’2000 オリンピック 一次リーグ
日本-ブラジル戦
開始早々からブラジルは全員が強いプレッシャー をかけてくる。
前回ワールドカップ準決勝ブラジル−オランダ戦を 思い出さずにはいられない。
何度も繰り返すが、 あのような強いプレッシャーをかけ、ボールを奪い、
次の速攻を仕掛ける いわゆるプレスディフェンス、トータル・フットボールは
選手個人個人の技術が高くなくてはできない。 だからこれまでにそれを成し得たチームは片手にさえ足りない。
このスタイルをもしブラジルが確立してしまえば、 ワールドカップすら余裕で優勝できるだろう。
日本の選手は恐怖すら感じたことだろう。 日本人選手も決して下手ではない。
しかし、個人個人の技術ではブラジルのそれは 遙かに高位にある。
中村、三浦すらも明らかに足が縮こまっていた。
そして6分。 日本がてんでフットボールにならないまま、失点。
もしブラジルがあのプレスを前半45分間続ける 事ができたなら。
前半終了時には3点入っていても おかしくない。それほどの破壊力だった。
しかし。そこまでの体力がある筈のないブラジルは、 先のオランダ戦同様、
プレッシャーを緩め、 カウンターに徹してきた。 先に成し得たチームは少ないと書いたが、
あのようなプレス・ディフェンスは技術の前に 体力を更に必要とする。
元より中三日しかないハードなスケジュールで オリンピックのフットボールは行われる。
要するに一点取って後は体力温存、逃げ切りを 狙ったものだったのだろう。
前半25分を過ぎ、日本もいい形を作れる様に なってきた。
オランダ戦を何度も例に出すが、 あの時も同じ様な展開からオランダは 後半に追いついている。
クライフェルトのヘディングにより。 可能性は、十分あるものと考えていた。
しかし、オランダと日本ではやはり攻撃力が違う。 決定的とかろうじて言えるチャンスは一度だけ。
中村のFKは惜しかったが・・・・。 ブラジルを崩すにはサイドからのクロス。
これはもはや鉄則とも言える。 それが、上がらない。 守りに入りサイドにスペースが空かない。
サイドの二人はダメもとでドリブル突破を 仕掛けてもらいたかった。
そして、明らかに疲労の色を見せ始めた両チーム。 お互いにルーズなプレーが目立ち始める。
タイムアップ前、スロバキア勝利の一報が入る。
日本とブラジルが演じた死闘は、これにより 体力の無駄遣いと化した。
オリンピックのみに視点を置くならば。 しかし、日本のフットボールに対しては。
得る物の大きな試合ではなかったか。 守りに徹する事無くとも、ブラジルと闘える。
これがA代表になったとき、どこまで行けるものか。トゥルシエの手腕、選手の成長に期待したい。