-サスライ-
平穏な、日常。
暮らしには十分すぎるサラリー。
いつもと同じ帰宅時間。
夕日を後に、車を走らせる。
同じ道。
見慣れた建物に車を滑り込ませる。
エレベーターのボタン。
顔も知らない隣人と乗り合わせる。
もう、私など古参に入る。
他の部屋では季節毎に入れ替わりがある。
会釈だけを交わし、降りる。
見慣れたドア。 惰性に揺られるような、生活。
定住を求めていた筈の私は、いまだ借り物に住む。
望郷の念に駆られる事すらあった私は、いまだ遠く離れ、街に居る。
私は、どこで、なにをしようとしているのだろう。
私は、どこで、なにをなすべきなのだろう。
私の描いていた筈の将来は。
日々の生活に埋もれて垣間見ることすらできない。
明日はただ今日になるだけ。
誰かの唄を思い出す。
酒を、口に運ぶ。
自虐的な笑みが絶えないまま、眠る。
静かに、夜はふけ、朝が来る。
今日という日の、朝。
平穏な日が、また始まる。
私は自答を押し隠し、仕事に向かう。
刹那的な居場所。
刹那的にその時だけの現在を見ていればよい、場所へ。
朝日を後に、車を走らせる。