時の人

”おい、またあんなぁ、携帯の番号変わったど”

”またかい” ”要するに女変わったゆうことじゃの”

”ほんま好きじゃのう”

”・・・ええのう”

”うらやましがっとる場合じゃないで”

”ほんでもあんなぁ、この三年で何回携帯変えたよ?”

”数えとうないって”

”しかもあんなぁ仕事忙しいんで

”ありゃ女食うんが仕事じゃって”

”いや、ちがうで。ありゃぁ仕事ハードなんで、ほんまに。泊まりも結構多いらしいで”

”休憩じゃのうてお泊まりですか”

”違うわ。あんなぁ月に5回は泊まっとるで”

”当直の金あるけえじゃろ”

”ただってゆっとったけど”

”何じゃそりゃ。でもあんなぁ、地元に帰ったらボンボンじゃろ”

”まあ、そうらしいのう”

”しかしあんなんによお女付いていくよのお”

”口悪いしええ加減じゃけえの。でも、俺らん中で、ここ一番で当てんなるんはあれで”

”そおかあ?”

 ”ほんまじゃって。あんなぁ仕事場でもあのまんまらしいけえ、
人間性は結構誤解されとるけど、仕事の面ではかなり信用されとるで”

”どんなんや”

”自分の責任はとろおが”

”女にはとらんけど”

 ”仕事の話じゃって。ありゃぁのぅ、突発的なことが起こったときに行動は早よおて的確じゃけえ、
必ず当てにされるらしいで” 

”自分で言うとるだけじゃないん?”

”いや、こりゃわしが職場のヤツから聞いた話じゃけえ”

”ふうん”

”そんでのお、女に対してはああじゃけど、男に対してはほんま、優しいんで”

”あんなぁ両刀か”

”違うって。俺がのお、振られたことがあったろ”

”いつの話や”

”二年ほど前の奴”

”お前はお前で年に何回も振られとるんじゃけえ先に時を限定してくれえや”

”放っとけ!そりゃあええんじゃ。ま、そん時俺結構マジじゃったけえ、 その分落ち込んどったんよ”

”そうじゃったか?”

”な、みんなそう思おとろお”

”そんなん言わにゃあわからんよ”

”でもあれだけじゃ、いきなり俺んとこに一升瓶持ってきて「呑もおか」って 言うてくれたん”

”たまたまじゃろお”

”いや。ありゃあのぉ、あれで結構女で苦しんだんじゃと”

”それで今あれかい”

”それが不思議なところじゃがのぉ”

”ほんで?”

”ああ、ちいとばあ酔おた処でのお。あんなぁ言うんよ。これからどうするんかって”

”なにそれ”

”要するに諦めるか粘るかって事”

”お前どおゆって答えたん”

”もおええって”

”それで?”

 ”あんなぁ怒るんで。そんなら踏ん切り着いたらしい顔して歩けって。
踏ん切り着いて ないけえそんな顔なんじゃろって。なんで諦めきられんのに諦めた振りするんかって”


”ほんで”

”結局もう一回行って、ダメじゃったけどのお”

”そんなんお前しんどかっただけじゃなあや。傷口に塩擦り込んだだけじゃなあや”

”そうでもないで。後楽じゃったわ。なんかしらんけど、可能性がないならないで、 はっきりした方が楽じゃわ。それから、じゃの。俺がしつこおなったん”

”ほんで何回も振られとりゃあ世話ぁないわのお”

”ほっとけって。でも、楽んなったで。俺”

”ほいじゃがあんなぁ、女の気持ち考えとんか?”

”考えてないって。あんなぁいっつも言うとるもん。男と女は違う。違うもんの気持ちが 解るかいって”

 

”あ。なるほどね・・”

 

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