2002年 ワールドカップ 一次リーグ

日本-チュニジア戦

 メンバーはロシア戦と全く同じ。

森岡の怪我は癒えているとの情報だったが、大事をとったのか。

前試合で結果を残した宮本を信用したのか。

宮本の所属するガンバは大阪のチームである。

より宮本に与える力が大きいと読んだのか。

 憶測など吹き飛ばすように、キックオフから日本代表は飛ばす。

ロシア戦とほぼ同じように、激しいプレスをかける。

ハーフウェイライン辺りから、既にチュニジアの出すパスは

コースが限定されており、日本はかなり楽に守っている。

中央に無理矢理パスを出したところで、 稲本、戸田の網に引っかかる。

ボールを持った稲本は中央をドリブルで駆け上がる。

むしろ持ちすぎである。

フリーの選手がサイドにいても中央に走る。

故意なのか、見えてないのか。

対照的に戸田はセーフティに、ゆったりとパスを回す。

リズムを落ち着かせる。

戸田は完全にペースメーカーと化している。

ボールキープ率は、チュニジアのほぼ2倍。

ゆったりと後ろでボールを回し、 サイドに回ったところでロングフィードが前方に出る。

鈴木は躰を張ってキープ。 躰の入れ方が前二試合よりいい。

それとも、チュニジアのDFの能力が他二国より劣るのか。

キープできなくても、ファウルを貰う事も多く、 鈴木のポストとしての働きは大きい。

日本が攻める時間帯も長いが、決して無理はしていない。

無理しているのは稲本ぐらいだった(笑)

 30分過ぎ、ここまでほとんど消えていた柳澤がボールを受け、前へ。

DF二人の間を通すように、右隅へシュート。

やや当たりが弱かったか、難なくセーブ。

チャンスらしいチャンスはお互いに無く、前半は終わる。

DFラインに乱れはなく、戸田と稲本の守備も良い。

このペースで行けば、点を取られることはないだろうと安堵。

ただ、楢崎の飛び出しは思い切り良すぎ(笑)

もともと瞬発力はあるだけに、今までの守備範囲が狭かったのかもしれないが。

それでも安定したキャッチングで安心はできた。

 後半に入る。 二人がセンターに立つ。

森島と市川である。 早々の交代。

柳澤に疲れるほどの動きはなく、むしろ消えていた時間が長いことを考えると、

読まれていて機能しないと踏んだのか。

稲本は疲労があったのか、守備では貢献していたが、

攻撃の際はボールを持ちすぎ、お世辞にも機能していなかった。

前半だけだから全開で行け、そんな指示でも出ていたのか。

 前半右サイドの明神がボランチに下がり、

市川が右サイドに張る。 中央より、サイドの攻撃を重視したか。

早々に、この采配は結果を出す。

 ヒデから鈴木。

DFとの競り合いから零れ球。

中央の森島がダッシュ。

短い距離を小さなステップで。

DFより遙かに速く、ボールに。

ダイレクトで蹴り込む。

ボールはキーパーをあざ笑い、左隅へ。

 

 なにより欲しい、先制点。

これで日本は3失点しない限り、一次リーグ突破である。

チュニジアは点を取らなければならないのにも関わらず、

さほどチェックも攻撃の厚みもない。 気持ち前に出たかな、という程度。

日本は焦ることもなく、むしろ余裕が見てとれる。

しばしの膠着。 やはり前に出ざるを得ないチュニジアは徐々に攻勢となる。

危ないシーンはないものの、日本側でのプレイが目立つ。

カウンター気味に日本が攻撃を仕掛けても、 簡単に奪われるシーンが増える。

右サイドの市川は突破せず、パスを探す事が多く、

出しても中央でカットされ、そのまま守勢に転じる。

このまま攻められればまずい、失点もありうると考えた矢先。

フリーのボールが市川に渡る。

市川は、ペナルティエリアに向かってドリブル。

縦への突破はしないとでも決めているのか。

しかし、チュニジアの寄せが遅い。

ファウルを、そしてかわされることを怖がったのか。

市川は狙い澄ましたクロス。

中央に。

ヒデ。

ダイビングヘッドがGKの足を擦り抜ける。

ダメ押し。

決まった。

確信した。

 

 これほどまでに、日本代表が闘える日が来ようとは。

チュニジアは必死に攻勢をかけるものの、

コースを確実に消す日本DFにゴールは割れない。

一本だけ、危ないシーンがあったがバーに救われる。

松田の足に当たり跳ね上がったボール。

しかし松田のポジションは完璧。

これで入ったら運が悪いとしか言えない。

結果は逆に、幸運だった。

 次の交代。ヒデを下げ、小笠原。

この頃からチュニジアの足も止まり、決定機はない。

余裕を持って、タイムアップを待つ。

笛。

 

 開催国の義務である、一次リーグ突破を、

我が日本代表は果たしてくれた。

最高の誕生日だ。

人前でなければ、わしは涙を堪えることはなかったろう。

これほどまでのチームができようとは。

トルシエの采配も、戦術も、批判を跳ね返し消し去るのに十分だった。

揶揄されてきた選手も、素晴らしい闘いを見せてくれた。

 

 中でも、わしは戸田を讃えたい。

目立つプレーはないものの、危険地帯には必ず顔を出し、

むしろ危険を未然に防ぐ動き。 ボールを奪ってからのパスにミスはない。

しかも、セーフティ。 慌ただしいリズムも、彼がボールをキープした後には収まっている。

冷静沈着。ファウルを犯すときですら。

彼のような選手は、これまでの日本にはいなかった。

本当に素晴らしいプレイヤーである。

 

 もちろん他の選手のパフォーマンスも素晴らしかった。

わしはこの代表を誇りたい。

我が代表として誇りたい。

過去この国で。 誰もが成し得なかった大業を成し遂げた彼らを。

 

有り難うという言葉が不適切であることは承知である。

しかし言わせて欲しい。 本当に有り難うと。

そして。 次の闘いへ。 まだ見ぬ闘いへ。

 

健闘を心から祈る。

 

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