ほのかに甘くHOLYDAY
久し振りの休暇をと過ごす事になり、先にラクスの家へ行った彼女を車で迎えに行った。
するとそこには、いつもの少年のようなの姿は何処にも無く、可愛らしいワンピースを身につけて車の助手席に乗り込む少女がいた。
「あの、アスラン?」
「あっあぁ、何?」
ハンドルをギュッと握り締めて真っ直ぐ前を見ながらの呼びかけに応える。
「自動運転に切り替えなくていいの?」
「・・・あ。」
慌てて手動運転をOFFにして、自動運転に切り替えるとハンドルから手を離した。
何だってこんな単純な事忘れてたんだ?俺は・・・。
自分を落ち着かせようと大きく息を吐くと、隣に座っていたがポツリと呟いた。
「ゴメンね、アスラン。」
「え?」
「折角のお休み外出させちゃって・・・本当はゆっくり休みたかったでしょう?」
「いや、そんな事は・・・」
「だってアスランがこんなにボーっとしてる所、見たことないもん。」
・・・俺、そんなにボーっとしてたのか?
「今からでも・・・帰る?」
助手席から身を乗り出して俺の顔を覗きこむの顔にはいつもの無邪気さは無く、少しだけ塗られた口紅がヤケに目に止まって・・・とても・・・その・・・可愛く見えた。
何とか平静を装いながら視線をから反らし、その頭をいつもと同じように撫でた。
何を動揺してるんだ?落ち着け、落ち着け・・・。
「俺は大丈夫だよ。それに折角ラクスから近くにある新しいショッピングセンターの場所を聞いたんだ。買い物好きだろ?」
「それは・・・好き、だけど。」
「そこへ行って、早めに帰って休めば問題ないだろ?」
「う・・・ん。でも、いいの?」
「疲れたらちゃんと疲れたって言うから、あんまり気にしなくていいよ。」
「うん!!」
嬉しそうに何度も頷くは視線を前に向け、楽しそうに鼻歌を歌い始めた。
そんなに外出できるのが嬉しいのか・・・それもそうだな、いつも男所帯の中で一生懸命働いてるんだ。
今日くらいゆっくりさせてやろう、そう思った。
「うわぁ大きなショッピングセンター!!」
「つい最近出来たばかりだってラクスが言ってたよ。はこういう所好きだろ?」
「うん!大好き!!」
今にも何処かへ走り出してしまいそうなの手を掴んで・・・驚いた。
小さくて柔らかいと言うのは幼い頃と変わらないが、それ以上に強く握ると壊れてしまいそうなほど・・・彼女の手は細かった。
「アスラン!あそこのお店見たい!!」
「え?あぁ、じゃぁ行こうか。」
強く握り返された手を嬉しく思いながらも、壊れてしまいそうなほど細い手に十分気をつけながら優しく手を握り返すとの後をついて行った。
「ねぇねぇ!これ可愛い?」
「あぁ。」
「じゃぁこっちとどっちがいい?」
「んー・・・」
・・・困った。
が駆け込んだ店は、可愛らしい雑貨が沢山置かれているような店。
フリルやら可愛らしい人形やら装飾品やらが所狭しと並べられている。
ラクスとがここにいるのであれば何の問題も無いだろうが、今の俺はこの店ではかなり浮いている気がする。
先程から店員の女性がこちらを見て笑っている気がするのも気のせいでは無いだろう。
なぜなら店内を見渡しても男は・・・俺以外見当たらない。
でも嬉しそうに次々商品を俺の前に持ってくるを見ると、外で待ってるとも言えなくて・・・結局曖昧な事しか声にはならない。
「じゃぁねぇ・・・」
「、あの・・・」
「コレとコレ、どっちなら艦に持ってっても問題ないと思う?」
「え?」
「だーかーらー、こっちの黄色い花の描いてあるタオルと水色のイルカが描いてあるタオル。どっちなら艦に持ってっても違和感無い?」
この場合、男としての持ち物にはどちらも不適切だ・・・と正直に言った方がいいのだろうか。
しかし目の前のは至って真剣。
艦の中で男装しているとは言え心はちゃんと女の子なんだよなぁ、当たり前だけど。
「色的には水色の方がいいと思うけど、基本的に好きな方を買えばいいんじゃないかな。」
「でも・・・」
「誰も個人の趣味に文句は言わないよ。」
「・・・そ、かなぁ?」
「あぁ、もしも何か言う人がいたら俺に言えばいい。」
「うん!じゃぁ買ってくるね!!」
スキップをしながらレジに向かっていくの姿を見ていたら思わず笑ってしまった。
タオル一枚買うのに俺はこんなに苦労した事があったかなって考えてしまったから・・・。
「あ、アスラン!あれやりたい!」
何時の間にか紙袋をいっぱい抱えたがある機械を指差した。
それは少し前に流行った『プリクラ』と言う小さな写真を撮る機械だった。
「・・・、本気?」
「うんv今日の記念に!」
「あうぅぅ・・・」
写真・・・あんまり好きじゃないんだよな、俺。
何とか上手い事言ってその場を逃げ出そうとしたら、が物凄く悲しそうな顔で俺の服の袖をギュッと握った。
「アスラン、写真嫌いだったよね・・・ゴメン。」
シュンとうな垂れてしまったは重い足取りでその場からゆっくり離れて行った。
・・・はぁ、俺もには甘いなぁ。
「いいよ、一枚だけね。」
「ホント?」
表情を一転させると物凄い勢いでプリクラの機械の所へ戻ってきた。
「嬉しいなvアスランと一緒にプリクラー♪」
「変な顔でも怒るなよ?」
機械に掛けられているカバーを手で避けながら中に入ると、そこには一枚の紙が貼られていた。
「え――――っ!!」
故障中
「あうー・・・」
プリクラの機械が故障中と言うのを見てから、のテンションは一気に下がってしまった。
俺も他にプリクラが無いか側にいた店の人に聞いてみたんだけど、古い機種だからあそこにしか無いと言われてしまってはどうしようもない。
「ほら、故障中ならしょうがないだろ?」
「でも・・・」
どうやって元気付けようかと思案している俺の目の前に、ちょうどいい店があった。
「、アイス食べる?」
「アイス?」
の目がキラリと光る。
元々は甘いものが大好きで、アイスもの大好物のひとつだ。
「奢ってあげるよ、何がいい?」
「ストロベリーとクッキー&クリーム!」
好みも変わってない。
「わかった。荷物置いておくからここで大人しく待ってるんだよ?」
「うん!待ってる!!」
ポンポンとの頭を撫でてから俺はアイスを売っている店に走って行った。
気候をコンピューターでコントロールしているとは言え今日は日差しが強く、少し暑い。
その所為かアイスクリームを売っている店は意外と混雑していて、の元へ戻るのが少し遅れてしまった。
「ごめん・・・あれ?」
「離して!!」
の側に見知らぬ男が二人、彼女の手を掴んで無理矢理席を立たせようとしている。
「いーじゃんちょっとオレ達と付き合うくらい。」
「そうそう、連れのヤツなんてほっといてさ♪」
「いーやーでーすー!!」
「おいっお前たち、その子に何をする。」
「あぁ?」
「・・・アスラン。」
ホッとした様子のを背に庇い、男達を睨みつける。
「彼女に何か用か。」
日中から飲酒しているのか男達からは酒の匂いしか感じられない。
何やら二人は俺を見てぼそぼそと話をしてから大声で笑い始めた。
「そーそー、そっちのカワイー彼女に用があるの。」
「お前みてぇなお坊ちゃんに用はねーよ。」
「こっちもお前達に用は無い。」
無駄な争いは・・・今日のの前ではしたくない。
オレは手にしていたアイスをに手渡し、置いてあった荷物を取ろうと伸ばした手を大柄な男に掴まれた。
「おいおい兄ちゃん、トンズラするなんて卑怯じゃねぇか・・・あ?」
「・・・手を離せ。」
「彼女を置いてけばオマエはそのまんま帰してやるよ。」
「離せと言っている。」
俺は掴まれていた手を素早く振り払って相手の手首を押さえると、そのまま捻って相手の背後へ回りこんだ。
「うぎゃぁぁっ!」
「おっおい!」
「あまり騒ぎを大きくしたくない。このまま帰ると言うのならばすぐに手を離そう。だがこれ以上彼女に手を出そうとするならば・・・今度は容赦しない。」
「な、何もしない!頼む!離してくれっ!!」
酒の所為で赤かったはずの男達の顔も、今は真っ青になっている。
俺はゆっくり男から手を離すと、彼らは転がるように逃げ出して行った。
バタバタと走り去る男達が視界から消えたのを確認すると、俺はの方を振り向いた。
「・・・大丈夫?」
安心したのか目元が潤んでいるを安心させようと、そっと頭を撫でた。
「ごめん、一人にして・・・」
は何も言わず首を振って、手にしていたアイスも気にせず俺に飛びついた。
声は無いけど怖い思いをさせてしまった事に代わりは無い。
俺はの体をそっと抱きしめると、泣き止むまでずっと彼女の頭を撫で続けた。
地面に落ちてしまったアイスの代わりに、今度は持ち帰り用に幾つか詰めて貰って、ラクスに借りた洋服を返すべく再び車に乗り込んだ。
「色々あったけど今日凄く楽しかった!どうもありがとう、アスラン!」
「俺も・・・楽しかったよ。」
「本当?」
「あぁ、それに・・・その、服。」
「これ?」
が自分の着ている服を見て首を傾げている。
・・・そう言う仕草が本当に可愛いんだって、自分じゃ分からないんだろうなぁ・・・。
「凄く似合ってて・・・か、可愛いよ。」
それだけ言うと俺は車のハンドルをギュッと握り締め、進行方向へと視線を固定した。
「ホント?アスラン本当!?」
「うん。」
今はただ頷くのが精一杯。
明日からはまた、艦で働く為その服を脱がなければならないけど、いつか・・・平和を取り戻せたら、もう一度今日みたいに一緒に出掛けよう。
だから・・・それまではずっと、俺の側に・・・
BACK

18000hitをゲットされました 楓 サンへ 贈呈
『プラントでアスランとデートv』と言う事でしたが、実は色々と苦労しました(笑)
プラントのデートスポットって・・・どこよ!?と言う実に単純な事でした。
映画館だとか植物園だとかプラネタリウムだとかちょこっとずつ書いていったんですが、会話が上手くいかなくて・・・結局ショッピングデートになってしまいましたがいかがでしたでしょうか!?
ちょっと過保護だけど、相手を尊重してキチンとエスコートしてくれるアスランが私は好きですv
楓さん、リクエストありがとうございましたv
少しでも楽しんで頂けると嬉しいです!
また遊びに来て下さいねvvv
追記:この話にはオマケがあります。
アスランがヒロインにデートに誘われ、お迎えに行くまでのお話があります。
そこには私の好きな女性キャラ(笑)あの人も出てきますv
