勝負の行方・・・
「うわぁいい天気!!」
暫く雨だったり曇りだったりハッキリしない天気が続いた。
そうすると自然と家の中にいる事が多くて八戒と悟浄そしてジープの三人と一匹で遊ぶ事が多くなった。
そりゃ皆と遊べるのは楽しいし、外出なんて買い物以外殆どしないんだけど・・・やっぱり天気がいいほうが気分いいよね。
今日は何して遊ぼうかなんて考えながら身支度を済ませて居間に行くと、今日は八戒だけで無く、悟浄もテーブルについていた。
「おはよー八戒、悟浄。」
「おはようございます。」
「オハヨウ、チャン。」
朝から二人に会えるのって・・・今更だけど幸せだなって思う。
天気がいいとつられて気分も明るくなっちゃう・・・そんなあたしってもしかしてすっごい単純?
「今日は随分ご機嫌ですね。」
「うん!だって久し振りの天気だよ?八戒は嬉しくない?」
ミルク多めのカフェオレを飲みながら隣に座っている八戒に問い掛ければ、いかにも八戒らしい答えが返ってきた。
「勿論嬉しいですよ。たまっていた洗濯物も片付きますし、窓を開けて換気しながら掃除も出来ます。それにそろそろ冷蔵庫の中も乏しくなって来ましたから買い物にも・・・」
「・・・八戒って本当に主婦だよねぇ。」
「が来て下さってるんですから、折角なら綺麗な部屋で一緒にいたいじゃないですか。」
にっこり笑いながらそんな事言われたら・・・嬉しくて笑っちゃうじゃん!!
あたしは緩みそうになる頬を押さえようと、両手でしっかり頬を押さえた。
ふとその時、目の前に座っていた悟浄が何とも言えない表情で、一生懸命耳をいじっている姿が見えた。
「あーっっ!ったく取れねぇ!!」
「ご、悟浄?」
苛立たしそうに膝をパンと叩いて、再び小指を耳に入れて何かやろうとしてるんだけど、一体何がしたいんだ?悟浄。
「なぁ八戒、耳掻きねェか?」
「悟浄の後ろにある引き出しに入ってますよ。」
「・・・お、あったあった。」
引き出しを開けて暫くガチャガチャ音を立てていた悟浄が目的の物を発見すると、それを取り出してさっき迄指で何かやっていた方の耳へ差し込んだ。
思わずその様子を物珍しく眺めていると、今度はやけにスッキリした顔で悟浄が耳掻きをテーブルに置いた。
「・・・っはー♪スッキリした。」
「耳掃除くらいでそんなに騒がないで下さいよ。」
「しょうがねぇだろ?何か耳の中でガサガサ言ってたんだから・・・気になるじゃねェか。」
ガサガサか・・・え゛っ!?ガ、ガサガサ?
耳の中でガサガサ言うって事は、あんまり耳掃除してないって事だよね!?
「だから昨日お風呂上りに声かけたんですよ。」
「誰がヤローに耳掃除なんて頼むかよ!!」
「それじゃぁ自分でやって下さいよ。」
「上手くいかねェから苦労してんだろうがっ!」
そう言いながら再び耳掻きを耳に差し込みながら話をしている悟浄の手元を見ていると・・・こう、何て言うんだろう。
見ているこっちが怖くなるくらい耳掻きを差し込んでて、そのくせ上手く出来てないみたい。うぅぅ・・・気になるよぉ。
「ああもう、その辺にゴミを散らかさないで下さい!折角掃除したんですから。」
「話しかけんなよ!上手くいかねェだろ!!」
「あ、あのさ悟浄。」
「あぁ?」
うっ!何であたしが睨まれなきゃいけないの!?
椅子に座ったままの体勢で、思わずそのまま一歩後ろに下がってしまった。
八戒との会話で悟浄のご機嫌・・・悪いみたい。
さり気なく八戒の背に隠れながら、さっきから考えていた事を口にする。
「あたし耳掃除したげようか?そんなに上手って程でもないけど・・・」
「「え?」」
「八戒みたいにって訳にはいかないけど、少しはスッキリするかもしれないし・・・」
あたしは席を立ってソファーの方へ移動して柔らかいソファーの上に座ると、ちょっと照れながらも膝をペシペシと叩いた。
「綺麗なお姉さんの膝よりは居心地悪いかもしれないけど、その辺はごめんね。」
「んな事ねェよ、バリ嬉しいv」
そんな力いっぱい笑顔で喜ばれると・・・ちょっと恥ずかしいぞ。
鼻歌を歌いながら悟浄がこっちに来たのであたしが一度立ち上がってスカートの裾を正した瞬間、八戒に声をかけられた。
「?綿棒とかいりますか?」
「あ、あるなら欲しいかも。」
「悟浄そちらの棚の上にある救急箱の中に綿棒が入っているので取って下さい。」
「この棚か?」
「えぇ」
さっき迄ご機嫌ナナメだった悟浄の機嫌は今はかなり良いらしく、八戒に言われた通り棚の上に乗っている救急箱を取る為踵を返した。
悟浄が来るまで手持ち無沙汰になってしまったあたしの前に八戒が来て、天井の明かりを指差した。
「ここ、部屋の隅ですけど明るさとかは大丈夫ですか?」
「んー・・・どうだろう。やってみないと分からない感じ。」
「それじゃぁ僕で試してみますか?暗かったら何か小さな明かり持ってきますから。」
「そうだね。でもあたしの膝枕だよ?」
あまり使い心地と言うか居心地のいいものじゃないと思うんだけど・・・って思ったんだけど、八戒はにっこり笑顔でこう言った。
「とても嬉しいですよ。」
至近距離で見た八戒の笑顔はとっても眩しくて・・・思わずぎこちない動きでソファーに腰掛けると、八戒があたしの膝に頭を乗せるのを待った。
「・・・失礼します。」
「は、はい。」
そうして八戒がソファーに腰を下ろそうとした瞬間、白い箱があたしに・・・いや、正しくは八戒の体に向かって飛んできた。
「八戒!てめェ何してやがる!!」
そこには綿棒と耳掻きを手にした悟浄が、何故か顔を真っ赤にしながらこっちに向かって叫んでいた。
「悟浄、救急箱を投げないで下さい。に当たったらどうするんですか!」
「んな事より、何でオマエがオレより先にチャンの膝枕使おうとしてんだ?」
「明かりが届くかどうか試そうとしたんです。」
「そんなのオレで試せばいいだろうが!」
「貴方がのんびりしているからですよ。」
「オマエが棚の上のややこしートコに置いてある綿棒取れとか言ったからだろうが!!」
「踏み台を使わず横着して取ろうとするからそうなるんですよ。」
ソファーに座りかけていた八戒が腰を上げて悟浄の方へ向き直った。
何だろう・・・あたしの知らない所で妙な争いが勃発している気がするんだけど、その原因ってもしかしてあたし?
耳掻きをしてあげるって言ったの・・・まずかったのかなぁ。
そうこうしている間に戦場はどんどん拡大しているようで、二人は机を挟んで間髪入れずお互いに突っ込みを入れている。
「・・・えっと・・・この場合あたしはどうすればいいんだろう?」
とは言え止める勇気は無いし、あの間に入るのもちょっと気が引ける。
う〜ん・・・と頭を抱えて困っていた所に、キュ〜ッと言う鳴き声と小さな羽ばたきが聞こえた。
それに反応して振り返ると八戒の部屋で眠っていたはずのジープがこっちに向かって飛んできた。
「ジープおはよう!!」
挨拶をしながら両手を差し出すと、ジープは真っ直ぐにあたしの腕に飛び込んできた。
あ〜ふわふわしてて可愛いv
「おはよ〜ジープv」
「キュッv」
しかもしっかり朝の挨拶をしてくれる。
首を伸ばしてあたしの頬に擦り寄ってくる姿はも〜っ可愛くてしょうがない!!
本能の赴くままにジープの体をギュッと抱きしめると、腕の中でジープがちょっと困ったような声を上げた。
「あっご、ごめんごめん。」
「キュ、キュゥ〜」
ゴメンナサイの意味を込めて頭を指で撫でてあげると、ジープは気持ち良さそうに小さな赤い目を細めていた。
そしてそのままあたし腕から膝の上に飛び降りると、暫くウロウロしてたけどすぐに落ち着く場所を発見したのか、ポフッと言う音を立ててあたしの膝の上に体を横たえた。
「そっかぁ・・・まだ眠かったんだ。」
「キュゥ」
あたしの言葉を聞いて頷くと、ジープは小さく欠伸をしてその長い首を自分の背中の上に乗せて目を閉じた。
「眠かったのにあの二人の声で起きちゃったんだね。」
スースーと言う寝息が聞こえそうなほど気持ち良さそうに眠っているジープのたてがみを撫でながら、あの二人はどうしたかなぁと思って顔を上げると・・・苦笑した八戒と顔を手で覆って悔しそうな顔をした悟浄の二人が立っていた。
「・・・ご、悟浄?八戒?」
「ジープに負けたのかよ・・・」
「無欲の勝利・・・ってやつですね。」
「ほぇ?」
今日はもう何が何だか分からない事が多すぎて、頭にいっぱいハテナマークをつけて二人の顔を交互に眺めれば、何故か二人が同時に笑い始めた。
「何が楽しいの?」
そう言わずにはいられないほど、今日の二人は良く分からない。
でも首を傾げているあたしの頭を二人がポンポンって撫でて、その後の二人は・・・何時もと同じ、穏やかな空気をまとっていた仲良くお茶を飲み始めた。
二人が狙っていたモノ、それは今ジープが安らかに眠っている場所
何とかして手に入れようとしたけれど、策を練るには相手が悪くて・・・
次にそこにいるのは自分がいい・・・そう思いながら、二人は光が差し込むソファーに座っている彼女を温かい目で見つめていた。
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『膝枕を巡って八戒VS悟浄、でも最終勝利者はジープ』と言う事で、何とも大人気ない争いが勃発しております(笑)
思わず自分で書いていて「・・・おいおいお兄さん達(苦笑)」って感じでしたが、如何でしょうか!?
でもジープがヒロインの膝の上で眠っていたら、あの二人はその光景を見て和んじゃいそうな気がします。
結局欲が無い方が物事は上手く運ぶと言う事なんでしょうねv
・・・はっ!そうすると最遊記での最強キャラはジープ!?(おいおい)
瑚鈴さん、リクエストありがとうございましたv
少しでも楽しんで頂けると嬉しいです!
また遊びに来て下さいねvvv