2002年 ワールドカップ 一次リーグ

日本-ロシア戦

 メンバー発表。

右サイドが市川から明神に変わり、

負傷の森岡に代わり宮本が入る。

ラインコントロールが勝負の決めてになると予感。

 

 前半開始早々、激しいプレスをかける。

ゆったりとロングボールを多用したベルギー戦とは全く違う。

プレスをかけて来、また細かい繋ぎを多用するロシアには

ロングボールを多用して下手にボールを与えるよりも

じっくりとキープした方が有効だと読んだのか。

相手により、また試合により戦術を変更できるようになった。

代表の成長に感嘆せずにはいられない。

もちろんそれを導いたトルシエにも。

何せたったの4年前には守備だけも満足にできず、

攻撃の手など何も持たずフランスに赴いたのだ。

それを考えれば隔世の感、である。

 

 最初のシュートは、日本、稲本。

コンディションも上々なのだろう。

この一年間練習と二軍戦ばかりに出ていたことが

決して無駄ではなかったとプレイで表現する。

激しいプレスの掛け合いの中でゲームは進行する。

ベルギー戦で見られなかった松田や中田浩の

オーバーラップも随所に見られる。

 決定的と考えられる場面は日本に多い。

ヒデのシュートはバーを遙かに越える。

足首の怪我が懸念される。

踏ん張れないのか。

 ロシアはカルピンから右サイドを抉ろうとする。

前半終了近く、右サイドを完全に抉られた。

フラット3の成否がラインコントロールとサイドの対応にかかることを如実に示す。

グラウンダーのクロスがゴール前を抉る。

戸田が転びながらもボールを外に掻き出す。

 

 恥ずかしながら。

わしはこのプレイがファウルの上であることに気づかなかった。

リプレイを見れば、戸田のファウルは明らかであった(笑)

しかし主審の角度からは見えていないだろうし、

副審には死角であり、ましてラインを見る視点からは

遙か遠くのプレイだった。

これも全て計算の上ならば、

そら恐ろしい選手である(爆)

褒められたことではない。

見られればPKに加え退場は必至であるのだから。

ただ、あのピンチに冷静だったことだけは評価したい。

常に冷静な彼は、この試合を通じ日本を守っていったのだから。

結局お互いにチャンスはありながらも決定機はなく、

0-0のまま前半終了。

 

 後半に入り、日本のメンバーはそのまま。

ロシアはFWを交代。

前半よりも激しくプレスをかけてくるロシア。

開始早々の後半6分、中田浩がハーフウェイラインを越えて来る。

ペナルティエリアには柳澤、ニアサイドに稲本。

アーリークロス。

ワンタッチでボールを落とす柳澤。

稲本にぴったり。

明らかにオフサイドはなかった。

某反日国の新聞ではオフサイドと言い切っているらしいが(瀑)

 トラップして狙い澄ましたシュートはゴール右上隅に。

 

 ゴール。

またも、稲本が決めてくれた。

素晴らしいゴールである。

 ロシアは更にFWを交代。

一点返すべく必死にプレスを仕掛けてくる。

ものの数分後、この日最大のピンチが日本に訪れる。

クロスを中央でヘディングで流した先に、FWが一人。

飛び出す楢崎。

タイミングは間違ってない。

しかし難なくかわされる。

シュート。

ネットが揺れる。

サイドネット。

安堵の空気が流れる。

 

 選手達は、気を緩めてはいない。

ボールをクリアした後、数回カウンターのチャンスが回ってきた。

しかし悉く浮いてしまうシュート。

ヒデのシュート。

僅かにGKが触れたように見える。

触れていなければ、ほんの数mm撫でるように蹴れていれば。

残念ながら、バーに嫌われ、ゴールならず。

この後、鈴木に代え中山を投入。

 

 わしはこのトルシエの采配に拍手したい。

専守防衛に徹することのできないチームである以上、

守りに入ると明確な姿勢を見せるのは危険すぎる。

そこでまずFWを投入。

まだ攻めるのだという意識を日露両チームに持たせる。

しかしその実、中山は守備をメインに働いていた。

警告を受けるほど激しく、ボールに、ロシアDFに食らいつく。

ロシアは中山投入により作られた雰囲気も、

中山の守備も嫌だったろう。

その上で、小野を服部に交代して守備強化。

コンディションが完璧でない選手を交代させるのは自明であり、

これも守備に入る印象は薄い。

この二回の交代は一連しており、非常に優れていたと思う。

 

 それでもパワープレイ気味のロシアに対し、

この頃から日本はカウンターもままならない。

DFのみならず、稲本や戸田も献身的にゴール前を塞ぐ。

この二人の働きはこの試合で特筆に値する。

ゴールも決め、ゴールライン付近まで守りに入った稲本。

常に稲本とのポジションを調整し、

危ないシーンをほとんど作らせなかった戸田。

二人とも足を攣らせそうになりながらも、必死で守り、攻めた。

 

 ロシアに攻め立てられて、右サイドの明神はほとんど右サイドバック。

残るMFはヒデがやや前方にいるのみで、

稲本と戸田はDFの前で守備に徹する。

この時間帯の守備には注文を付けたい。

バランスが崩れていたのだ。

ラインコントロールに比較的難のある宮本なので

下がり目で確実に前方を向いて守備できるようにしたのはいい。

しかしその結果、ボランチとの距離が間延びし、

尚且つFWとの距離も開いたためにこぼれ球を全て奪われる状態に陥った。

確実を期するためのラインは解るが、

ならばボランチ以前のポジションも修正しなければならない。

プレスをかけられており、DFラインでボールを繋ぐ余裕も

またその安全性も確保されていなかったのだからクリアは当然だが、

その後拾われては元の木阿弥、である。

 

蛇足ながらこの状態をDFのみの責にしていた 某元ガンバ監督もいるが、

この人の意見は無視していい(笑) 。

 

 ただし冷静さは失っておらず、

逆にロシアは焦ったのか ロングシュートばかり

狙ってきたため崩されずに済んだが。

一試合トータルで考えれば、

最初から全開でプレスをかけていたのが功を奏した。

日本にももちろんだが、ロシアに疲労の色が濃い。

ここまで計算できていたのなら、トルシエの采配は素晴らしい。

ロシアのロングシュートは悉くバーを遙かに越えて行く。

プレスをかけてくる動き自体はさほど落ちてはいないが、

キックの時には如実に疲労の色が現れる。

稲本に交代した福西もセーフティな動き。

 

 タイムアップ。

ホームながら、ワールドカップでの初勝利である。

ホームであったからこその勝利であることに異論はないが、

わしは素直に喜びたい。

この日が来ることなど、夢のまた夢の寝ぼけ話に過ぎなかった。

 

 ただ喜んでばかりいるわけには行かない。

一次リーグを突破してこその、

ワールドカップでの勝利なのだ。

まだ今は勝ったとは言えない。

浮かれる者も多いが、監督や選手達は地に足を着け、

油断することなくチュニジアと闘ってくれることを祈る。

チュニジアは弱小国ではないのだ。

最低限引き分けを。

 

 できる事ならば、勝利を。

 

Football