご、悟空ってばあたしが考えてた事もしかして言えって事!?
でも三蔵と買い物するなんて事もうないかもしれない。そう考えてごくりとツバを飲み込むと、あたしの中にある限りの勇気を振り絞ってさっきまで考えていた事を口にした。
「三蔵も一緒にお買い物・・・付き合って。」
「俺カゴ持ってるし、上の物取れないからさ・・・な?な?」
悟空って時々思うけど・・・勇気あるよなぁ。あたしだったらそんな事笑顔で言えないよ。
それよりあたしは今だ隣で沈黙している人が怖いんですけど・・・あーやっぱり言わなきゃ良かったっ!!
「・・・はぁ」
た、ため息!?やっぱりダメって事?
ガックリと肩を落として最後の数品残っている買い物をすべく、三蔵の前を通り過ぎようとしたらポンと頭に手が乗せられた。
「・・・次は何だ。」
「さっ三蔵!?」
「、三蔵付き合ってくれるって♪良かったなv」
やだなぁ・・・嬉しくて泣きそうだ。
でもここで泣いたら二人が困るのは分かるから、あたしは一生懸命堪えて別の商品棚へ悟空と・・・三蔵と一緒に移動した。
「はぁ〜・・・終わった。」
ようやく買い物を全て終えて幾つかの紙袋を手にしながら家までの道を歩く。
あたしと三蔵は紙袋をひとつ抱えてるだけなんだけど、悟空は両手に袋を持っている。
しかもその殆どが重い物で・・・途中何度も代わるよって言ったんだけど、悟空は「大丈夫」って笑うからついお任せしてしまった。
「なー三蔵腹へったぁ〜。」
「煩い。」
いつもの台詞だ。
でも今日は悟空すごく頑張ってるからお腹空くよね。
あたしもずっと歩いてて少しノド渇いたし・・・おねだりしてみようかな。
さっきの出来事であたしの中の常識は崩れたのかもしれない、調子に乗って三蔵に声を掛ける。
「ねぇ三蔵?」
「何だ。」
「あそこでお茶・・・しない?」
「あぁ?」
「折角三蔵と悟空と一緒に買い物に出掛けたから・・・一緒にお茶したいなぁ。」
じーっと三蔵の顔を見てその回答を待つ。
99%の確率で却下されるだろうと思ったあたしの申し出は1%の奇跡を見事引き当てた。
「今日だけだぞ。」
「やったー!!サンキュー!!」
「うん!嬉しいね、悟空!」
三蔵を先頭に手近なお店に入ると、奥の席に案内されメニューを手渡された。
悟空が目をキラキラさせながらメニューを眺め、あたしは出された水を飲みながらそんな悟空を眺めていた。
「あ、メニューこれしかないんだ。ハイ、一緒に見よう。」
「ありがとう悟空。」
しかしここで重大な事に気付いた。
あたしは外で食事をする事が全くないのでメニューに書かれている文字が読めない!・・・と言う事に。
だらだらと冷や汗を流していたら、あたしがおかしいと言う事に気付いた悟空が声を掛けてくれた。
「?どうしたの?」
「悟空・・・ごめん、あたしメニューの字が読めないんだ。」
「なーんだ、そんじゃぁ俺がの分も注文したげるよv」
「ゴメンねーありがとう!」
ホッと胸を撫で下ろし安心したのも束の間、悟空が店員さんを呼んでとんでもない注文をした。
「えっとぉーこっからココ迄全部!」
「いい加減にしろ、こっの馬鹿ザルが!!」
スッパ−ン 今日何度目かのハリセン。
床にまるでおせんべいのように潰れてしまった悟空を無視して三蔵が何かを注文すると、店員さんは苦笑しながらその場を立ち去った。
「さ、三蔵!?悟空潰れたよ?」
「これくらいじゃ死なん。」
うわっ、キッパリ言い切ったよ。さすが三蔵。
三蔵は灰皿を手元に引き寄せ、懐から煙草を取り出し火をつけた。
あ、やっぱり悟浄とタバコの匂いが違うんだ。
そんな事を考えながら机に肘を突いてじっと三蔵を見つめた。
まだ昼間だから店内の明かりはついていない。
入り口から遠いこの席はちょっと薄暗いはずなんだけど、三蔵の周りは何か見えない光が灯されてる・・・そう感じるほど三蔵の周りは明るい。
微かに日に当たる金髪は、神々しいまでも輝いている。
綺麗・・・だなぁ。
「おい、。」
「・・・えっ?」
「ボーっとしてるとこいつに全部食われるぞ。」
「ほぇ?」
三蔵に言われて机の上を見るとゴマ団子や桃饅頭等がテーブルに置かれていて、さっきまで潰れていたはずの悟空が復活して物凄い勢いでそれらを平らげていっている。
「うわわわっ!」
「取り敢えず手前のモンから食ってろ。おい悟空、そこの皿よこせ。」
「ふがっ?」
口に肉マンをくわえた悟空が側の皿を三蔵に渡した。
「皿に取っておけば悟空は食わん。好きなだけ食え。」
「あ、この肉マン食う?すっげーウマイよ!!」
悟空が肉マンの入っているセイロを差し出してくれたので遠慮なくそれを受け取る。
どうしよう・・・こんなに幸せでいいのかな?
最初は三蔵と悟空と一緒に買い物に出掛けられるのが嬉しかった。
でも欲張りなあたしは次々やりたい事が増えていって・・・。
今日はそれが全部叶ってしまった。
「あー何かすっごく幸せ。」
お茶を飲みながら交互に二人を見ると、三蔵は呆れていて悟空は首を捻ってた。
二人には分からないだろうなぁ・・・あたしがどれだけ幸せかって。
取り敢えずこの幸せをおすそ分けしようかな。
「三蔵、悟空、お茶のお替りいる?」
こんな事でおすそ分けになるか分からないけど、お替りのお茶に精一杯の感謝を込めるから・・・受け取ってね、二人ともv
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9000hitをゲットされました JIN サンへ 贈呈
『うたた寝で三蔵悟空登場!でもってほのぼの』と言うリクエストだったので、お買い物に行ってみました(笑)
いや、彼らとお買い物に行くのは結構楽しいんじゃなかろうかと思ったんですが・・・いかがでしょうか!?
一生懸命ヒロインを助けようとする優しい悟空と、さり気なく気遣ってくれる三蔵を目指して・・・プチ玉砕(TT)
少しでもお仕事の疲れが癒されるようなら嬉しいのですが・・・遅くなりましたがどうぞお受け取り下さい。
JINさん、リクエストありがとうございましたv
少しでも楽しんで頂けると嬉しいです!
また遊びに来て下さいねvvv