甲斐よしひろ

Golden Thunder Review

at 新高輪プリンスホテル ”飛天”

1999.11.13

 まずは新高輪プリンスホテルにチェックイン。

10F。綺麗で広い部屋。 考えてみれば自分の金でこんな所に泊まったことなどない。

家族旅行以来かな、ビジネスホテル以外のホテルは。 (はいどうぞ<突っ込み(爆))

 わしはいつもの制服に着替える。嫁(予)(当時)はブーツを脱いでくつろいでいる。

窓を開けるとなにやら聞こえてくる。リハ。 聴きたいけど聴きたくない。暑いのを我慢して窓を閉める。

 部屋を出て、会場前へ。携帯を確認。信太郎氏からの留守電。 部屋に向かう。慌てながら出てくる。

優しそうな笑顔が印象的だった。 何言か言葉を交わし、わしらは先に会場へ。

ちょっと先の話になるが。この時の信太郎部屋訪問により 自分の部屋が判らなくなった人が約一名。

(ライヴ後わしらの部屋のカードキー持って30×8に入ろうとした・・・・・(爆))

 並んでいる内に、数人の知人達が顔を見せる。もんじゃ焼きを食べに行った 人達も。

「もう一周するらしいけえあっちに行ったらええで」 しげに向かって言葉をかける。

 開場。まずはロビー内のみの開場だという。 こういう会場じゃあ、段取り組むのも確かに大変よなあ・・・・・・。

と思いながらグッズを購入、更にその左にあるPCスペースへ。 「管理人さんは・・・?」と尋ねる。

本当に、良い方でした。不躾なえごはこの場を借りてお礼を申し述べます。

「やる事がね、いっぱいあるんです」そういいながら苦笑いを浮かべたその表情には 本当に好感が持てました。

写真を眺め、水割りを口にしながら煙草をふかしている内に開場の知らせ。

 並んで入場。広い・・・・・これがまず第一の感想。 檻のような(笑)ブロックに入っていく。

ステージの真上当たりにもシャンデリア。 「あれ、絶対照明に使って欲しいよなあ」嫁(予)に向かって呟く。

 しかしなかなか始まらない。予想通りに(笑)。 これだけ押したのは つかしん Tent In のA.G.Live以来かなあ。

その”間”も楽しめる余裕があったんじゃけどね、この辺までは(爆)。

 照明が落ち、なにやら不気味(?)な音楽が流れる。 「時計仕掛けのオレンジ」じゃそうな。

(アフターにてつま女史が教えてくれた)

 開宴! ここからは記憶を辿りながら順に書きましょう。

 

1.電光石火BABY

 いきなり来ましたか。またろうは本当に楽しそうに演奏する。

ジョージのフレーズもいい。アレンジは前回ZEPPとほぼ同じかな。

ただ、前奏はちょっと変わっていた。

2.ポップコーンをほおばって

 え?もうバンド?と一瞬耳と眼を疑った。

「甲斐よしひろ」でのポップコーン。クエスチョンマークは一瞬にして かき消される。

残るのはこの躰を、喉を揺らす衝動。 もう汗が噴き出していた。 やっぱり、ストロボが良い。

3.レディ・イヴ

 ジョージのギターが唄う。そしてあのリズム。

躰が踊りだしてしまう。 シャツを着ていられなくなった。 そして制服(笑)。

4.ダニーボーイに耳をふさいで〜渇いた街

 二重の驚き。躰を掻きむしるようなフレーズでまずは鳥肌。

スローダウンする直前、いきなり「渇いた街」に移った瞬間で二回目。

不思議なくらい違和感がない。20年近く離れて作られたこの2曲が、

全く違和感なくメドレーとしてはまり込んでいた。

5.シーズン

 昨年と同じアレンジ。 個人的にはオリジナルより微妙に影を感じさせるようなこのアレンジはいい。

でもこの展開はいかん。なぜなら・・・・・下記参照(笑)

6.ナイト・ウェイヴ

 なんでかな〜未だに解らんわ、ジョージのギターでなんでか知らんけど 涙が溢れてくるのは。

しかもこの前がシーズンで、なんとなくおセンチに なったらこれじゃもんなあ・・・・・。

汗は引いた。でも涙が出てくる。ま、いいや。 汗と区別つかんじゃろ。そう思いながら流れるに任せた。

7.ブルーレター

 更に来るか(笑)、全くもう・・・・。 もう切なさ三所責め(爆)。

も、好きにして。そう思ったらまだまだ甲斐さんの好き放題は続いた。

8.ダイナマイトが150t

 紹介の後、蘭丸登場! 夜ヒットで見て以来、いつか観たいと思っていたギタリスト。

チラシを配ったことはあってもその演奏を生では観たことのないアーティスト。

ぶっ飛んだ。とにかく、ぶっ飛んだ。 凄すぎる。二甲斐目の鳥肌。

9.レイン

 来た来た来たっっっっ。続いて三甲斐目の鳥肌。 やっぱりレインは蘭丸のギター入りがいい。

いや、わしはね(笑)。

どう言ったら伝わるか解らないけど、あの音のギターがある方が わしにとっては切ない。

泣けた。 シャンデリアを利用した照明はここで来た。

10.ミッドナイト・プラスワン〜I.L.Y.V.M.〜レイニー・ドライヴ

 レイン終了後メンバーが全員下がる。ステージには椅子が五つ。

とうとうやってくれた。GUY BAND。 松藤さんの登場のしかたも最高。

わしが以前オープニングでやって欲しいって言ってたのは正にあれ(笑)。

ついでに言えば、行きの新幹線の中で一曲目は何?と問う嫁(予)に、

「I.L.Y.V.M.やって欲しい。松藤のコーラス入りで」と応えていたわし。

一曲目でなくても嬉しいものは嬉しい。とにかく嬉しかった。

慣れ、ももちろんあると思う。 でも、やっぱりこの二人のハーモニーは一番しっくりくる。

そしてまたも。涙。 この三曲列べるのは、卑怯(笑)。

11.安奈

 バンドで’99演ると思ってたので、ちょっと驚いた。

ロシア系の(笑)前野氏のアコーディオンがいい。

なんでこんなにマルチプレイヤー揃えるかなあ(笑)。

12.ビューティフル・エネルギー

 メンバーを揃えて並ぶ二人。 甲斐さんが唄うとやっぱり。

やらしい(爆)。

それはともかく、二人ばっかり目立つけど、この曲での ジョージの演奏は本当にいい。

ずっと流れてくるもんね。 ずっと、ね。 (どこでや(笑))

残念なのはjokerが見れなかった事(爆)。

13.幻惑されて

 一郎登場!これも凄かった。一郎にはまりすぎ。 一郎が演りたいって言う意味もよく解る。

やっぱり衝動的に躰が動く。 鳥肌のせいで汗は控えめじゃった。

14.きんぽうげ

 リズム。そう、あのリズム。いつもより長かったような気もする。

そう。満を持しての登場。姿が見えた瞬間、わしは吼えていた。

(周りの人御免なさい)

大森信和登場!!

以前のように一つ一つのフレーズを大事に弾く大森さんが観れた。

甲斐さんのテンションも一際高くなる。 あ、いけん、書きながら躰熱うなってきたわ(笑)。

もうこの頃にはお腹一杯の気分。 死んでもよかったよね、つまさん(笑)。

15.裏切りの街角

 大森さんがセミアコをアコギに持ち換える。

聞き慣れたフレーズ。でも熱くならずにはいられないフレーズ。 何度も声を招く甲斐さんの手。

もうステージ以外、眼に入らない。

16.トレーラー・ハウスで

 MCに続いて。 いきなり泣けた。 ずっしりと腹に響いた。 詳しい歌詩までは聴き取れなかった。

でも、泣けた。

嫁(予)を抱き締めたくなった。 惚気て申し訳ないが、そういう気分になったのは事実。 許して。

17.LADY

 ステージは暗い照明。 それ以上は見えなかった。 ほんまこの展開、ずるいわ。

ちゃんと見せてよ。まったく。 というわけでこの曲に関してはわしはほとんどステージは見えてません。

霞むんじゃもん。

18.氷のくちびる

 こんなポジションでこの曲演ったの、いつ以来なんじゃろ。

特筆すべきは、二番に入る前の甲斐さんと大森さんのアクション。

ギター振りかぶるヤツね。

そりゃもちろんリズムに乗って。 長いキャリアがあって。 当然かも知れないけど。

振り上げる前から、全くの同時。シンクロ。 鳥肌が音を立てた。

ジョージのフレーズはBig Night virsion。

甲斐バンドの歴史と、現在。それを感じさせてくれた。

19.翼あるもの

 またろうのソロ。体温は上昇。 一瞬にして籠もった熱気が放出される。

そんな錯覚。 大森さんのギターも一郎のギターも、凄まじく迫ってくる。

20.漂泊者(アウトロー)

 ドラム(リズム)・バトル。またろうとカースケと松藤さんが闘う。 正に。バトル。

余裕と緊張感の狭間。 後で思ったが。これだけ叩けるのに、なんでBig Night では二曲だけじゃったんよ(笑)。

これにメッケンじゃもんなあ。すげえよな、このリズム隊。

 ヒートアップしたわしには後追いでしか書けません。はい(笑)。

21.100万$ナイト

 ミラーボールと大森さんの泣きギター。

甲斐さんのシャウト。

涙。

 

E1.冷血

 「これで冷血演ったらもお言うことないです」とアンコール前に 嫁(予)に向かい、わしは言った。

言うことはありません。

バンドのメンバーはいなかった。

E2. HERO

 バンド、蘭丸を呼ぶ。 ギター5人(!)での演奏。 ちくしょうみんなかっこよすぎるわっっっ!

E3.AGAINST THE WIND

 これ・・・痛かった。個人的に(笑)。

いや、社会的な意味でね。 いろんないざこざ。

頭ン中で踊りやがった。

でも、譲りたくない部分、大事じゃろ。 護りたいじゃろ。

そのためなら、負け犬になっても吼えるわい・・・・

あ、またレポート逸脱した(笑)。

 とにかく、泣いたよ。泣きましたよ。

EE1.風の中の火のように

 このアレンジ良いなあ。前回のZEPPのヤツね。

キーボードが入って、ッッジャンッっての。 ジョージのギターもいい。

本当、爽快な気分じゃった。

EE2.この夜にさよなら

 思い返してみれば。 ホテルの部屋に聞こえてきたのは。 この曲でした。

 今現在のわしの状況では。 この曲の。こんな痛みや寒さは。過去、でしかないんよね。

もちろん社会的にはいろいろあったりするけれども。

まがりなりにもそれなりの立場は得てきた訳でね。

 でもだからこそ、今の温もりが解るっていうのもあってね。

また抱き締めたくなった。自分も含めて。

 過去と現在。いろんな想いが交錯した。

 何度も言うけど、なんでここまで展開上手いかなあ。

ちくしょう、涙止まらんかったわい。

 ただ、「この世にさよなら」とは唄わなかった。筈。

 

 第九が流れる。そして多分、安奈’99。 飛天を後にする。煙草が目にしみた。

 クローク前でCRYに会う。明らかに気の抜けた表情。

鏡で見るわしの顔も多分あんな風だったに違いない。 なんとなくうつろなまま、部屋に帰る。

 わしらの部屋は、30×2じゃったんよ、嫁(予)よ(爆)。

 ベッドに寝転がる。ライヴ直後にベッド。

直後に食事のため外出したけど、本当に貴重な時間じゃった。

心底楽しんだ直後にプライベートな(に近い)空間でくつろぐ。

 時が止まったかのように感じる。

気のせいだろう。

本当の余裕ではないのかも知れない。

かりそめの余裕にしか過ぎず、幻想の贅沢にしか過ぎないのかも知れない。

でも、あの僅か数分のために、交通費を払い、ホテル込みのチケット代を払ったのだとしても。

それは全然惜しい物でないことだけは、確かだと思う。

 純粋な遊び、娯楽。そこで味わう心地よさ。 そこでしか得られない快感。

自慢に聞こえたら申し訳ないけど、そんなものを感じたライヴでした。

 でもこれだけでわしのレポートが終わるわけはないよ(笑)。

 

 

(ラインナップ)

1 電光石火BABY

2 ポップコーンをほおばって

3 レディ・イヴ

4 ダニーボーイに耳をふさいで〜渇いた街

5 シーズン

6 ナイト・ウェイヴ

7 ブルーレター

8 ダイナマイトが150t

9 レイン

10 ミッドナイト・プラスワン〜I.L.Y.V.M.〜レイニー・ドライヴ

11 安奈

12 ビューティフル・エネルギー

13 幻惑されて

14 きんぽうげ

15 裏切りの街角

16 トレーラーハウスで

17 LADY

18 氷のくちびる

19 翼あるもの

20 漂泊者(アウトロー)

21 100万ドルナイト

 

アンコール1

1 冷血

2 HERO

3 AGAINST THE WIND

 

アンコール2

1 風の中の火のように

2 この夜にさよなら

 

 今回の「Golden Thunder Review」のテーマはなんなのか。

それをここから探ってみよう。

 勝手ながら6セクションに分割し、色分けしてみた。

一目見ればどのような分類か、少なくとも行った人には大体解るであろう。

 

各セクションを追って考察を進めてみよう。

セクション1 〜誕生〜

 信太郎氏の指摘する通り、「電光石火BABY」「ポップコーンをほおばって」は

立場は違えど”甲斐よしひろ”のデビューに関係した曲と言っていいだろう。

いや、デビュー曲と言い切っても良いかもしれない。

更に、「レディ・イヴ」の主題が”転生”である事には異論ないだろう。

転生と言う言葉が適当でなければ自分の”殻を破る事”と言ってもいい。

しかし、”殻を破る事”はつまり”誕生”でもある。

 また、「電光石火BABY」はバンドを解散して自己のみを解き放とうとした、

つまり殻を破ろうとした甲斐よしひろの最初のムーブメントであり、

「ポップコーンをほおばって」はアマチュアからプロへの転生の契機となった曲である。

 すなわちこの三曲は全て誕生ないし転生に関わる唄である。 ここでは”誕生”としてまとめる事とする。

 なお、なぜ「ポップコーンをほおばって」が終盤のラッシュでなく

序盤のこの位置で演奏されたかについてはもう一つ理由があると考える。

それは後の項で述べよう。

セクション2 〜融合〜

 このセクションの五曲は「ダニーボーイに耳をふさいで〜渇いた街 」に 象徴されると言っていいだろう。

この転換に違和感を感じた人が。 ”飛天”の中に何人いたというのだろうか?

むしろすんなりと入って来過ぎた事に驚きととまどいを感じた人の方が多かったのではないか?

 そして。バンド後期の名曲とされる三曲を”ソロ”のメンバーで演奏する事、 すなわちバンド後期と現在の融合。

 この五曲に誰が違和感を覚えたろう?

バンドの曲とソロの曲を混ぜて・・・・・

バンドの曲をソロで演奏して・・・・・・等と。

 確かに。 N.Y.三部作の頃は甲斐バンドに占める甲斐よしひろの比重はより重くなっていた。

極限状態と言ってもいいかも知れない。

だからこそ、「シーズン」以下三曲に違和感を感じる可能性も少ないのかも知れない。

 しかしそれを逆説的に言えば、より融合させ易いからこそ、 ここでこの三曲を用いたのではないだろうか。

しかも御丁寧にこの三曲は全て”海”をモチーフにした曲でもある。

融合の象徴とされることの多い海をモチーフとした曲をを揃えている。

違和感を更に感じさせないための一工夫。ではないのだろうか。

 意図的に”融合”を謀ったのだ。

そしてそれが成功したからこそ、少なくともわしは全く違和感を感じなかった。

セクション3 〜結合〜

 ここからの八曲はソロ以降のユニットを網羅している。

田中一郎、蘭丸、松藤英男、鎌田ジョージ・・・・・・。

第一次ソロのA.G.やFunkがないという声も聞こえてきそうだが、

A.G.の延長線上にはGuy Bandがあり、

Funkの延長線上には田中”Funky Vibrator”一郎と甲斐さんの線入りパンツがある(爆)。

この辺りの真偽のほどは定かではないが(笑)、

少なくとも他のアーティストとの 鬩ぎ合いを魅せてきた甲斐よしひろのスタイルが

この八曲に凝縮されているというのは 間違いないだろう。

 すなわち他のアーティストとの競演により、お互いの魅力を引き出すそのスタイルである。

ここにあるのは誰かが甲斐よしひろの引き立て役になるのではなく、

それぞれの特性を活かしたまま一体の、つまり不可分にさえ見えるステージを 創り上げるスタイルである。

 想像できるものならしてみて欲しい。

蘭丸以外の誰かが演奏した「ダイナマイトが150屯」や「レイン」。

松藤以外の誰かのハーモニーによる三曲のメドレーや「ビューティフル・エネルギー」。

一郎ではなくヤッチが演奏した「幻惑されて」。

あのユニットであればこそ成立したものである事がよく解るだろう。

 他アーティストとの”結合”によるステージ。それをここでは示している。

セクション4 〜集合〜

 先に余談を言おう。 このセクションは”集合”と書いたが、

要するに甲斐よしひろ、大森信和、松藤秀男、田中一郎の4人が揃ってからの八曲である。

その冒頭、つまり大森信和の出演は「きんぽうげ」だった。

前に戻って田中一郎が出ての「幻惑されて」。

更に前は松藤英男との「ビューティフル・エネルギー」。

この三曲には共通点がある。 その歌詩の内容。

もうお解りだろう。

SEX。

そう、SEXをモチーフにした曲である。

なんと、甲斐バンドのメンバーが出てくるに合わせ、SEXを唄った曲を連ねている。

SEXである。

この辺りは感心するというか呆れるというか・・・・・

メンバーそれぞれにSEXの唄を割り振るとは・・・・・

 さすが、甲斐よしひろである(爆)。

 これは後追いじゃないと気づかんよなあ・・・・・(大爆)

 気を取り直して、それはさておこう。

このセクションを”集合”と示したが、単に”甲斐バンドとしての集合体”という意味ではない。

”バンドとしての流れ”の事である。

以前、甲斐よしひろは言った。

『長岡がいる頃は、バンドとしての流れがあった』と。

ユニットとは違う。 ソロとも違う。 バンドとしての流れ、ムーブメントの中で創られた曲達。

よく見てもらいたい。この八曲の内訳を。

”バンドとしての流れ”があったとされる時期に作られた曲ばかりである事を。

「きんぽうげ」はその流れの最たるものである事を。

「ポップコーンをほおばって」がここにない事を。

 正確に言えば、「漂泊者」と「トレーラーハウスで」は時期的には違うのかも知れない。

しかし前者はバンドとしての流れの喪失を自覚しているかどうかの時期、

むしろ喪失を自覚するようになった曲とも考えられるし、

後者はバンドとしての流れを意識して作った唄であろうことは想像に難しくない。

これは甲斐よしひろの言からも明らかだろう。

要するにこの二曲はこのセクションを逸脱するものではない。

 このセクションは、甲斐よしひろが”個”のみならず

バンドという”集合に属するもの”としての活動を示しているのである。

 言うまでもなく、それは”個”の”集合”なのであり、 ”集団”に”個”が埋没したものではない。

それは前提に”結合”としての”ユニット”がある事でも解る。

言うなればユニットは刹那的なものであり、バンドは継続的または永続的なものである。

 昨今の甲斐よしひろの言動を鑑みれば、 ”甲斐バンド”を”永続的”なものにしたいという意志は、

これには賛成反対多種多様な意見があろうが、まず間違いなくある。

ソロとしての何者からも制約を受けない立場でのムーブメントもあれば、

バンドとしての制約は受けるがそこでしかできないムーブメントもある。

 その全てを行うのが、甲斐よしひろなのである。

セクション5 〜衝動〜

 この三曲は、その歌詩内容を考えてみれば解り易い。

一言で言い切ろう。

甲斐よしひろの衝動なのだ。

「冷血」で暗部、いや、狂気とも言える自分の衝動を唄い。

「HERO」でなにがあろうと前進したい衝動を唄い。

「 AGAINST THE WIND 」で社会的にはどうであろうと positiveな自分を押し出していく衝動を唄い。

己の姿勢を、人間性を、衝動を。全面に打ち出した曲を連ねているのである。

陰陽取り混ぜ悲喜こもごも、人間の感情は複雑と言うに余りある。

それらを全て衝動という一言で打開せんとする唄の集合したセクションである。

この三曲に理由は要らないのだ。 ”だから〜どうする”的なことは一切唄っていない。

衝動が”在る”のだ。 それが”甲斐よしひろ”という人間、アーティストなのである。

セクション6 〜恒久〜

 この副題には、『え?』と思う人も多いかも知れない。

「風の中の火のように」だけならまず異論はないと思うが。

しかし。「この夜にさよなら」では疑問に思うのは当然だろう。

ただし。「この夜のさよなら」とは唄っても、オリジナルのように 「この世にさよなら」とは唄ってないのである。

 ここにわしは少なくとも二つの意味を見る。

一つは文字通りの”この飛天(での祭り)”への”さよなら”。

そしてもう一つには。 これこそがこの「Golden Thunder Review」のテーマだ。

詳細は以下の結論に譲ろう。

結論

 この「Golden Thunder Review」は順を追って

1.誕生 2.融合 3.結合 4.集合 5.衝動 6.恒久

という流れで構成されている。

 これらは甲斐よしひろのこれまでの活動の全てを端的に 表現したものであると考えられる。

すなわち、総括と言い換えることができるだろう。

その”総括”の最後が「この夜にさよなら」である。

これはなにを意味するのか。

とりまとめてこれにさよならする、とでも言いたいのだろうか。

 このレポートの前にわしは、昨年末、および”Up”tourでのテーマは

”原点回帰””原点からの脱却”であると書いた。

併せれば、原点から出て、原点に帰る、である。 要するに、一回転、一周である。

 これを踏まえて考えてみれば。

”さよなら”とは、ステップアップのことではないのだろうか。

一周廻ってステップアップ。

 お気づきだろうか。 これが”Thunder”と合致することを。

 稲妻を構成する電子の運動は。螺旋状、なのである。

 俯瞰してみれば同じ場所を回転するように見えても。 横から見ればそれは確実に歩を進めているのだ。

らせん階段を横から見れば、それは稲妻型と言えなくはない。

 そう。このライヴのテーマは。

「らせん階段」なのだ。

そして、このライヴを機に。

新たなるステップを踏み出すという甲斐よしひろの宣言でもあるのだ。

その螺旋状の活動を続けて行くという、宣言なのだ。

”螺旋状の紆余曲折をしながらも、甲斐よしひろは進み続ける”のだ。

 他の面から補足しよう。 ”飛天”に行った人に聞く。

入った当初、どのような照明がそこにあったかを。

その照明でどの曲を連想したかを。

おそらく、8割以上の人は同じ曲を想像しただろう。

「これは、×××’××を演るな」と。

その実。その曲が演奏されたか否か。

されていない筈だ。 虹色のライトがバックから照らすその曲は。

同じ所を回り続ける物をタイトルとしたその曲は。

 以上を持って、”飛天”のテーマを決めつけよう。

”らせん階段”なのだ、と。

甲斐よしひろは新たなるステップを踏み出すのだ、と。    

 

KAI Lives