雨宿り
久し振りにの家を訪れて、二人で夕食の買出しに出かけた帰り道。
頬にポツリと冷たいものが当たり、上を見上げると・・・突然現れた黒い雲。
「あーやっぱり降ってきちゃいましたね。」
「ホント・・・」
出掛けに嫌な予感したんですよね、僕。
さり気なくを引きとめようとはしたんですが、僕の為においしいご飯を作ると言い張るを止める事なんて出来ず、結局一緒に町まで出て・・・あとはお約束。
「取り敢えず何も無いよりはマシでしょう。」
「え?」
僕はマントを手早く脱いでの頭から被せると、その手を取って手近の大きな木の根元まで走った。
そしてちょうど僕らが木の下にたどり着くのを待っていたかのように、小雨だった雨は滝のような雨に変化した。
「ふぅ危機一髪でしたね。」
「うん・・・あ、ゼロス。マント・・・」
「そんなものでよければ寒さしのぎにどうぞv今日のはちょっと露出が多いですからね♪」
僕がウィンクをしての方を振り向くと、彼女はほんのり頬を染めてマントをかき集めると胸元でぎゅっと握り締めた。
本当には純粋で・・・可愛いですね。
僕は手に抱えていた買い物袋を倒れないよう木の根元に置くと、そのまま木に寄りかかって視線を空へ向けた。
「それにしても、これはまた随分激しく降り始めましたねぇ。」
「でも遠くの空は明るいから・・・多分通り雨だよ。」
も僕と同じように空をじっと見上げている。
ふと彼女の前髪が僅かに濡れているのに気付いて、僕はそっと手を伸ばすとの前髪の雫を手で払った。
「ゼロス?」
「髪が少し濡れちゃいましたね。」
「これくらい全然平気。ゼロスこそ何処か濡れてない?」
「僕ですか?僕は平気ですよ。」
全く魔族である僕の心配よりも自分の心配をして下さい。
ついこの間風邪を引いて倒れていたのは誰だったんです?
そんな僕の気など全然気付かないはじーっと僕の顔を見ると、何か見つけたように僕の頭を指差した。
「あーっやっぱり少し髪濡れちゃってる!!ちょっとしゃがんで!」
「これくらい平気ですよー。」
「ダメ!ゼロスが風邪引いちゃう!」
「僕の体はそんなにヤワに出来てませんって。」
「私が気になるの!!」
本当に、は呆れるくらい真っ直ぐですね。
その瞳が・・・時に眩しく、時に・・・壊してしまいたいほど愛しい。
「わかりました。これでいいですか?」
僕がため息をついて少し屈んでの方へ頭を差し出すと、彼女がポケットから取り出したハンカチで遠慮がちに僕の髪に付いた雫を拭ってくれた。
こんな所、もしリナさん達が見たら何て言うんでしょうね。
「ゼロスなんかほっといたって死にゃしないし、風邪なんて引かないわよ!」
「風邪ってあれだろ?俺は絶対引かないって言う病だろ?」
「・・・間違ってはいないな。」
「ゼロスさん!風邪を引くなんて心が弱い証拠です!さぁ私と一緒に正義の心を育てましょう!!」
な〜んて所ですかね。
そう考えると急におかしくなって、思わず笑みが零れてしまった。
「ゼロス?どうしたの?」
「いえ・・・ちょっと思い出し笑いを・・・」
「思い出し笑い?」
「えぇ」
こうして日常のちょっとした事から楽しい事を見出して笑う。
そんな単純な事を僕は今まで知らなかった。
それを教えてくれたのは他でもない、・・・貴女のおかげです。
一緒に買い物に出かける、途中雨が降る、雨宿りをする。
たったこれだけの出来事の中で僕は今日何度笑っただろう。
数え上げればきっと両手両足を合わせても・・・足りない。
「ゼロス?」
気がつくと僕はを背後から抱きしめていた。
「・・・温かいですね。」
「ゼロス?」
そっと顔を覗き込めば、何かあったのかと不安そうにこちらを見つめる瞳と目が合う。
一点の曇りも無い、真っ青な青空の・・・青。
そのまま顔を近づけてそっとの唇に触れようとしたら、急に彼女はマントを脱いで僕に被せた。
「・・・え?」
突然の行動の意味が分からなくて、思わず疑問の声を上げる。
やがてさっき迄を包んでいたはずのマントは元通り僕の背にかけられて・・・背後から抱きしめていたはずのは何時の間にか僕の腕の中にすっぽり入って、ぎゅっと僕の腰に両手を回して抱きついていた。
「こうすれば・・・寒くないでしょ?」
そう言って僕を見上げるの顔は・・・ちょっとどころかとっても赤くて、僕は今日何度目になるか分からない幸せな笑顔を彼女に向けた。
「いや〜ホント、温かいです。」
の体が冷えないように、しっかりマントを掴んだまま小さな体も一緒に包み込む。
貴女の目に映るのは・・・僕だけで十分
貴女の為なら何を敵に回しても構わない
こうして貴女を抱きしめる事が出来るのなら、僕は魔族をやめても・・・かまわない
それぐらい、僕はに夢中ですよ
やがて雨も上がり、ふと空を見上げると・・・
大きな虹が僕の想いを伝えるかのように遠くの山からこちらに向かって伸びていた。
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14841hitをゲットされました ゆっこ サンへ 贈呈
『突然の雨で雨宿り、ゼロス夢』と言う事でしたが、何だか偽ゼロスになっちゃいました(TT)しかもちょっと思考が危ないゼロス(汗)
いやぁまさかゼロスがリクエストされる日が来るとは思ってもいなくて、一生懸命記憶の引き出しを引っ張り出したんですが・・・い、如何でしょうか!?
あの4人をチラリとだしとかないと、スレイヤーズな気にならなくてプチ出演させちゃいました(笑)
でも久し振りに「それは秘密ですv」のゼロスが書けてとても楽しかったですv
ゆっこさん、リクエストありがとうございましたv
少しでも楽しんで頂けると嬉しいです!
また遊びに来て下さいねvvv