一緒にしよv
「、起きてください。」
「ん〜・・・もうちょっと・・・」
布団を掴んで寝返りをうとうとしたら、何故か布団が動かない。
ぐっと掴んで引っ張ろうとしてもビクともしなくて・・・眠い目を開けて布団の端を見たら、何故か笑顔の悟空が上に乗っかっていて、八戒も同じように笑顔で布団の端を掴んでいた。
「久し振りのお天気だから布団・・・干させて下さいね?」
「あ・・・はい。」
「!おっはよー!!」
「おはよう・・・悟空。」
待て待て、何でこんな朝早く悟空がここにいるんだ!?
普段ならこんな時間にここに来る事ってないよね?
「昨夜用事があって三蔵と悟空がこの近くに泊まったそうです。それで今朝早くに・・・」
「八戒のメシ!食いに来た♪」
「・・・と言うわけです。」
物凄く納得。
お金は掛からないし、悟空の面倒は見てもらえるし、気を使う必要がない・・・って考えたな三蔵。
取り敢えずベッドから降りて顔を洗いに行こうとしたあたしの後ろで二人が何やらごそごそしてる。
「なぁ八戒、これもさっきと同じ?」
「えぇお願いします。」
振り返るとベッドのシーツを剥がす八戒と、掛け布団を包んでいるシーツの中に悟空が入って何やらもぞもぞ動いてる姿が見えた。
「・・・八戒、悟空何してるの?」
ベッドのシーツを簡単にまとめている八戒に不思議そうな顔して尋ねると、にっこり笑顔で教えてくれた。
「折角天気がいいのでシーツも洗濯しようと思って、悟空に手伝ってもらっているんです。」
「それは分かるんだけど、何でもぞもぞしてるの?」
何て言うかハロウィンの白い布を被ったオバケが暴れてるようにしか見えないんだけど・・・。
「あぁこれですか。布団がずれない様に四隅を紐で結んであるので、まずそれを外してるんですよ。」
あぁ、だからシーツと布団の間に入ってるのか。
八戒がのんびり眺めているって事はほっといても大丈夫って事だよね、きっと。
あたしは当初の目的を果すべく、寝ぼけ眼の目を擦りながら洗面所へ向かった。
そこでは洗濯機が雨の時動かなかった分も働くような勢いで動いていて、横のカゴには悟空の苦労の結晶とも言える他の部屋のシーツが積まれていた。
「ここ最近ずっと曇り空だったり雨だったりしたから、洗濯物たまってたんだ。」
顔を洗ってから窓の外へ視線を向けると、見ているこっちの気持ちまでつられて明るくなりそうなほど眩しい青空が広がっている。
やっぱり天気が悪いと気分もあんまり良くないもんね。
実際この所雨が続いていたので八戒はあまり調子が良くなかったみたいだし・・・。
「。」
「はいぃっ!!」
突然後ろから声をかけられて思わず飛び上がった。
「すみません、驚かせてしまいましたね。」
「ううん、大丈夫。えっと・・・何?」
考えてた本人が急に来ると焦っちゃうのは何でだろう?別に悪い事してるわけでも考えてるわけでもないんだけどなぁ・・・。
「部屋のシーツ新しいのに交換したので、もう部屋で着替えられますよ。悟空も居間に行ってもらいましたから。」
「じゃぁちょっと着替えてくるね。」
「はい。着替え終わったら食事にしましょうね。」
「はーい。あ、八戒今日のご飯は何?」
部屋に向かって走り始めてちょっと気になったので八戒に聞いてみた。
すると八戒は口元に指を当てて内緒のポーズ。
「・・・お楽しみです。早く着替えないと悟空に全部食べられちゃいますよ?」
「えーっ!!!」
八戒が内緒って言う事は今まで食べた事がない朝食である可能性が高い!
八戒って時々そーゆーお茶目な事やるからなぁ・・・早く着替えよう。
大急ぎで着替えて居間に行くと、見るからにのんびりくつろいでコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる三蔵と、机をかじりながらテーブルに置いてあるセイロを熱い目で見つめている悟空と・・・あれ?悟浄がいない。
「おはよー三蔵。」
「あぁ。」
声を掛けたら一瞬だけこっちを見てくれたけど、すぐにまた新聞に視線を戻してしまった。
ま、何時もの事だけど・・・。
「もーハラ減ったぁ〜っっ!!」
「あれ?悟空まだご飯食べてないの?」
「朝飯はここ来た時八戒に食わしてもらった。で、お手伝いしたら八戒が10時のオヤツを早めにくれるって言うから・・・待ってんの♪」
フサフサ揺れる犬の尻尾が見える・・・幻覚、かな。
やがて席に着くと八戒が台所から新しいセイロを持ってやってきた。
「お待たせしました、、悟空。蒸したての叉焼饅頭ですよ。」
「「うわぁ〜〜〜vvv」」
セイロのフタが開けられた瞬間、思わず悟空と声がはもる。
真っ白でふかふかなお饅頭がいっぱい並んでる!!
「いっただきまーす♪」
耐え切れなくなったのか、悟空がセイロに手を伸ばして物凄い勢いで食べ始めた。
「八戒これすっげー美味い!!」
「ありがとうございます。お替りありますからね。」
「うん!」
嬉しそうに食べる悟空のその見事な食べっぷりに思わず見惚れてしまった。
やばい!ボーっとしてたら食べそびれちゃう!
慌ててセイロに手を伸ばしたら、横から今まさに手に取ろうとしていた物がお皿に乗せられて差し出された。
「・・・ほぇ?」
「はい、の分です。あと昨日の残りで申し訳ないんですが、良かったらワンタンスープもありますけどいかがですか?」
「えっと・・・欲しいです。」
「はい、ちょっと待ってて下さいね。」
そう言って席を立った八戒の背中を思わずじっと見つめる。
・・・八戒、何時の間にあたしの分取っといてくれたんだろう。それとも別に用意しておいてくれたのかな?
何て考えていたら、あたしのお腹がまるで早く食べさせろと言うように小さく鳴ったので温かいうちに八戒が取ってくれたお皿にのっている物に手を伸ばした。
「あつっ」
セイロから取り出したばかりなのか、それはとても熱かった。
気をつけながら一口食べると中からチャーシューが出てきた。
肉マンとは違う・・・少し甘めのタレと脂ののったチャーシューが口の中で蕩ける。
「美味しいぃぃv」
「お気に召しましたか?」
「うん!!すっごく美味しいよ八戒v」
「ありがとうございます。スープもどうぞ。」
「わ〜いv」
「オレもさっきそれ飲んだ!スッゲーうまい!!やっぱ八戒って料理上手だよな!」
「うんうんv」
悟空の意見に同意しながら叉焼饅頭とスープを交互に口に運んだ。
すると突然裏口のドアがバタンと音を立てて開いて、何やらブツブツ言いながらこっちに歩いてくる1つの影。
「・・・ったく朝から叩き起こされた上何でオレがこんな・・・」
「悟浄!」
「ん?あぁチャン、オハヨ。」
ポンと頭に手を置かれて、その後にあたしの隣に悟浄が大きな音を立てて座った。
ご飯に夢中で忘れてたけど、今まで何処にいたんだろう。
この様子じゃ朝帰りって訳でも無さそうだし・・・。
「終わったんですか?」
「あー・・・一応。」
よっぽど疲れてるのか、悟浄は頭を机の上に置いてある煙草を取るのも面倒臭そう。
「何か飲みますか?」
「・・・ビール。」
「もいるんですからひかえて下さい。」
「・・・んじゃコーヒー。」
「分かりました。三蔵も如何です?」
「あぁ。」
各自のリクエストを聞いた八戒は悟空の前にある空になったお皿を手に再び台所へと戻って行った。
あたしはご飯を食べる手を休めて隣の悟浄の顔を覗きこむ。
「悟浄何だかすっごく疲れてるみたいだけど何処行ってたの?外?」
「外・・・まぁ外っちゃ外だけど・・・」
な、何でそんな嫌そうな顔してるんだ?
外は天気がいいから気分がいいはずじゃないの?
そんなあたしの気持ちを読み取った悟浄は、体を起こして椅子の背凭れに体をあずけると近くの窓を指差した。
「今日ひっさし振りの上天気だろ?」
「うん。」
「暫く天気が悪くて洗濯が全然出来なかったんだよ。もう2、3日雨だったら着る服も無いくらいにナ。」
「へぇ〜じゃぁ良かったね、晴れて。」
「それが全然よくねぇンだよ!」
「ほえ?」
「朝、天気がいいの知ったアイツが朝帰りしたオレを叩き起こして何つったと思う?」
あー今日朝帰りだったんだ悟浄・・・って気にする所違うか。
えっと八戒が何て言うか?
「・・・ん〜、何だろう。」
「『久し振りの天気ですから家中の物、洗濯します。勿論手伝って下さいますよねv』って何か企んでるような笑顔で起こされたんだぞ!!」
拳で自分の膝を叩きながら文句を言う悟浄。
確かにそれは中々辛い目覚めかもしれない・・・笑顔でお願いする八戒には逆らっちゃいけないもんねぇ。
「そ、それで今まで洗濯物干してたの?」
「・・・あぁ、まぁな。」
「殆どが部屋に洗濯物を隠していた誰かサンの服ですから・・・自業自得ですよね。」
「は、八戒っ・・・」
「コーヒーお待たせしました。」
にっこり笑顔で悟浄と三蔵の前にコーヒーを置いた八戒は、ポンと手を叩くとテーブルに座っている全員の顔を見渡した。
「さて、そろそろ次の洗濯が終わりますね。最後にシーツを洗濯するのでそれが済んだら皆で仲良く干しましょうか。」
「「「「え?」」」」
この声に思わず全員が反応する。
悟浄とあたしは勿論、ご飯を食べていた悟空も・・・そして新聞を読んでいた三蔵ですら思わず顔を上げて八戒の方を見た。
すると八戒は今日の青空と同じような爽やかな笑顔で、まず三蔵を見た。
「朝早くから突然やってきて、やれご飯だお茶だ新聞だと用意させられて・・・そのまま帰るなんて事ありませんよね、三蔵?」
「・・・お前、俺に何を・・・」
三蔵が眉間に皺を寄せながら何か言おうとしたが、それより早く八戒は両手に饅頭を持ったまま動きを止めている悟空の方へ視線を向けた。
「それだけ食べたらもうちょっとお手伝いできますよね?悟空。」
「え・・・あ、う・・・うん!て、手伝うよ俺!!」
凍り付いていた悟空だったけど、八戒の声を聞くと手にしていた饅頭をお皿の上に置いてすぐに返事をした。
それに満足したのか、次に足元にあった恐らく悟浄が持ってきた空になった洗濯カゴを手に持ってそれを悟浄の前に差し出した。
「貴方の洗濯物はこれ以外にもまだありますからね、悟浄。」
「ハイ。」
見ているこっちが同情してしまいそうなほど肩を落として全てを諦めきっている悟浄。
そして最後にあたしの肩にポンと手がのせられた。
「勿論も手伝ってくださいますよね?」
その言葉と共にあるのは・・・とっても綺麗な綺麗な八戒の笑顔。
この家での暗黙のルールって言うか絶対守らなきゃいけないルールの1つ、綺麗な笑顔の八戒に逆らってはいけない。
「て、手伝うに決まってるじゃんv」
引き攣った笑顔でこくこくと頷くと、八戒は満足そうに微笑んで本日何回目かの洗濯機を回す為居間を出て行った。
確実に姿が見えなくなった後、別に打ち合わせをしたわけじゃないんだけど何故か全員が一斉に息を吐いた。
それが安堵のため息なのか、緊張が解けたため息なのか・・・その意味は心の中を覗かない限り分からない。
取り敢えずあたしのため息は・・・ホッと一息をついたため息だった事だけは確か。
確実に姿が見えなくなった時、隣にいた悟浄に小声で尋ねた。
「・・・悟浄、もしかして八戒機嫌悪い?」
「朝からチョーっと色々あってな。」
「そっか・・・」
「やっぱ八戒怒ると超コエー!!」
「・・・ちっ。」
「今日はいい洗濯日和ですね。」
「そうだねぇ・・・」
さっきまでの居間での緊張感は何処へやら。
あたしは空になった洗濯カゴを足元に置いて、大きく伸びをした。
チラリと視線を後ろに向けると、家の壁に寄りかかるように悟浄と悟空が座り込んでいて、三蔵は壁に寄りかかって額の汗を拭いながら懐に手を入れ煙草を探していた。
庭の物干し竿には所狭しと洗濯物が干されていて、それでも場所が足りないので洗濯ロープも側の木に結ばれていてそこにはさっき洗濯したばかりのあたしの部屋のシーツも含まれていた。
「それにしても・・・よくこんなに洗濯したねぇ。」
「次にいつ干せるか分かりませんし、それに今日は人手がありましたからね。」
「そうだねぇ・・・」
ここは取り敢えず笑っとこう、うん。
「これでスッキリしました。」
「え?」
「が休んでいる間に色々あったんです。」
そう言えば悟浄もそんな事言ってたよね。
一体あたしが寝てる間に何があったんだ?
それを聞いてみたい気もするし、聞いてまた八戒のご機嫌が悪くなったら怖いって気もするし・・・。
「さて、一息ついてお茶でも飲みましょうか。おいしいお菓子を頂いたんです。」
「わ〜いお菓子♪」
思わず甘い物につられて喜んだけど、八戒のひと言がちょっと気になって思わず足を止めた。
だって今『一息』って言ったよね?
あたしの考えなんてあっさりお見通しの八戒は、さっきと変わらぬ爽やかな笑顔であたしの手を掴むとごく当たり前のように言った。
「干したら次は取り込まなきゃいけないじゃないですか。それに・・・これだけ多いとたたんで片付けるのも大変ですしね♪」
日の光の下で見る八戒の笑顔は・・・それはもう何とも言えないくらい綺麗でした。
それから皆でお茶をして、頃合を見計らって皆で洗濯物を一斉に取り込んだ。
日の光をいっぱい受けたシーツやタオルは、温かくてふんわりしてて気持ちよかった。
今日は一日やけに忙しかったけど、その代わり滅多に見れないものが見られたなぁ・・・。
テキパキと指示を出しながらも上手に飴とムチを使い分ける八戒はともかく、
一生懸命お手伝いをする悟空とか、実は意外に洗濯物を干すのが慣れている悟浄。
・・・でも一番の目玉はやっぱりブツブツ言いながらも八戒に渡されたシーツを数枚干した三蔵の姿、かな。
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14244hitをゲットされました ゆっこ サンへ 贈呈
『うたた寝で皆で洗濯物を干すv』と言うとてもほのぼのした物をリクエストされたはずなのですが・・・どうしてこんなに背筋が寒いのでしょう(苦笑)
お手伝いから逃げる三蔵を何とかしようとしたら・・・最強八戒さんが登場してしまいました!!
八戒の不機嫌の理由は・・・一日をどう過ごすかを考え終えた後に色々と突発的事項が起きてしまったと言う事です。
三蔵と悟空が朝早くやって来た、悟浄が朝帰りした時服が汚れていた、しかも異常な量の洗濯物を隠していた・・・等々。
八戒じゃなくてもスケジュール通りに行かないとイライラする事ってあるじゃないですか!
と言う訳で、八戒の機嫌は悪かったのですよ。大した事じゃなくてスミマセンm(_ _;)m
ゆっこさん、リクエストありがとうございましたv
少しでも楽しんで頂けると嬉しいです!
また遊びに来て下さいねvvv