My name is KAI Encore

at SANKEI HALL in OSAKA 2000.12.30

 最初にお断りしておきたい。 今回のこのレポートに関しては、セットリスト、

細かな構成、MC等については全て省かせていただく。

ある一曲のみについて、書く。

 何故なら。

「My name is KAI」と銘打った2000年夏の公演と、 そのテーマは同様であるとわしは考えるからである。

甲斐よしひろは自分自身がエンターテイナーである事を その表現により明確に実証してみせた。

時期及び曲は変われども、その本質に変わりはないと考えるからである。

 ならば、もう少しここから踏み込んで書いてみたい。

 もう少し甲斐よしひろの表現したかった事、 表現し得た事について書いてみたい。

  そこでわしとしては、「どの程度の」、「どんなに凄い」 エンターテイナーであったかについてここで記してみたい。

 デッド・ライン。 大阪では二曲目に唄われた曲である。

オリジナルは周知の通り、アルバム「Love minus Zero」に含まれる。

全体的にエコーを効かせた壮大な雰囲気が印象的な佳曲である。

一般的にどのような印象を持つものかはわしの知る処ではないが、 個人的には、

照りつける太陽の中、地平線の見える広大な場所を 疾走する姿を連想する。

しかもそれは生きるか死ぬかの遁走ではなく、 たかが命のかかったドライヴ、

とでも言いたげな その状況をすら楽しむかのような姿である。

あくまでも個人的印象である事は繰り返しお断りしておくが。  

 よくご存じの事なので書くのも憚られるが、 このライヴでの楽器は、アコースティックギターとマウスハーブのみである。

オリジナルにあるようなエレキ・ギターやシンセ、ドラム等は全くない。

オリジナルでは、広大な場所に響き渡るようなエコーの効いたドラムが わしの感じる印象に大きく影響しているように思う。

しかし、このステージ上にそんなものはないのだ。 そこには、甲斐よしひろと僅かな楽器があるだけなのだ。

 ここまで書けばもうお解りだろう。 この曲から、どのような印象をわしが受けたか。

一言で言ってしまえば、わしは甲斐よしひろの向こうに。

   地平線を見た。

   照りつける太陽を見た。

   あの狭いステージ、ビルの中にあるキャパ1500のホールが まるで大地そのものであるかのような錯覚を覚えた。

  そしてそこに立つのは。 自信に裏打ちされて胸を張る、甲斐よしひろだった。

わしの感じた地平線と太陽は、甲斐よしひろのスケール、

言い過ぎであるならば彼が表現しようとしたスケール感だったに違いない。

 錯覚、思い込みで済ませば済む与太話である。

しかし「俺の全てを見せてやる」と吼える甲斐よしひろの向こうに見えた地平線は、

甲斐よしひろ自身、甲斐よしひろというエンターテイナーの持つスケールの大きさ そのものであったとわしは信じる。

 

 恍惚にも似た爽快感を、わしは確かにあの瞬間味わった。  

 

KAI Lives