日本が誇る世界最大の漫画家と言って差し支えあるまい。

彼はよくヒューマニズム云々と取り沙汰される事は多いが、わしはそうは思っていない。

むしろ厭世的、人間に対する絶望的観測、そういったものが彼の作品の中を満たしているとすら思う。

しかし、彼が愛するのはその欺瞞に満ち、狡猾で、利己的、狂人的な人間そのものなのであるとも思うのだ。

 

 

 火の鳥

 手塚治虫のライフワークとも言われるシリーズである。

異形の男、サルタを狂言回しとして過去から未来へと永劫に続く人間の醜さと美しさを描く。

手塚治虫版イントレランスとでも言うべきか。

人間社会の中にある美醜全てを描こうとしているように思えるシリーズである。

 人間の全てを描こうとするこの姿勢は、他の作家と一線を画する部分ですらあると思う。

 

 ブラックジャック

 言わずと知れた手塚治虫中興の名作である。SFじみた内容ではあるが・・・・(笑)

法外な治療費を請求する無免許でしかも天才外科医、ブラックジャック。

しかしそんな彼にも優しさ、暖かさは備わっている。

手塚治虫の描こうとした人間の抱える矛盾をデフォルメしたものと捉えることもできよう。

それが手塚治虫の甘さでもあるのかもしれないが。

 

 ブッダ

 仏教団体よりはかなり反発を食らったらしいが、仏教の根本に触れたことに於いては

異論を挟む余地のない作品であると思う。わしはこれほどに仏教を教わったことはない(笑)。

 仏教の根本は、人は何故悩み、そして如何にして悩みを克服していくのか、この二点である。

”人間であった釈尊”とその周りの人々を描ききったと言っても良いだろう。

(もちろんフィクションも混ざっていることは一応断っておく)

 

 

 

 

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