ある日の特別任務?
「本当に僕が行くの?」
「なら隊長のお気に入りだから平気だろ?」
クルーゼ隊長の執務室の前の廊下で何やら話をしている黒い複数の影。
「でも・・・」
「そんじゃぁアスランにばらしてもいいんだな?」
「ラスティ〜っ!!」
「ばらされたくなきゃ早く行けよ♪」
「ミゲル、人ごとだと思って楽しんでるでしょう。」
「おうっ♪」
廊下にいた人影はラスティ、ミゲル・・・そして医局で働いている少年・・・の姿をした少女、であった。
何を言っても二人が聞いてくれない事を読み取ったは大きなため息をついて一歩足を進めた。
「・・・失敗しても知らないよ?」
「大丈夫だって!」
「ここで待っててやるから頑張れよ!!」
「・・・はーい。」
の後姿に手を振りながらラスティとミゲルは酷く楽しそうな顔をしていた。
何かの拍子にの正体を知ってしまった彼らは、を助ける側にいると思いきや時折このようにそれを盾に妙な遊びを思いつく。
戦場と言う殺伐とした中に楽しみを見つけるのは大切な事かもしれないが、今回はいささか度が過ぎている気もする。
彼らがに言ったのは・・・クルーゼ隊長の素顔を見て来る事、だった。
医局の人間でありながらもクルーゼの目に止まり、今や隊長の専属秘書も行っているは誰が見ても彼のお気に入り。
現に他の人間なら即刻罰則が与えられそうな事をがやってもクルーゼは苦笑するだけで何も罰を与えていない。
それを知ったラスティとミゲルはの秘密を盾に取り、今回の暴挙に及んだのである。
は部屋に入る前に小さく深呼吸をしてからカードキーを通して隊長の執務室の扉を開けた。
ちなみにこの部屋に入るには入り口横のモニタで隊長に許可を取ってからでないと普通の人間は入れない。
しかしはクルーゼの秘書になった時に仕事の都合上、部屋のカードキーを渡されているので許可なく出入りできる稀有な人物である。
「クルーゼ隊長、失礼致します。」
ドアが閉まると同時に右手を額に当て正面の椅子に座っているであろう隊長に礼をする。
しかしいつもならそこで書類の整理などを行っている隊長の姿はそこにはない。
「・・・あれ?おかしいなぁこの時間は大抵ここにいるのに・・・。」
首を傾げながら部屋を見渡すが何処にも隊長の姿は見受けられない。
「これじゃあミゲル達のお願い聞けないよ・・・ね。うん、隊長は居なかった!そう言う事で♪」
鼻歌を歌い出しそうな勢いで部屋を出ようとしたは、そこで奥にあるソファーの存在を思い出した。
クルーゼは書類整理や緊急時の対応に備えてここにいる事が多いので、よく奥のソファーで休んでいる事がある。
それを思い出してしまったは隊長が居ない事を確実なものにする為、ソファーの置いてある場所へと足を進めた。
そのまま部屋を出ていればに被害は及ばなかったが、この慎重さが今後のの運命を変えるものとなる。
「・・・あ、いた。」
そっと中を覗き込むとこちらに背を向けて眠っている隊長の姿があった。
しかも机の上にはいつも顔を覆っている仮面が置かれている。
(あ!ラッキー!!)
休んでいる隊長の素顔も見れて、あまつさえ寝顔まで見れるとは!
は忍び足でソファーに近づくとそっと正面に回り込んでその素顔を見ようとしたのだが・・・
「・・・見えない。」
僅かに目元が見えそうなのだが、しっかりシーツを顔まで掛けているせいで普段仮面をつけているのと同じようにしかその顔が見えない。
ん〜っと首を捻りながらは恐ろしいまでの大胆な行動に出た。
「起きないで下さいね、隊長。」
は隊長が被っているシーツに手を掛けてそれを外そうとし始めた。
ドキドキしながらシーツに手を掛けた瞬間、それがまるで生き物のようにの方へ覆い被さってしまい、の視界は一瞬にして真っ白なものになってしまった。
「き・・・うわぁっ!」
素で悲鳴を上げそうになったは慌てて声色を戻し、何とか危機を脱出した。
もぞもぞとシーツから抜け出ると、そこにはいつものように仮面をつけた隊長が銃をこちらに向けてソファーにゆったりと腰掛けていた。
「何だ、君か。」
「た、隊長・・・」
「こんな所にまでやってくるとは・・・急用か?」
「いえ・・・その・・・」
言えない。ラスティとミゲルに言われて隊長の素顔を見に来て、ついでに寝顔も見てしまおうと思った・・・なんて。
答えに困っているとクルーゼは手にしていた小さな拳銃をソファーの下へ戻してじっと目の前に居るを見た。
「誰かに何か言われたのか?」
ギクッとの体が震える。
はもともと医療事務に長けている普通の一般人。
軍人と違ってポーカーフェイスなど出来ない。
ましてアスランとキラと一緒に居たのだからその素直さは計り知れないほどである。
案の定顔色が変わり、落ち着きがなくなったを見て、クルーゼは僅かに口元を緩めた。
「・・・ふむ、察するに私の素顔でも見て来い・・・と言われでもしたか?」
「なっ!?」
顔を真っ赤にして立ち上がったを見て確信した彼は口元に手を当てると小さく肩を揺らし始めた。
どうしてこんな少女がこのような場所に居るのか、そう思わずには居られなくなったからだ。
「、それは君の任務か?」
「は・・・はい。」
全てを見抜かれたはしょんぼり肩を落として隊長の問いに頷いた。
「クルーゼ隊の人間が任務を放棄するようでは困る。」
「え?」
「こちらに来なさい。」
「は、はい。」
クルーゼが手を伸ばして届くか届かないかの位置に真っ直ぐな姿勢で立ったを見て、彼はもう少し近くに来るように指示した。
何の疑いも持たないは素直にその指示に従い、クルーゼから距離にして僅か数十センチと言う距離まで近づいた。
「他の人間には他言無用だ。」
「はっ!それは勿論です。」
の返事を聞いてクルーゼが仮面に手を掛けてが身を乗り出した瞬間、その頬に何か柔らかな物が触れた。
「・・・」
それがクルーゼの唇だと気付くには時間がかかって、隊長が離れていくと同時には無意識に自分の頬に手を当てた。
暫くそのままの体勢で頬を押さえているにクルーゼがいつもの口調で話しかける。
「以後そのようなくだらない任務を言う者があれば随時私に報告するよう。以上、下がって宜しい。」
「・・・は、はい。失礼致します。」
力の無い声で返事をすると、はそのまま踵を返し執務室を後にした。
「おっそいなぁのヤツ。」
「まさか失敗したんじゃねぇか?」
「でもそれならすぐに出てくるだろ?」
「あっ!来た!!」
廊下の門で待ち構えていたミゲルとラスティの前に、まるで千鳥足のようにふらふらした足取りでこちらに向かってくるの姿を確認した。
明らかにいつもと様子が違う事に気付いた二人が慌ててに駆け寄る。
「おいっ!!!」
「何でこんな顔赤いんだ?」
心配したラスティがの額に手を置くと、それは人の体温にしてはやけに熱い。
「のヤツ熱あるぞ!!」
「何ぃ!!」
「風邪引いてたのか?」
「ったく医者の不摂生ってヤツか?」
「今医局に連れてってやるからな!」
の腕を二人の肩に掛けて慌てて医局へと向かっていく後姿を見つめる黒い影が一つ。
それはつい先程、が訪れた部屋の主。
ラスティ、ミゲル・・・彼ら二人の戦死の原因はこの事件とは無関係・・・と思いたい。
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12421hitをゲットされました まい サンへ 贈呈
『クルーゼ隊長でギャグ』と言うリクエストでしたが、これギャグになってますか!?しかも何故か謎の二人組みが(笑)
本当は最初ザフトの面々で隊長の素顔の話をしようとしたんですが・・・話進まなくて(TT)
急遽捏造しても大丈夫な二人を出演させちゃいました(笑)
ちなみに隊長は寝てません、起きてます!ヒロインは単なる医局の人間なので気配を消すなんて器用な事できません。
それでも寝たフリをしてヒロインをからかうとは・・・流石隊長!やりますね(ニヤリ)
そしてプチリクエストのキスも軽めにいれてみましたが如何でしょうか!?
まいさん、リクエストありがとうございましたv
ちょっと内容がずれてしまったかもしれませんが、どうぞお受け取り下さいv
少しでも楽しんで頂けると嬉しいです!
また遊びに来て下さいねvvv