戦後の広島にて起こった所謂「仁義なき戦い」の序説と言えば
大まかになりすぎるだろうか。
伝説とすら言われる二人のヤクザのドキュメントである。
筆者の想像の過膨張が多少鼻につくきらいはあり、
また文中の広島(呉)弁に明らかな間違いはあるものの(^^;、
実在した人物の生き様死に様の苛烈さはそれらを覆い隠して余りある。
生きるために誰もが必死だったであろう当時、
無法者として生きざるを得なかった彼らが
法を犯し、殺人を犯しながらも何かを守ろうとしていたというのは
穿ち過ぎ、美化し過ぎた考え方だろうか。
事実だとすれば、という枕は敢えて付けるが、
彼らが近しい人々との間に形成した人間関係は
少なくとも醜いものではなく、清々しく美しくさえある。
僅か27歳という若さで射殺(自殺という説もある)された
大西政寛のあどけない顔とその行動や生き方のギャップの烈しさこそ、
戦後の広島という土地、そしてその土地での生活の
烈しさを物語るものなのかもしれない。
広島ヤクザ伝
「悪魔のキューピー」大西政寛と「殺人鬼」山上光治の生涯