2002年 ワールドカップ 一次リーグ
イングランドースウェーデン戦
16:30、埼玉スタジアムに到着。
駅からはかなりの距離。
帰りは混み合うことを予想すれば、
1時間以上はかかるかと思いつつ、ゲートに向かう。
会場に入り席へ。
ちょっと前過ぎるというのは贅沢なのだろうか。
わしは全体を観たいのでもう少し後ろでもいいかと思いながら茶をすする。
17時前頃、イングランドの選手がピッチ上に出てくる。
予想通りベッカムへの声援が凄い。
10分ぐらいでイングランドの選手は引っ込み、
代わりにスウェーデンの選手達が揃いのスーツで現れる。
スウェーデン側のスタンドから声援が飛ぶ。
イングランドのサポーターはサイドスタンドを埋め尽くしている。
スウェーデン側は、その1/3ぐらいか。
わしはビールを煽りながら、何を観るともなく。
ウォーミングアップが始まる。
イングランドはGK以外、コーチの指揮のもと輪になって躰を暖める。
スウェーデンは暖めるのは自分の仕事。
シュート練習はまとまっていた。
わしはこういう時、GKの練習ばかり観てしまうのだが、
スウェーデンの方が基本通りといった感じ。
入念に、正面のボールを受ける。
引き上げながらサポーターに手を振る幾人かの選手達。
試合開始が近づき、会場の緊張感も増して行く。
もちろん、わし自身も。
選手入場。
国歌斉唱。
ワールドカップを観戦できるという感慨に耽る。
18:30。 キック・オフ。
序盤、イングランドがボールを支配する。
両チームとも、やや抑え気味なのか重いのか、
目立ってプレッシングはない。
注目のベッカムは、心持ち左足が重そう。
経験上、足の骨折後、元通りに走れるまで時間がかかるのは明白なこと。
フルタイム走り切れそうにはない。
イングランドはFWのバッセル、オーウェンに当てるか、
サイド(特にベッカム)に振ってクロスを狙うパターン。
しかしバッセルがヘディングで競り勝っても
その後のこぼれ球は全てスウェーデンに拾われる。
オーウェンは競り負けるか、背後にターンして突破を狙うも阻まれるか。
時間の経過とともに、この二人の機能は確実に止められていく。
スウェーデンは弱小国では決してない。
むしろ強国の一つである事を物語る。
結局、この試合を通じて。
イングランドの二人のFWは、ほぼ機能していなかった。
序盤こそ、ゴール前にボールを運ぶこともできたが、
途中から悉くスウェーデンに跳ね返されていた。
それでも、ベッカムがコーナーキックから上げたボールは
ニアサイドを迂回し、鋭く落ち、DFキャンベルのヘディングにヒットする。
ゴール。
喜びに沸く選手、そしてサポーター。
ワンチャンスをモノにする力。
これこそが、強国の所以である。
しかしながら、これ以外にイングランドに
チャンスらしいチャンスは無かったように思う。
「これは入る」、そんな感覚は憶えなかった。
試合はここから膠着状態に入る。
両チームともロングボールは蹴り込むが、
双方とも高い壁のようなDFを揃え、全ては跳ね返される。
グラウンダーのパスはボランチで止められる。
ここで両チームに相違があった。
イングランドは二人のボランチ:ハーグリーヴズ、スコールズの
二人の能力で守っていた印象が強い。
この二人は常に適切なポジションに立ち、容易にパスは通さない。
逆にスウェーデンは、MFの四人が四人ともDFとのポジションにも
留意しながら、組織で守っていたように思う。
先に結論を言ってしまうが、これがスウェーデンの 同点シュートを生み、
勝ち点1を生んだものと思う。
詳細は先に送るが(笑)
1-0で前半を折り返し、後半。
守備体系に両チームとも変化を加える。
イングランドは全体的に下がり目。
ベッカムですら、ボランチのラインに並んでいた。
もちろん彼には足の故障があり、無理はしない、
という大前提があった為とも考えられるが。
対してスウェーデンは中盤でのプレスを強める。
長期戦のワールドカップであり尚且つ初戦である以上、
無理をしない戦い方、だったのだろう。
これで、バランスが崩れた。
完全に攻守逆転したのだ。
スウェーデンは高い位置でボールを奪っては、
速いパスでゴール前に運ぶ。
対してイングランドはクリアにならない、
ただ遠くへ蹴るだけのロングボールを繰り返す。
押し込まれ、混乱という言葉さえ当てはまりそうなイングランドのDF。
組織の秩序は、破れた網のようにでさえある。
組織で守れなくなっているのが明らかである。
その中で、痛恨のミスが生じる。
不用意なバックパス。
慌てたクリア。
その先には、待ち構えていたアレクサンデション。
フリーで尚且つ、パスコースを消す絶妙のポジショニングだった。
わずか数歩でトップスピードに乗る。
DFとGKが重なり、左が空いた瞬間。
強烈なシュートをゴールに叩き込む。
イングランドのGKシーマンはタイミングが測れず、
僅かにボールに触れるのが精一杯。
タイミングさえ測れていたなら、
DFが振られずワンサイドカットをかけてさえいれば。
鼻歌交じりにでもキャッチできるシュート。
それが、見事にイングランドゴールに突き刺さる。
一度失ったペースは手元には戻らない。
いや、得たペースを手放さないと言った方が正確だろうか。
イングランドは襲い来るカウンターに怯えたまま、
チャンスらしいチャンスを得ることもなく、
スウェーデンは組織を保ち、ピンチらしいピンチはない。
それどころか易々とボールを奪い、ゲームを支配する。
しかも、無理はしない。
無理をしなければならない必然性はない。
あくまでも、初戦である。
タイムアップ。
結果は、引き分けであった。
しかし、双方の目論見からすれば。
一次リーグ三試合をトータルで考えれば。
スウェーデンの場合は勝ちに近い引き分けであり、
イングランドの場合は負けに近い引き分けではなかったか。
一次リーグの結果がどうなるかはまだまだ判らない。
言うまでもなく興味深いのだが、
やはり死のグループと呼ばれる強国揃いだけに、
これからの展開に興味は尽きない。