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!早く早く!!」

「ちょっと待って悟空!そんなに急ぐと転んじゃう・・・っわぁ!」

言った側からあたしが足元の石に躓いて前を歩いていた悟空の方につんのめってしまった。
悟空が咄嗟に手を伸ばして支えてくれたおかげで何とか地面との衝突は避けられた。

「大丈夫?」

「うん、ありがとね。悟空。」

「こうしてればもう転ばないよな!」

にっこり笑ってあたしと手をギュッと繋いで楽しそうに歩き始める悟空・・・か、可愛すぎ。
それにしても悟空にも心配されるあたしの歩き方、もう少し足元に注意して歩くようにしなきゃ・・・。

「ほら!ここ!!」

「うっわ〜・・・」

そんな事考えているうちに目的地に着いたらしい。
本日は悟空オススメの景色が見える場所。
こちらも悟浄宅からあまり離れていない所、どうやら悟空の遊び場所はお寺の付近と悟浄の家付近と決められているようだ。
今立っている場所はちょっと高めの丘の上、その側には何の木かは良く分からないけど物凄く大きな木が生えている。

「凄い見晴らしいいねぇ・・・悟浄の家の側にこんな所あったんだ。」

「へへっ、この間見っけたんだ♪で、この間が木登りできるって言ってただろ?もう一つ見せたいものあるんだけど・・・」

「もう一つ?」

「うん!一緒に来てくれる?」

大きな目をキラキラさせながらあたしの顔をじっと見る悟空・・・そんな目をされて「いやだ」と言える人がいたらお会いしたい。

「いいよ。」

思いきり元気よく頷くと、悟空はパァッと花が咲くかのように笑ってさっきと同じようにあたしの手を引いて側の大きな木の根元に立った。

「この上!この上にいいもんあるんだv」

「いい物って何?」

「へへぇ・・・ヒミツ!上についたら教えたげる!」

そう言うと悟空はまるでサルの様にって言うと失礼なんだけど本当にそれぐらい早々と木に登り始めた。
まるで平地を歩くように簡単に・・・。

〜早く〜!!」

「はいはいちょっと待ってね。」

それに引き換えこっちは木登りをやめて○○年・・・実はちょっと不安なんだよね。
それでも体は幼い時の感覚を覚えているみたいで、きちんと足場を見つけてそこに足を掛けて上の枝に手を伸ばせば自然と上に登っていく。
下の方は枝も太くて足場にしやすく、手を伸ばせばすぐにちょうどいい枝が伸びていて、この木は登りやすい木と言ってもいいくらいだった。
でも当たり前だけど上に行けば行くほど細い枝が増えてきて、たまに掴もうとしたらピシッって言う嫌な音が聞こえて慌ててその枝から手を離したりした。

本当、この運動神経殆ど無いようなあたしが良くここまで頑張ってると思う。

、こっちの枝の方が太いよ!」

「ありがと!」

きっと悟空が一生懸命先導してくれてるからなんだろうな。
しかし悟空のいる場所の大体三分の二くらいまで来ると足場もだいぶ減ってきて、慣れない事からあたしも疲れが出てきてしまった。

「あっ、そっちの枝腐ってるからこっちから回って!」

「はーい・・・」

「もうちょっと!もうちょっとだから頑張って!!」

「うん・・・頑張る。」

何とか最後の気力を振り絞って悟空の足元の枝に足を掛けて、側にある枝をグッと掴んでようやく悟空と同じ位置まで来る事が出来た。

、あれ見て!あれ!!」

「あれ?」

さすが悟空・・・元気だなぁ、お姉さんはちょっと休みたいよ・・・と思いながらも悟空の指差す方向へゆっくり視線を向けると、すぐ側に小さな鳥の巣のようなものがあった。

「?」

そのままじっと見ていると、ぴょこぴょこっと小さなモコモコした鳥のヒナが次々顔を出し始めた。

「かっ・・・可愛い!!」

小鳥の数は全部で5羽。ようやく毛が生え始めた頃なのかまだ羽毛のような羽がふわふわしている。
その大きな目は突然やってきた来訪者を不思議そうに眺めていて、中には小首を傾げるような子もいる。

「悟空、可愛いよ!可愛い!!」

「こないだ卵があるの見つけたんだ。で、持って帰って食べようと思ったんだけど・・・」

「た、食べる?」

一瞬頬が引き攣った。
悟空・・・お腹すいてると何でも食べ物に見え始めるもんね。

「うん、でもこないだ八戒に誰かが大切にしてる物は了解をとらなきゃいけないって言われたの思い出して、暫くここで待ってたらこの卵の親みたいなのが来て・・・」

「悟空怒られちゃったんだ。」

「・・・うん。だから取らずに帰った。で、また暫くして見に来たらさ卵が無いんだよ!てっきりあの鳥が食っちゃったんだと思ってため息ついたらこのちっこいヤツラがいたんだ♪」

「へぇ〜」

悟空が鳥達へ手を伸ばすと、エサを持って帰ってきた親鳥と勘違いしたヒナ達が一生懸命口を開けてピイピイ鳴いている。
可愛いなぁ〜vvv

さ、前、鳥好きって言ってたろ?だから喜ぶかと思って・・・」

照れくさそうに鼻の下を指で擦って笑う悟空の頭にそっと手を置いて撫でる。

「どうもありがとう、悟空。すっごく嬉しいよ。」

「へへっv」

「あーそれにしても可愛いなぁ〜v何の種類の鳥だろう?」

「んーわかんない。でもよくこの辺で見かける鳥だよ。」

「そうなんだ・・・」

そんな幸せ雰囲気の中、突然頭上からけたたましい鳥の鳴き声が聞こえた。
ふと見上げると大きな羽を広げ、大体鳩くらいの大きさの鳥がうるさい位にぎゃーぎゃー鳴いている。

これはもしや・・・。

「あ、親鳥。」

「あぁあれが・・・」

って冷静に話してる場合じゃないって!多分ヒナの側にいるから敵と思われてるよね?確実に。
案の定親鳥はこちらへやって来ると悟空ではなくあたしの肩や頭を突付き始めた。

に何してんだよ!止めろって!」

きっと悟空は何度もここへ来ているから敵とは思われてないんだろう。
そうなると敵はあたし一人・・・。

「ゴメン、すぐ離れるから!!」

何とか親鳥の攻撃を交わしながら焦って下に下りようとして・・・足が滑った。

――――!!」

落ちる速度は凄く速いはずなのに、どうしてこんなにゆっくり景色が見えるんだろう。
このまま落ちると多分背中から地面にドカ〜ン・・・痛いんだろうな。
あぁ悟空が手を伸ばしてくれてる、でもごめんね、もう届かないよ。










この次来る衝撃に耐えようとギュッと目を閉じて覚悟を決めたその時・・・柔らかな何かがあたしを受け止めてくれた。

「・・・?」

「ふうっ・・・間一髪って所ですね。」

今の状態を確認しようとゆっくり目を開けると、逆光でその表情は見えないけど誰かがあたしを受け止めてくれたらしい。
この優しい声には覚えがある。
恐らく無意識のうちにあたしはその人の名前を呼んだ。

「八戒?」

「怪我はありませんか、?」

「あ、うん・・・平気。」

「それはよかった。」

―――!」

すぐに木の上から悟空が降りてきて、八戒の腕に抱きかかえられているあたしの側へ駆け寄ってきた。

「ゴメンな!俺っ・・・俺!!」

「大丈夫だよ悟空、八戒のおかげで怪我してないし。慌てて下りようとして勝手にあたしが足を滑らしちゃっただけなんだから。」

「でもっ」

「可愛い小鳥に会わせてくれてどうもありがとうvまた今度一緒に会いに行こうね?」

「・・・うん。」

八戒に抱きかかえられたまま側にいる悟空の頭を撫でてあげる。
少しだけ悟空の声が涙声だった気がしたけど、悟空は下を向いちゃってるからその表情は分からない。
そんなあたしと悟空のやり取りを見ていた八戒がふいに悟空に声を掛けた。

まさか!あたしのせいで悟空が怒られちゃう!?

「・・・悟空?」

八戒の声はさっきと違ってちょっと冷たい・・・ような感じがする。
と、止めなきゃ!!

「八戒!あの、木に登ろうって言ったのはあたしで、落ちたのもあたしで・・・だから悟空は何も悪いことなんてっ・・・」

必死に悟空の無実を訴えるあたしを見て八戒は何だか少し困った顔をしていた・・・何故?

「悟空を叱るわけじゃありませんよ。ちょっとお願いしたい事があるんです。この先にジープが止めてあるのでそこからオヤツの入ったバスケットとジープを連れてきてくれませんか?と言いたかっただけです。」

「あ・・・何だ。あたしの早とちりか・・・」

「お願い出来ますか?悟空。」

「うん!俺行ってくる!!」

言うが早いか悟空はあっという間にこの場から姿を消えてしまった。
相変らず・・・足、速いな。

「それにしてもは結構お転婆だったんですね。」

「・・・はい。」

「悟空にこの場所を聞いていて、を案内すると聞いた時まさかがあそこまで登るとは思いませんでしたよ。」

「え?」

八戒がお姫様抱っこの状態だったあたしを足先から地面に下ろしてくれて、そのまま指でさっきあたしと悟空が登った木を指差した。

「?」

「分かりますか?ちょうど僕が指差している真上に親鳥が旋回しているでしょう?はあそこまで登ったんですよ。」

親鳥が旋回・・・あぁあそこか、あーぐるぐる回ってるなぁ・・・ってあそこ!?
ようやく八戒の言いたい事がわかって思わず口を閉口させる。

「高さとしては大体10メートルくらいでしょうか。よく登れましたね?」

ようやくその恐怖が体全部に染み渡って足がすくみ始めた。

「・・・下、見ませんでしたね?」

「下見たら登れないから・・・」

「それもそうですね・・・って!?」

「あははは・・・力抜けて、た、立てない。」

引き攣った笑顔を八戒に向けると、八戒は苦笑しながらしゃがみ込んでしまったあたしの体をそっと抱き上げた。
ちょうど落ちてきたあたしを受け止めたのと同じ、お姫様抱っこで・・・。

「僕のいない所であまり無茶な事しないで下さいね。次はこんなに上手く助けてあげられるか分からないんですから・・・」

「はい、ごめんなさい。」

「・・・僕の目の届く所にいて下さい。」

そう言って太陽を浴びてにっこり笑った八戒の笑顔は太陽の光よりも眩しくて、思わずあたしは目を細めてしまった。










その後、悟空とジープがやってきて八戒が持ってきてくれたお昼を一緒に食べた。
そのご飯を食べながらふいに思い出す八戒の言葉・・・



僕の目の届く所にいて下さい



よく考えてみればこれって・・・物凄い口説き文句じゃなかろうか。
そう思って目の前の八戒をチラリと見たけど、八戒の表情はいつもと同じ・・・あたしが意識しすぎちゃってるだけなのかな?





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8888hitをゲットされました めぐみ サンへ 贈呈

『悟空と木登りをしていて落ちてくるヒロインを受け止める八戒』と言うリクエストでした。
しかし出来上がってみるとお相手八戒のはずが悟空の方が出番長くなってしまいました(TT)すいませ〜んっ!!
シチュエーション的にはとっても気に入っていますが、一つ謎として・・・悟浄の家の周りは何て自然豊かな場所なんだろうと言う事ですかね(笑)
まぁその辺は目をつぶって頂くということで・・・天然で口説いてくださる八戒をご堪能下さい!?
めぐみさん、リクエストありがとうございましたv
少しでも楽しんで頂けると嬉しいです!
また遊びに来て下さいねvvv