’2001 コンフェデレーションズカップ
一次リーグ 日本ーカナダ戦
一言で言えば、結果には大満足、内容には大不満足。
そう言わざるを得ない試合だった。
確かに挙げた3得点はどれも素晴らしいものだった。
小野のFKなど、あの壁の位置、GKのポジショニングで あの位置に蹴られたら
如何なるGKでも止めることは不可能だろう。 ボールが壁の頭を越えた瞬間に入ると判るシュートである。
2点目、3点目も展開からして素晴らしいものだった。
正に取るべくして取った点、という事に相違ない。
トゥルシエの選手交代、選手起用にも異論はない。
DFの上村を下げてFWの中山を出して、戸田をDFラインに下げるという
思い切った選手交代は説得力、そして何より結果という面からも見事としか言い様がない。
この交代はまた、右サイドにボランチタイプ〜この日は伊東〜の選手を
配置してきた理由を理解させるのに十分だったのではないか。
つまり、右サイドにボランチタイプの選手がいれば、DFを減らしたところで
その選手が下がり気味になれば良い、元々のポジションに戻れば良い、
という意味合いでのフォーメーションであったのではないだろうか。
もちろん、これはわし自身の私見である事は付け加えておくが。
小野が左サイド、という事に異論は多々ある様だが、 わしはこれはこれであり、と思っている。
中村より良いのではないかと思う。
ヒデとのコンビネーションは十分合格ラインであったと思う。
パス交換でリズムを作り出していたし、ポジションチェンジもスムーズ。
更に、中村には無い怖さが小野にはある。
中村ももちろん素晴らしい選手だが、GK経験者のわしに言わせれば
彼のような選手に怖さはあまりない。
「シュートを打ってくる」「ドリブルで中に切れ込んでくる」 という恐怖感を与えないのだ。
彼のパスセンス、正確性は脅威だが、恐怖ではない。
ところが小野には「何をするか判らない」という恐怖がある。
もちろんこれはヒデにもある恐怖である。
ダイレクトではたくのか、ドリブルで切れ込むのか、シュートを狙ってくるのか、 正直全く読めない。
彼なりの視野の広さとセンスなのだろうが、外から観ていても何をするか判らない。
味方ですら、そうなのではないだろうか。 何度かパスが合わない事があった。
このような時、森島のような選手は貴重である。
ギリギリの処に走り込む事を厭わない選手だからだ。
またそれでボールに触る事の出来るスピードがある。 中山も然りである。
そう考えてみれば、今回の攻撃布陣は十分に頷けるものだった。
DFに関しては、まずは無失点であるし、川口の集中力と読みはさすが。
幾多のシュートを全て止めてみせた。 森岡や中田も集中力を切らさずに守っていたし、
この二人の コンビネーションは十分に確立されている。
中田が抜かれた際、森岡がフォローしてFWにチェック、
そして中田は中央にポジションチェンジという動きを見せたが、
この時の動きは相当スムーズで、自然だった。
他にも良い処はかなりあったと思うのだが、どうしても悪い方に目が行く試合運びだったと思う。
まず、攻撃に関して。
スロバキア戦同様、開始当初はロングボールを多用し、
DFラインを下げ気味にしたまでは良い。
そしてセンターサークルより前方にスペースはできていた。
ここから先、である。
このスペースでもう少し安全にボールを動かすことはできないものか。
このスペースでボールを持った選手は、あまりにも前方へのパスを急ぎすぎである。
ヒデや森島が下がった時にはあの辺りで繋ぐ意図がはっきりと見てとれたのだが、
彼らが前方にいる時が問題である。 いきなり前方へ繋ごうというパスが目立ちすぎるのである。
前方へのパスが確実に通ればまだいい。
通らなければ、どうなるか。
カウンターである。食らった攻撃のほとんどは、
中盤でパスカットされた結果のカウンターではなかったか。
森島とヒデが交互にポジションを下げ気味にし、
バランスを取ろうとしていたからまだましだったようなもので、
もしこの二人ともがもっと前のめりになっていれば、更にピンチは増えていたように思う。
もう一つ、西澤を利用するプレイが中途半端である。
彼のポジショニングが悪かった事も否めないが、ポストとするのか 裏に走らせるのか、
スペースを作らせるのか、全てに於いて中途半端、不明確である。
もっとも試合に当分出ていなかった事もあり、これで西澤を責めるのは酷というものだろう。
西澤自身、調子が良いとは言えず、周りがその局面での西澤の仕事をもっと明確にしないのであれば、
結果として全員が中途半端な攻撃をする事になってしまう。
三人の意思統一が成されただけで、西澤のファインゴールが生まれたのだ。
そこに小野もヒデも、伊東も稲本も、もっと多くの人間が絡むようにしなければならないと思う。
守備に関して特に目に付いたのは、ゴールより20m以上離れた位置で無理をし過ぎる事である。
いきなりシュートを打たれるのでなければ、ゴールから離れた位置で飛び込む事に意味はあまりない。
それで相手が怖がってくれればまだ良いが、抜かれてしまえばもうその選手は好きなことが出来るのだ。
このコンフェデレーションズ・カップもワールドカップへの練習だとすれば理解は出来るが、
まともに考えれば無謀である。
前方では遅らせる事、パスコースを限定する事、この二点をもっと意識すべきだと思う。
前方で無理をした結果、楽にゴール前までボールを運ばれた場面が何度かあった。
決定的ではなかったかも知れないが、強国相手ではこのような守り方は絶対に通用しない事は間違いない。
また、最終ラインの不揃いというか、ラインを揃えるのかどうか迷っているような場面が目についた。
ボランチやサイドが引いて来てDFを四枚にしようという動きは何度も観られたが、
その際、DFラインがギザギザになってしまう事が多かったように思う。
その間に相手FWがいて、である。
カナダ相手だから怖くはないが、僅かなスペースでもボールをキープできる選手がいるチームであれば、
ズタズタにされているだろう事は想像に難くない。
揃えるべきものは揃える、崩すものは崩す。 もっと徹底すべきだ。
今回はやや厳しめに書いたが、正直に言って実力通りの結果とは言えない事に不満がある。
実力通りであれば、点差は変わらないにしろ、もっと楽に点を取れていたであろうと思うし、
シュートを一本も打たせないことすらできたのではないか、そう思うのだ。
はっきり言えば、カナダを舐めていた部分は否定できないのではないか。
これでもパスが繋がるだろう、ボールが奪えるだろう、そんな状況が一切無かったと言えるのかどうか。
舐めても良い。カナダは舐めても良いレベルの相手だ。
舐めたなら舐めたなりに楽な試合展開を考えるべきだ。
舐めた結果しんどい試合をして、後はどうするつもりなのか、ということだ。
まして強行日程なのであり、残る二試合はカメルーンにブラジルである。
はっきり言って一段も二段も格上である。 余力を残す戦い方もできるのに、
なぜ故意とも言えるほどしんどい戦い方をしたのか。
これら問題が残る二試合、トーナメント、
更にはワールドカップ本戦で解決されることを望んで止まない。