’2001 親善試合

日本 vs スペイン戦

 守りに守る。これだけで評価すべきかそうではないのか。

そんなことを思わせる一戦だった。 思うに、日本と世界との差は思うほどには狭まってはいない。

何度も繰り返すようだが、技術的な差は二年や三年で埋まるものではない。

どのようにボールを受け、どのようにボールを扱うか。

そのような技術の差が少々のことで埋まるものではないことを実感させられた。

くどいのは自分でも判っているが、ボールを受けるポジショニングも技術のうちなのである。

受けた瞬間、つまりトラップの技術も日本は拙い。

トラップとは次の動き〜ドリブルなりパスなり〜に繋げる技術なのである。

ボールをただ止めることなのではない。

ポジショニングとトラップ、この二点で、日本は明らかに先進国に劣っている。  

 その絶対的な差をどう埋めるか。

これは正にリアルに受け止め対策を練らなければならない問題である。  

 そこでトゥルシエが採った戦術とは。カウンターである。

まずこれまでのシステムに色を付け、フラット3に両サイドバックを加える。

MFは中田以外はボランチの三人。 要するに守備的な選手が8人となるわけだ。

 

 守備に関しては、まずまずの成果が得られたのではないだろうか。

とにもかくにも1失点で抑えたのだ。

結果的には、である。 内容的に言うならば、成功とは言えない。

と言うのも、シュートを打たれ過ぎなのである。

シュートを打たせないのが守備本来の仕事であると言ってしまえば、

この試合の内容に関しては不合格といわねばならない。

なぜシュートを打たれたのか。 ボランチのラインが中途半端なのである。

下がりすぎてもいないが、ちゃんと詰めてもいない。

以前を思えば進歩しているが、欲を言えばもう早めに相手側に詰めて、

せめてパスコースを一つ減らすぐらいのことができれば良かったと思う。

むしろパスコースを切ることだけを考えても良かったのかもしれない。

以前も言ったが、僅かなスペースを有効利用できるのが強国の選手なのだ。

中盤で自由にさせすぎという感が強い。

中盤で自由にパスを出させれば、あとは1対1の勝負にならざるを得ないのだ。

スペインの選手にはトラップを省略しダイレクトで正確にゴールを狙える技術があるのだ。

後半ロスタイムまでゴールを割られなかったのは幸運だったと言わざるを得ない。

 それに加え、DFの寄りももう一つである。

前半ラウルが見せたボレーも、たまたま川口の正面に行ったから良かったようなもので、

あれがコースに入っていたら。川口より反応だけは速い楢崎とてどうしようもなかっただろう。

もっと速く寄せ、少なくとも日本から見て左側にシュートは打たせない、

あわよくばシュートすら打てない体勢にする、それが理想である。

あの状態であれば、GKは左右両方のコースを想定しなければならない。

そういうケースだけは避けられるようにして欲しいものだ。

シュートコースさえ読めれば、止めることはさして難しいことではないのだ。

ラウルのループでさえ、川口は明らかに読んでいた。 少なくとも頭の片隅にあった。

だからこそ的確なステップとフィスティングで防ぐことができたのだ。

 勿論スペインという強国が相手なのだから、距離を詰める、 シュートコースを消す、

そんなことが容易にできるものではないとも思う。

下手に詰めれば抜かれてより広いスペースを献上することにしかならないのは自明である。

しかしながら、課題として挙げなければならない問題点だろう。

 

 というところでローマーユベントス戦の中田のゴールを観た。

一流選手には僅かなシュートコースがあれば十分だという証明でもある。

逆に言えば、守備側はあれだけのコースさえ与えてはならないのである。

理想論であることは勿論のことである。 ただし、攻撃面の理想よりも達成に近い理想でもある。

なんとかこの点を達成してもらいたいものである。

 

 閑話休題、スペイン戦の話に戻ろう。 次は攻撃面である。

ほとんど攻撃らしい攻撃はなかった、攻撃の体を成していなかったが、それが何故かについて。

簡単に言うと、スペースを利用できていないのだ。

スペースを利用できていたのは中田、波戸のわずか二人。 これではカウンターにもならない。

彼らだけでなく、もっとスペースに飛び込む選手がいても良い。

それは両サイドバックだけでなく、ボランチでも良かったと思う。

少々無謀でも良い、僅かなチャンスをものにしようという意志を見せることも、攻撃の一つなのだ。

それが相手の攻撃を緩めることにもなりうるのだ。そしてそれが守備にも繋がる。

僅かな攻撃の際、スペースはあってもそれを利用できてない以上、

後は中田ガンバレ高原ガンバレである。無茶を言ってはいけない。

中田がドリブルしている時、いや、中田がボールを持った瞬間にでも

全速力でスペースに駆け込む選手がもっと欲しい。 一人いるといないとでは全然違うのだ。

 そしてもう一点、個人名を論うようで申し訳ないが、高原の動きについて。

トップの高原は僅かなチャンスにおいて、真っ直ぐゴール方向に向かっていた。

中田と高原を挟んでDFが群がってくるだけである。

これではいかに中田とて有効なパスは出せない。

全速力で走りながら針に糸を通せと言っているようなものだ。

人が密集しているところへのパスは困難極まりない。

マラドーナでさえ、90年ワールドカップ・ブラジル戦で見せたようなスルーパスを

毎試合見せていたわけではないのだ。

 ではどのように動けば良かったのか。 簡単に言えば、左右に流れる動きである。

横に流れることでシュートコースを開ける事にもなり、また自分もスペースに走り込むことができる。

そして他のスペースを作ることにもなる。走り込んでくる他の選手がいればの話ではあるが。

ゴールに向かう気持ちは評価したいが、これではチャンスがおいそれと生まれる筈がない。

逆に誰かが中田のサイドのスペースに走り込んでいるのであれば、この動きは有効であったかもしれない。

その場その場の状況判断なので難しい問題ではあると思うが、もっと周りを見た上で 自分の動きを決めるべきだ。

カウンターを狙う以上、このポジションにいるものは周りを利用すると同時に

自分を利用させなければならないのだ。

 この試合を総合的に評価してみると、やろうとする事、こなそうとする事は十分に伝わってきた。

リアルに考えればカウンターを攻撃のメインに据えるのは当然と言わざるを得ない。

オリンピックのブラジル戦、先日のフランス戦を見れば自明なように、

ボールキープという点で劣らざるを得ないのだ。

ボールキープするためにスペースを作らざるを得ないのだ。

ただし現時点ではその戦術が機能しているとは口が裂けても言えない。

コンフェデレーションズカップまで、そしてワールドカップまで、

どこまでこれが機能するようになるのか、じっくりと見てみたい。

 

 しかしそんなあ悠長なことを言っている時間もない。      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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