荒野をくだって

 

 不毛。

想いが肩にのしかかる。

躰の力を奪い全てを萎えさせる。

 

 何処かに。

 

 何かが。

切迫した想いもまた、躰を締め付ける。

何をも成し得てこなかった。

 

 家庭的にも。

 

 社会的にも。

 

 何をも。

 

 何処かに何かがある筈だ。

そんな愚にも付かない想いは悉く打ち破られた。

 

 それでも尚。

 

 何処かに何かが。

そう信じることそしてその想いのみを。

己の存在証明として。

想う己はここに在る。

 しかし。

 それ以外には。

 無い。

 

 己こそが不毛。

 己こそが荒野。

 己の想いは不毛に彷徨う。

 己の想いは荒野に流離う。

 

 彷徨い流離うことこそが己の存在を証明するものなのか。

夢と現の間を微睡む。

何処かに行き着き何かを為す夢。

何処に係留するともなく何をも成し得ない己。

想いと躰のみが夢を向く。

 

 夢の中で。

 

 夢に向かい。

 

 車を走らせる。

 

 不毛の地から離れるために。

 

 荒野から逃れるために。

 

 

 荒野の、中を。

 

KAI Story