ユーロ2008
1.クロアチアを正しく評価する 2.準々決勝 ドイツ-ポルトガル戦 3.準々決勝 クロアチア-トルコ戦
4.準々決勝 ロシア-オランダ戦 5.準々決勝 イタリア-スペイン戦 6.準決勝 ドイツ-トルコ戦
7.準決勝 スペイン-ロシア戦 8.決勝 ドイツ-スペイン戦 9.総括
んでもってユーロ観てます。
ゆっくりじっくり観れないのでレポにまとめるのも難しいんでとりあえずはコラムな形で。
ワールドカップより一試合少ないとはいえ決勝まで全六試合の連戦になるわけですから、
体力的な戦略というものが必須になるのはお判りかと思います。
少なくともわしのレポを読んだことがある人には(笑)
怪説な人々には全然判らない事のようですが。
ま、それはともかく、六試合を最低限負けないよう走り続けるためには 体力的な抜き所が必要になる、これが大前提です。
具体的には一次リーグでは無理せず騒がず準決勝に向け体力的なピークを合わせていく、
というのが一般的なやり方になります。
今回のユーロで言えば、ドイツなどはこの典型的なやり方を遵守しています。
クロアチアに負けたとは言え、ちゃっかり勝ち点6での勝ち上がりでしかも体力は温存されている、と。
クロアチアに負けたせいで次はポルトガルとの潰し合いになるのも、 予定通りとは言いませんが想定内の話です。
しかし要するに一次リーグでは手を抜くわけですから、 比較的実力に劣るチームでも対処できる、ということになります。
「劣る」とはいえ実際さほどの差があるわけでもありませんから、 ともすれば強国が足を掬われる、ということになります。
で、これを実戦したのが先のクロアチア。
フットボールの内容的には従来、というか旧来のドイツ(爆)
フォアチェックとマンツーマンの徹底。 変にプレスをかけることはさすがにしませんが、
これが効果的なのは誰よりも知っているであろう、ドイツを相手に。
ドイツは自分達の性格の悪さが身に浸みたことでしょう。
やりにくいというか、相手にしたくないというか(^^;
イケズされてる内に失点して挽回できなかった、そんな内容でした。
ただこれに関しては、戦術云々以前にもっと大事なことがあると思います。
要するにね、クロアチアは頑張って走ったから勝った、ってことなんです。
余分に2kmは走れと試合前に監督であるビリッチが告げたと言われてますが、
クロアチアの選手達は皆、体力の温存など考える事もせず走り続けていました。
これからのトーナメントの結果によって、この戦略的な是非が分かれることにはなると思います。
消耗していてトーナメントでは戦いにならないかもしれない。
このまま走り続けて上位に進出するかもしれない。
そこで正しかったかどうか、評価されることにはなるでしょう。
でもわしは正しいと思います。
少なくとも「弱者」であると自覚したチームの戦い方としては。
また日本、特に徹底的な守備ができない日本でこそ、こんなやり方でないと戦えないと思います。
コンディショニングもやる気もへったくれもないアルゼンチンに引いて守ろうと考えた
どこかのダイヒョー監督メガネ君には絶対できないやり方ですが。
あ、またやっちゃった(笑)
オランダは元々こんなチームなんですが、やっぱり三連勝しちゃいました。
オランダはたぶん「弱者」のカテゴリーには入らないと思いますが(笑)
結果スペインとイタリアの潰し合いですか・・・・(^^;
まあそれはいいとして。
やっぱね、頑張ったチームが勝つっていうのは観ていて楽しいと思うんですよ。
ある意味正しい在り方じゃないですか。
プレイする方としてもね、頑張ったから勝てた、というのが一番いいじゃないですか。
楽しいだけの練習なんて無いんです。
しんどいけど、頑張って、勝った。
これは間違いなく素晴らしいことだと思いますよ。
無上の喜びと言ってもいいでしょう。
そういうのをこそ、解説者が教えないとダメですよ。
こんな根本も言えないで、しかも内容的にずれた事を言ってちゃダメですよね。
先ず大前提として、クロアチアは頑張ったから勝った、
具体的な戦術としてはこうこうこうして頑張ったんだ、 こういう話ができるのが解説者ですよね。
明日にはベスト8が出揃います。
果たしてどんなチームが勝ち上がっていくのか楽しみです。
上位では極力レポを上げる方向で(笑)
フリンクスの故障を受けロルフェスが出場。
不調のマリオ・ゴメスをさげポルディがFW。
右にシュバ、左にヒッツルスベルガー。
開始早々からドイツはフォアチェックの効きが良い。
明らかに走ることを前提とした事に加え、 バラックの攻守に渡る動きがいい。
コースの切り方が的確で正確。
クロアチアにやられた腹いせでもあるまいが、 ポルトガルはこれでいきなりやり難そう。
ただしポルトガルも攻撃のアイディアは十分に豊富。
中盤の攻防が不利と見るやフォアチェックの分上がったDFラインの裏を狙い クリスチアーノ・ロナウドが駆け上がる。
一人二人なら突破できる能力を持つ選手だけに裏に抜ければ得点の可能性は相当に高い。
どちらも攻撃に主眼を置いた戦いはあっという間に時を経過させる。
20分過ぎ、ドイツ左サイドでのダイレクトパスの交換。美しい。
抜け出すポドルスキー。
褒められたことではないが、手の使い方が巧い。
反則にならない程度にDFを突き放し自分はフリー。
そして走り込むシュバインシュタイガー。先制。
シュバは余程ポルトガル、またはそのGK、ヒカウドに相性がいいのか。
ワールドカップ三位決定戦でも2得点1アシストであるが、 またも彼のゴールである。
ドイツはこれでややペースを落とす。
落としたとは言っても前のめりなのではあるが、相対的に。
それにしてもドイツのパスが速い。
昔からパンパン繋ぐチームではあるが、楔になった選手が返したりサイドに振ったり振り向いたりと
あらゆる手段でパスを繋ごうとする。
そのスピードもワールドカップの時より一段上がっているのだ。
相手の攻撃は絞るその逆に自分達は多様性をキープしようとする。
モウチーニョがバラックと交錯。イヤな捻り方。
立ち上がりはしたが・・・・・
得点から約5分後、駆け上がるメツェルダーに思わずぺぺがファウル。
左サイドからのFKと来れば当然シュバ。
ポルトガル陣営からすればイヤな空気が充満していたことだろう。
ワールドカップからこの方の4点、全てシュバ絡みである。
しかも先の三位決定戦でもFKから入れられている。
メルテザッカーの動きがエアポケットを作る。
クローゼはフリー。完全に遅れたクリスチアーノ・ロナウド。
必死に書き出そうとするヒカウドの右手を掠めゴールに突き刺さる。
思えばこの試合の象徴的なシーンだった。
ドイツ2点のリード。
ドイツ相手に2点差はきつい。
経時的にボールタッチの回数が減るクリスチアーノ・ロナウド。
ドイツは専守防衛には入らない。
チャンスを窺い前線にボールを当てる。
ポルトガルのカウンター。
右サイドのスペース。
ラームは上がっている。
ポルディが中途半端なポジション。
取りにも行けずパスも防げず。
当然デコはどちらも選択可能。
パスを選択。
目の前に広がる広大なスペースに飛び出すシモン。
逆サイドのクリスチアーノ・ロナウドへ。
ゴール前に捻り込み、シュート。
レーマンが防ぐ。
しかし零れ球はヌーノ・ゴメスの眼前。
メツェルダーは懸命に足を伸ばすが角度を変えただけ。
ゴール。
2点差で気が緩んだか。
易々とスペースを突かれてしまったドイツ。
わしの願い通りの点の取り合いである(爆)
いやどちらかと言えばドイツ贔屓ではあるんじゃけどね。
あっという間の前半終了である。
好チーム同士だけに非常に楽しい試合である。
さて後はポルトガルが追いつけば更に楽しくなるのだが・・・(笑)
後半に入るとドイツは更にフォアチェックを緩めてDFラインを下げる。
前半ではペナルティエリア5m前方のラインがペナルティエリア上に。
裏を取られないように、と言うことだろう。
この点では完全に奏効。
後半裏を取られるシーンは皆無。
しかしここで問題発生。
DFを下げた割にはボランチのラインが高く、DFの前にスペースが空いた。
ここでデコをはじめとしたポルトガルMFが自由に動き始める。
このままではいくら4枚のDFを絞るドイツといえど危ない。
じわり、とポルトガルゴールの気配が漂い始めた15分過ぎ。
またしてもセットプレイ&シュバインシュタイガー絡みでドイツが3点目を挙げる。
厳格に言えばバラックの絶妙なプッシングである(笑)
あれを視界に入れて判断できるレフェリーもなかなかいないだろうが。
それにしても、ここまでくるとシュバはポルトガルにとって疫病神みたいな存在である。
結局ワールドカップ、ユーロの6得点全てに絡んでしまった。
DF前のスペースを活かそうとするポルトガルだが、もう一つドイツを崩せない。
ポルトガルはヌーノ・ゴメスをナニに、ペチをポスティガを交代するがドイツの交代の方が先に有効となった。
ヒッツルスベルガーからボロウスキーへの交代だ。
バラックは守備的MFにポジションを下げる。
同時にボランチの守備位置を修正。
前から当たるのをやめ、一度DFラインに入ってから押し上げる形に。
イヤなスペースが消えた。
ポルトガルはボランチの前まではボールキープできてもその先がない。
サイドに展開してのクロスは元々見込めない。
トップに当てるにもべったりマーク。
デコが裏に浮き球のパスを出したが元々下がっているDFとGKの間には わずかにしかスペースが無く、
当然レーマンは速攻飛び出す。
従って出し所無くミドルを虚空に舞上げるしかないポルトガル。
ミドルばかり狙ってもという声もあろうが、 他に手がないのが現状だったろう。
ポルトガルはじりじりと追い詰められていく。
40分を前にシュバをフリッツに交代。
直後に素晴らしいボールがフリッツに出る・・・が。
あまりに良いボールだったため変な色気を出したか(笑)、フリッツのプレイは中途半端。
それでもポルトガルは左サイドからの絶妙なクロスをポスティガが頭で合わせる。
しかし展開的には「詰め寄った」という雰囲気ではない。
ドイツは1点取られても、と少し緩んだ気配だった。
ロスタイムは4分。
妥当な時間だがもっと観ていたいわしには短すぎる。
jokerには長すぎたようだが(笑)
押し込めないポルトガル。
ドイツのカウンター。
不発。
笛が鳴った。
わしは長らく守備専門でプレイしているその反動か攻撃的なチーム、戦術が好きなのだが、
双方とも攻撃的で好きなチームである。
その両国が準々決勝という舞台で潰し合うのはなんとも惜しい。
スコラーリもここで勇退、チェルシーの監督に就任するという。
デコはやはりチェルシー移籍なのだろうか(笑)
総評として考えてみれば、ドイツの横綱相撲だった、とは思えない。
一次リーグ三試合よりも余裕はなかった。
ポルトガルの攻撃陣への対応に追われていた。
敗戦したクロアチア戦よりも、そうである。
守備ラインの細々な調整など、一次リーグではやっていないのだ。
ただ、常に先手を取った。
開始早々からフォアチェックを厳しくし、
裏を取られればDFラインを下げ、
DFラインの前にスペースができればボランチのラインを下げ。
逃げ場を無くし追い込むように、攻撃の芽を一つ一つ丹念に取り除こうとしていた。
そして出来上がったのがクリスチアーノ・ロナウドの「消去」である。
後半からクリスチアーノ・ロナウドの名前は実況でも呼ばれなくなった。
画面にもほとんど映らない。
ボールタッチも何度あったことか。
決定機は皆無である。
一瞬交代したっけと思い返すほど、その存在は掻き消されていた。
ポルトガルはドイツ守備陣に見てとれる穴を突こうとはしていたが、
やや馬鹿正直に過ぎたように思う。
先手を取るためにはもう一つ二つ捻りを入れた攻撃をするべきではなかったか。
ドイツとて自分達にある穴は知っていただろう。
そこを突かれるなら手を打とう、そんな感じで綽々とDFを調整した。
対してポルトガルは総じて後手後手に回った。
フォアチェックにペースを握れない内に先制されてしまい、
チャンスを作れると思ったらチャンスメイクは悉く摘まれてしまった。
最初から自分達のペースを作る事ができていれば、また展開は変わっていただろう。
ただしそれを巧者・ドイツ相手にやれ、というのも難しいだろう。
微妙な差、ではあるが。
この辺がWC優勝国と非優勝国の差、なのかもしれない。
さてこれでドイツはトルコ-クロアチアの勝者との準決勝である。
願わくば決勝がドイツ-スペインになりますようにm(_ _)m
一次リーグらしからぬ激しいフットボールでドイツを下しそのままトップ通過したクロアチアと
逆にギリギリの戦いを強いられつつ神懸かり的な時間帯での得点で勝ち上がってきたトルコの試合である。
ここまで頑張ったクロアチアにも花を持たせたいし、
スポットクーラーを取り合った留学生(現在教授)の母国であるトルコにも愛着があるわしとしては、
非常に無責任ながらどっちも勝てな立場なわしである。
奇しくも’98年のWCではクロアチア、’02年にはトルコが
日本を下した上で三位を勝ち取ったという共通項があるチームである。
ただし日本が同じ系譜に連なるチームだったかという問題はさておくことになるが(笑)
別に手を抜くつもりではないが、この試合に関しては経時的、また誰それがどうした的な記述は避けることにする。
ただ単にトルコがツイているというだけ、そんな内容は避けたい。
トルコがPKでクロアチアを下した、そこに運だけではない何かがあった、わしはそう思うのだ。
いや、トルコが運で勝ち上がった部分は少なからずある。
決定機は明らかにクロアチアの方が多かった。
トルコのチャンスなど得点を含めて数えるほどしかない。
逆にクロアチアは逃したチャンスの山である。
トルコに運があった、のは間違いない。
しかしそれで済ませてはいけない。
それで済ませるのは怪説とマスゴミに任せておけばいい。
済ませてはならない何か、今回はそれについて書きたい。
第一に、トルコは常にDFラインを高く保ち中盤での鬩ぎ合いに主眼を置いていた点。
少なくともわしが見た限り、あのラインの高さは本大会随一である。
「ただ単にそういう戦術だったんじゃない?」と言わないで欲しい。
相手は「徹底したフォアチェックでドイツを下した」クロアチア、なのである。
もちろん攻撃陣の破壊力も十分である。
しかも以前からカウンター=裏に抜ける技には定評のあるクロアチア、なのだ。
いくらフルスペックのドイツで無いとは言え、中盤での鬩ぎ合いに勝利し
更には元来カウンターの巧いクロアチアに対して真っ向から立ち向かったのである。
これで負けていれば暴挙であり愚挙である。
しかしトルコは徹頭徹尾ラインを保ち続けた。裏をとられても尚。
この勇気と自信は賞賛に値する。
更に、同点となったのはオフサイドからのFKが起点である。
ラインを高く保ち続けた事が高い位置でのオフサイドを生み、それが得点を生んだのである。
次いで、トルコのペース配分である。
体力的な自信か、クロアチアが保たないと踏んだのか。
DFラインは高く保っていたが、攻撃時に人数をかけていたものではなかった。
あまりにも消極的な前後半であったにも関わらず、延長に入ると俄然前線の人数が増えた。
二人ぐらいでなんとなく攻めていたものが五人六人である。
延長は明らかにトルコのペースであり、ゲームを支配していた。
対してクロアチアは動きが重くなり、這々の体で対応せざるを得なくなってきた。
そこでクロアチアに先制というにはあまりにも遅すぎる得点が生まれたのは皮肉だが、
少なくとも延長以降ゲームの支配はトルコにあった。
いや、ゲーム全体もそうであったのかもしれない。
一点取られない限りは決められた戦術を遂行する、
それが想定されたことであったのなら、全てはトルコの支配のままゲームが進行したのかも知れない。
レアルとオリンピアによるTOYOTA CUPのレポにも書いたが、
ボールの支配はゲームの支配と同義ではないのだ。
如何にボールを支配されようとピンチになろうと、
戦術通りの進行であればそれはゲームの支配に他ならないのだ。
してみると少なくとも失点までの119分はトルコがゲームを支配していた、そう考えることもできるのではないか。
クロアチアの選手が二人もPKを外してしまった(ストップされたのではなく)、
その事実はそれだけクロアチアの選手に疲労があった、徒労感があった、そういうことではないか。
トルコがクロアチアを疲れさせたのだ。
おそらくは、戦術的に。
この二点だけでも、トルコが運だけで勝ったとは考えられない。
むしろ運を味方に付けるための方法論が上二点であったような気すらする。
さて準決勝ではドイツと戦うことになるトルコである。
ラインを上げ、逆サイドを空けてでも局地の数的優位を保つ戦術をクロアチア戦では採った。
果たしてこれが逆サイドの運用では世界随一のレベルを誇るドイツに通用するか、
またはそれに対応できる次の手を講じているか。
それがあればトルコの決勝進出も十分にあり得る。
しかし無ければ・・・・思わぬ大差になるかもしれない。
これは前回とは違った意味で経時的記述はしない。 オランダの内容があまりにも酷すぎた。
前半からスペースを広くとって押し寄せてくるロシアにつき合いたくないんだろうな、いつかスペースを塞いで押しつぶすんだろうな、とか期待してたら先制されて、いやこれも計算の内だろうほらやっぱり追いついた厳しい試合の続いたロシアに残る体力が少ないことを見越して延長勝負かあれあれ全然走れてないぞどうなっとんじゃあら入れられたまた入れられた終わってもうた・・・・・
どしたの????
実況が「ドイツはリーグとは別のチームに・・・」なんぞとほざいとったが
あれはただ単に抜いてただけでトーナメントで本気出しただけのこと。
戦略的には必然とも言えるやり方。
対してこっちはどうなんじゃろ。
イタリアとフランスこかしてそのまま突っ走るかと思ってたらまったくそんな気配もなく。
燃え尽きたんだかもう休みにしたかったんか、まあ勝たなくても良いかなのか。
ロシアはヒディンク監督らしくいい時のオランダのような内容。
オランダがオランダに負けちゃった。
クライフが観に来てたらしいが、彼のコメントをちょっと調べてみたい。
「どっちがオランダか判らなくなった」とか言ってないだろうか。
とにかくこの試合はもう、「どうしたオランダ」の一言でいいやもう。
うって変わってこちらは詳細に行きましょう。
こちらはわし的には素晴らしい内容。
一次リーグで余裕ぶっこいたスペインと這々の体でなんとか二位に滑り込み
しかもガットゥーゾとピルロを欠くイタリア。
まあボランチ二枚抜けても守備の堅さに変わりがあるはずもないだろう、
スペインがその堅い守備を崩せるかどうかになるだろう、そう思いつつ。
開始早々イタリアはプレスをかける。
スペインはややゆったりと且つ慎重にボールを回す。
イタリアゴールに近づいても攻撃にかける人数が少ない。
慎重に過ぎるきらいもあるが、相手はイタリアなのだ。
カウンター一発でも喰らえばほぼ即死である。
どちらもペースを握れないまま5分が過ぎる。
スペインは横がダメなら縦はどうかとパスを前後させてみる。
全く揺るがないイタリア。
傍目にもまったく隙が見えてこない。
ボールはペナルティエリアとペナルティエリアの間を行き来する。
膠着状態が続く。
15分、右サイドでボールを受けたフェルナンド・トーレスが強引にペナルティエリアに割って入る。
わずか1m入ったところでイタリアDF陣に潰される。
イタリア守備陣は徹底的に中央を絞り、7〜8人で二層の壁を造りあげる。
何度かフェルナンド・トーレスとビジャがドリブルでエリアに持ち込む事を繰り返すが 完璧に潰すイタリア。
抜こうに抜けず出そうに出せず。
焦れた戦いはまだ始まったばかりだ。
18分左のスペースに抜け出たアンブロジーニが鋭いクロス。 ペッロッタの頭を掠める。
やはりイタリアの攻撃にはキレがある。
少ない手数でありながら攻撃するごとの恐怖感はスペインをも凌駕する。
20分になってイタリアもやや前掛かりに。
しかしスペインの守備も安定している。
これだけスペインの守備陣を安心して観ていられるのは初めてかもしれない。
3分にはイタリアゴール前でFK。
ビジャが鋭いシュートを放つがブフォンは完全に読み切っていた。
ここからも30分にシャビ、34分にイニエスタがミドルを放つが全く脅威にはならず。
さりとてそこから先に運ぶこともできず。
コースを消しつつドリブルもさせず、イタリアの守備はほぼ完璧に機能している。
ならばと37分、左サイドを抉ってこぼれ球のシュートを狙うが右に逸れる。
惜しいと言えるのはこれぐらいか。
枠内ならブフォンの手は届いていなかった。
43分にもシャビからのリターンを得たイニエスタがシュート。
もう一工夫無ければ脅威にはなるまいが、一工夫している内に取られてしまうだろうと感じさせるイタリアである。
後半に入ってもスペインは恐る恐る攻める。
ひたすらパスを回しまくってリズムをつける以外にペースを握る手だてはなさそうだが。
散発的に攻撃を繰り返す。
しかしその内に前半は全く通らなかったスルーパスが難しいタイミングなら通るようになってきた。
チャンスにはほど遠いのだが。
同じようにイタリアのカウンターは脅威の度合いを増してくる。
刃が喉を掠めるような雰囲気。
10分を過ぎてベンチが動く。
イタリアはペッロッタをカモラネージに交代。
スペインはなんと中盤のバルサコンビ、イニエスタ、シャビをセスク、サンティカソルラに。
アラゴネスは中盤での守備を減弱しても良いと判断したのか、果たして。
15分、中途半端に零れたフィードをカモラネージからトニ、再びカモラネージが鋭いシュート。
コースが甘くなければ如何にカシージャスとて止められないであろう鋭さだった。
「甘い」というのはあくまでもカシージャスにとって、であるが。
23分にはスペインのFKからCK。チャンスにも見えない。
直後にイタリアはサイドから簡単にクロスを上げる。
トニの頭に合うも躰を寄せられ正確に狙えず。
29分にはカッサーノをディナターレに交代。
中央が薄くなった分中央でキープできる選手にするべきだったのかもしれないが、 これは結果論に過ぎないだろう。
この後スペインが攻勢に出る。
チャンスらしいチャンスはマルコス・セナの無回転ミドルだけだったが、 攻めようという意志が見てとれた。
しかしやっとあのシュートを評価できるようになってきたか・・・ わしに六年遅れて。
まあカーンにブフォンにヒカウドにバルテズに、被害者が増えればさすがに気づくか。
38分にはフェルナンド・トーレスをグイサに交代。
抜く選手より抜け出る選手の方が有効と考えたか。
確かにスルーは出るようになっているが・・・・
41分にはそのグイサがビジャからのクロスを受けるもハンド。
ロスタイムにはビジャがセスクからのパスを最高のトラップで受けるも イタリアDFは最高の寄せでシュートには至らず。
延長に入るまで続いた鍔迫り合いはそのまま続く様相。
開始直後のスペインFKの際、セルヒオ・ラモスがパヌッチに倒されるが笛は鳴らず。
審判によってはPKを取っても不思議ではないが、このような試合にPKでの得点はそぐわない。
その意味では素晴らしいレフェリングである。 スペイン人は不満らしいが。
左からのクロスを折り返し、セスクが飛び込む。
こぼれ球をシルバがシュートするも枠を外す。
キエッリーニが完璧なポジショニングでシュートコースを塞いでいた。
5分、右クロスにディナターレのヘッド。カシージャスのフィスティング。 CKが続くが決められない。
イタリアはシンプルにトニに合わせようとしている。
スペインは変わらずじっくりとキープし、 わずかな隙間からスルーを狙う。
延長後半に入り、ドナドニが動いた。
アクイラーニをデルピエーロへ。
トニへのクロスを続けた上での交代だ。
しかもスペインのボランチは薄くなっている。
目指す展開は判りきっている。
5分、シルバからビジャへのパス。
ブフォンのあまりにも速い飛び出しで打つ手なし。
デルピエーロはドリブルで切り裂こうとするが スペインもそれを読み切っている。 チャンスメイクには至らない。
結局、膠着したままPK戦への決着に雪崩れ込む。
ブフォンは終始笑顔。 対してカシージャスは硬い表情。
自身を御する為の方策か。
コイントス。 ゴール裏にはスペインのサポーター。 スペイン先攻。
一人目は両チームとも難なく決める。 ブフォンはPKを見ない。
二人目。 途中出場のサンティカソルラ。表情が硬い。 しかし決める。彼のキャリアでも大きなポイントになるだろう。
イタリア二人目はデロッシ。カシージャスの手掌がボールを吸い込んだ。
三人目は両チームとも決める。 カモラネージは蹴る直前に左側を見る目のフェイント。
四人目。ブフォンが吼えた。グイサは頭を抱える。
延長途中から遅延行為を働いたとしてブーイングを一身に浴び続けたディナターレ。 表情が硬い。やはり・・・
五人目、セスクが決めた。試合を決めた。
激戦と言うには及び腰な内容だったかもしれない。
双方とも攻め手を欠いた印象は拭えない。
ただし強豪国同士の準々決勝で、しかも一方がイタリアでノーガードの殴り合いの体はあり得まい。
これほど緊張感に溢れた試合は、ワールドカップの決勝でもほとんど観ることはできない。
少なくともこれほど緊張感を漲らせたスペインは見たことがない。
決定機は少なかったが、両チームとも、この中であってなお決定機を創りあげた事をこそ賞賛すべきだろう。
なんとも見応えのある120分だった。
なんとか閂を外そうとあらゆる手を尽くしたスペインも、
ひたすら鍵をかけつつも斬りかかったイタリアも素晴らしいチームだった。
勝負(公式記録上は引き分けだが)を分けたものがあるとすれば、 一つにはPK前のコイントスだろう。
そんなものが、と普通の試合ならわしは一笑に伏す言い方だが、 それほど拮抗した内容のゲームだった。
あの状況でディナターレにPKを決めろというのは酷に過ぎる。
これはディナターレが未熟かどうかという問題ではなく、
延長後半に腿に膝を受け倒れ込んだ代償にブーイングを浴び続けたディナターレが、
あの状況、あのゲーム内容で平常心を保てるとすれば強心臓にも程があるというものだ。
コインが準決勝進出を決めたと言っても過言ではあるまい。
もう一つ、スペインが勝ち上がった要素があるとすれば、 スペインの方が勝利を欲し、
そのためにあらゆる手を尽くした、ということになるのではないか。
この大会、一次リーグから準々決勝まで、より走り、より勝利を欲した方に、
ある意味順当に勝利の女神は微笑んでいる。
一次リーグドイツを下したクロアチア、神懸かりと言うに相応しいトルコ、そして前夜のロシア。
頑張ったチームが報われている。
それがこの試合にも当てはまるのであれば、 スペインの方が勝利に向かってよく頑張った、そういうことではないのか。
イタリアが頑張ってないとは全然思わない。
ただ贔屓目を承知で言うが、あの強固なイタリアDF陣に向かい、
持てる力、持てる技を全て注ぎ込もうとしていたスペインに対し、
イタリアはそこまで得点することに力を注いでいたと言えるだろうか。
攻撃の切れ味はイタリアの方が上だろう。
少人数でも十分切り裂ける力を持っている。
実際の決定機はむしろイタリアの方が多いぐらいだ。
しかしそこに、スペインほどの得点に対する情熱があったかどうか。
有意な差があった、と断言できるほどではない。
こじつけと贔屓目でそう思うだけである。
そのぐらいにしか差はなかった。
ボール支配率こそスペインが多かったが、 それぐらいでスペインが優位だと言うつもりは毛頭ないし、
イタリアの戦術の上ではイタリアこそ優位だったろう。
いずれにしろ、スコアレスドローでこれほど面白い試合はそうそうない。
素晴らしいゲームだった。
わしの望み通り、ドイツ-スペインの決勝が観られるのか。
それともトルコ、ロシアがこれまで以上のパフォーマンスで決勝まで勝ち上がるのか。
残り三試合、大いに注目したい。
睡眠不足はこの際気にしない(笑)
さていよいよ準決勝である。
ワールドカップであれば一番の熱戦が期待できる処であるが、ユーロではどうだろうか。
今回は面白いチームが揃った。
安定感のドイツに奇跡的な逆転を繰り返してきたトルコ、
相変わらずのヒディンク・フットボールなロシア、
そして引くことも覚えたスペイン。
何処が勝ち上がっても面白いがまずはこの試合である。
開始早々からドイツはプレッシャーをかける。
ガチガチに行くつもりかと思えばトルコが乗らないと見るや直ぐに勢いを緩める。
これまでの疲労の蓄積もあれば次もある。
敢えて無理をしなくても、ということか。
トルコはメンバーの大勢を欠きながらもやはりパス回しが巧い。
ドイツの守備はサイドを緩める。
ならばそこから、とサイドからの攻撃を繰り返す。
攻撃を繰り返す内にリズムができてきたか、10分を過ぎてトルコが攻め入るシーンが続く。
しかしドイツはサイドの分中央を絞り、決定機には至らない。
前を緩めた分、後ろは締まっているドイツ。
22分、トルコはスローインをリターン、クロス。
当たり損ないのシュートはレーマンの頭上を越えバーに当たる。
リバウンドがウールボラールの眼前に。
奇跡はまだ続くのか、努力は報われるのか、トルコ先制。
しかしこれをレーマンのミスと評するマスゴミには呆れる。
あの至近距離からの足元へのシュートをどう止めろと。
後述するがダイヒョーのカントクも似たようなものだからしょうがないと言えばしょうがない。
ドイツはここで前のめり。 直ぐに追いつく。
26分、VTRを見るかのようにポルディ→シュバ。
クローゼは右から左へのステップバックでスペースを空けている。
シュバは右から左に流れ込む動き。
誰もいなかった筈の所に走り込まれてはDFの対応も遅れる。
視界に入ってきた時にはシュートを打たれているという動きである。
ダイヒョーのカントクには崩れていないように見えるらしいが、
トルコのDFが機能する前に壊しているのである。 まあどうでもいいけど。
トルコも頑張るが、中盤からのパス出しを迷うようになる。
例によってのドイツの填め殺しである。
一つのパスは出せても、それが次に繋がらない。
逆にドイツがキープした時には、トルコもクロアチア戦ほどの密集は作らない。
ドイツの逆サイドへの展開はよく判っているのだろう。
一応はケアしつつチェックに入っている。
ラーム、フリードリヒの攻め上がりが少ないこともあり、
サイドチェンジからのピンチは試合を通じてなかった。
後半に入り負傷したロルフェスをフリンクスに交代。
ドイツはDFラインを上げてきた。
さほどのプレスは入れない。
なんとなくプレッシャーがかかったかな、と言う程度。
しかしトルコが攻勢に出れるわけでもない。
前半の内にはもう填っているのである。
ドイツはまだ点を取りには行かないだろうと予測。
取れれば取るだろうが、あまり早くに取っても後が大変だ。
奇跡も続けば当然になる。
取れる、そう信じてトルコが攻め入って来るのは厄介以外の何ものでもない。
ドイツが点を取りに来るのは残り20分を切ってからだろう。
正しいのかどうか果たして、試合は膠着状態を続ける。
攻めても無理はせず、守りは堅く。
のらりくらりと時間を費やしていく。
残り20分を切り、予測通りか前に人数をかけるドイツ。
ラームが駆け上がる。ドリブル。フェイントで下がる。
クロス。 クローゼは一旦前方に走り、落下地点に入る。
リュシュトゥはその前で弾こうと飛び出す。
クローゼは方向転換して左に向かう。新たなポイントへ。
先に触る。逆転。
正直わしはこの一連を正しく評価できない人間の下でプレイしたくはない。
チームメイトでもイヤだ。
ダイヒョーカントクの眼鏡くんは「ミス」と断じていたけどね。
相変わらず目が見えてないね。
02年のWC決勝でもそんなのがあったけど、やっぱ進歩してねえやこいつは。
ダメだね、ダメ。
これ以上駄目という漢字が当てはまる目は知らんわ。
「出た以上触る」のは確かにGKの鉄則である。
だからといってミスと断じるべきかどうかは詳細を評価しなければならない。
リュシュトゥ自身がミスと断じるのは正しい。
あのシーン、リュシュトゥは確かに自分を責めるかのように悔いのある表情をしていた。
しかしそれは単純な判断ミスやプレイのミスではありえない。
簡単に言えば、クローゼに騙されたのである。
あれはクローゼのフェイントに引っかかってしまったが故の後悔である。
それをミスと断じて良いのは彼以外にない。
先の記述にその内容が書いてあるのがお解りだろうか。
クローゼは一旦落下点に入ってそこでボールを待つ仕草を入れているのである。
その上で、更に方向転換し左のより高いポイントに入り込んだのである。
リュシュトゥはこれに引っかかったのだ。
リュシュトゥの視点から見てみよう。
ラームのターゲットは明らかにクローゼ。
クローゼである。
ヘディングの名手と謳われて久しい、クローゼ、である。
自分のチームメイトであるDFが競り勝てるかどうか。
ならば先に触る方が確実である。
いくらクローゼがヘディングの名手とはいえ、 手が使えるGKの方が有利なのは言うまでもない。
リュシュトゥはクローゼのポジションをクロスが上がる前から把握していただろう。
クロスの瞬間にも見た筈だ。
落下点に既に入っているのを見た筈だ。
そこで自分が触れるポイントに向かってダッシュ。
そのポイントを横切ってクローゼが飛び込んできたのだ。
視界にクローゼが入った瞬間、リュシュトゥは世界中の誰よりも早く、失点に気づいただろう。
騙されたことに気づいたろう。
完全にしてやられた、のだ。
あの得点シーンは、こういうことなのだ。
この経過に従って、「ミス」と言い切れるポイントがどこにあろうか。
クローゼがポジションのフェイントを入れてくると読み切れる人間が、GKが、どこにいるのだ?
この点以外にリュシュトゥの判断に誤りはない。
シュートを打たせないのが守備の大前提である。
DFに任せてシュートを打たれるかもしれないのであれば、
シュートを打たせないためには自分が飛び出して触るしかない。
結果的には失点であったが、少なくとも飛び出したという判断自体は間違いではない。
触ろうにも先に触られてしまったのだから、プレイのミスでもまたあり得ない。
クローゼが先に触らなければ、確実にリュシュトゥは触れる位置にいたのだ。
この一連のプレイのどこに、リュシュトゥのミスがあるというのだろうか。
クローゼの力量を読み誤った、強いて言うならばミスと言えるのはここ以外にない。
ではそれを読めたとして、トルコのDFはクローゼに100%競り勝てたのだろうか。
またはシュートに至ってもリュシュトゥは100%止めることができたのだろうか。
考えるまでもない話だ。
もうわしが言葉を選ぶ必要はない。
岡田がバカなのはもう知っていたが、ほんとに休み休みにして欲しいものだ。
この中継、何度か音声が途切れたが最初からなしで良かったよ全く。
ったくくだらん声で折角のファインゴールが汚されてしもうたわい。
いつまでもダイヒョーでくだらんサッカーやってろ。
話を戻そう。
残り10分を切り、ドイツは逃げ切りモードに移行した。
無理せず騒がず、である。
85分、右サイドでサブリがキープ。
クロスを完全に切ったラームが反転したサブリに躰を寄せる。
ラームがワンサイドを切るならば、中を切る筈だと読んだのか、
自分の後ろに向かって縦方向に叩き、そのままラームをぶち抜くサブリ。
残された角度はない。
レーマンの正面にクロス、これしかない。
セミフが先に触る。
絶妙なタッチでコースを変えられたボールが、ゴールに吸い込まれる。
さすがにここまで来るとトルコは余程神に愛されていると思わざるを得ない。
ドイツはまさかの展開からの失点である。
「駄目」で見ればレーマンのミスなのだろうが。
あれをキャッチするためにはレーマンは待っていてはいけなかったのだ。
低いボールに向かってダッシュして先に取らなければ。
そうだよな?あれはミスだよな?>岡田
まあ折角の好ゲームを台無しにされた腹いせはこのぐらいにしといてやろうかな。
ダイヒョーも眼鏡もどうでもいいし。
さあドイツがどう来るか。
延長に入ってでもじっくり勝機を見いだすか、勝負に出るか。
ラームはまた駆け上がる。勝負か。
ドイツは二列目までが左右に動き、皆がパスコースとスペースを作る動き。
美しい。 美しさに見とれていたらラームはヒッツルスベルガーに。
そのままラームはゴール前に走り込む。
リターン。 リュシュトゥの動きを見切って、丁寧なシュート。
ラームは抜かれての失点を取り返した。
実況的にはラームのミスらしいがまあどうでもよかろう。
ロスタイムに入る。 ドイツのゴール前でフリーキック。
奇跡はまだ起こるか・・・・さすがにそこまで神様は味方しなかった。
タイムアップ。
ドイツが決勝に進んだ。
終わってみればドイツの圧勝という感じである。 jokerはハラハラだったようだが(笑)。
開始から失点までの内容から、ドイツはゆったりと時間を経過させ、
後半残り少なくなってから得点を挙げて逃げ切ろうとしていたのではないかと推察される。
これはトルコの得点により修正を余儀なくされたが、
直ぐに取り返したことでまた計画通りにプレイすることができるようになった。
後半に入っても直ぐに取りには行かず、残り20分を切ってから攻めに転じた。
残り10分というところでクローゼの得点。
予定通り、という感じだったろうが、トルコのスーパーゴールによりまたも修正が必要になった。
それでもラームが得点して延長に入ることなく決勝に進むことができた。
二失点はあったものの、大体の予定通りに試合を進めることができたのであるから、
圧勝と言っても過言ではあるまい。
ドイツの命題としては、体力を温存しつつ決勝に進む、ということである。
こういう戦い方は02WCでの準決勝でも同様である。
あの時も同じように残り20分になるまではゆったりペースで試合を進めていた。
わしには全く同じ様な内容に見える。
だから安心して観ていられたのかもしれない。
かなりの余力を残して決勝に進むことになったドイツである。
相手は果たして・・・・・
ドイツはわしの予定通り決勝に進んだ。
後はスペインさえ行ってくれればもう大満足な試合になること請け合いである。
しかしロシアもここまでヒディンクらしいフットボールで勝ち上がってきた。
ヒディンクには準決勝止まりというジンクスがあるが、
それはワールドカップでのことであり、ユーロでは一試合少ないのだ。
全力疾走なフットボールであるから体力的にはきついだろうが、
この試合を走り切るだけの力は残っているだろう。
キックオフ。
スペインがプレッシャーをかける。
イタリア戦の時のような緊張感を維持している。
ドイツのような緩んだ気配はない。
攻めてはいるがあまり人数をかけようとはしていない。
堅い入り方である。 シャツが赤くないこともありスペインらしくない(笑)。
3分にはCKのこぼれ球をシャビがクロス。
セルヒオ・ラモスの頭には合わず。
5分、ロングフィードをビジャがフェルナンド・トーレスに落としてシュートもGKに阻まれる。
ここでスペインは攻め手を緩めた。
かといって攻めないわけでもなく、速い攻めでプレッシャーをかける。
緩急を使い分けることでロシアにプレッシャーがかかる。
ロシアも前には出れない。 攻め入ろうとするものの決定機は作れない。
29分にはスペインのFKからロシアのカウンター。
なんとなく及び腰と感じられる。決定機には至らず。
30分には足を痛めたビジャをセスクに交代。
直後、左サイドから中央に居座るパヴリュチェンコにパスが通る。
良いトラップであったがマルチェナの獰猛なカバーに遭いシュートは枠を外す。
結局ロシアのshots on goalは前半0であった。
スペインは人数をかけずに攻め、ロシアはカウンターに入ろうにもスペインは
しっかり守備を固めておりチャンスを作れない。
ここまでは完璧に試合をコントロールしていた。
後半に入り、スペインは攻めの人数を増やした。
4分、左サイドでイニエスタがキープ。カプデビラが上がる。
フェルナンド・トーレスは右に流れる。
作られたエアポケットに走り込むシャビ。
イニエスタが鋭いクロスを合わせた。
至近距離からのボレー。
スペイン先制である。
ロシアはプレスを強める。
前に出ざるを得ない。
観客から「Ole!」の声が挙がる。
スペインはロシアのプレスをかわしつつパスを回していた。
まるで闘牛である。
ロシアは10分で沈黙した。
プレスをかけたくても奪われては翻弄され、 フェルナンド・トーレスにボールが渡りピンチに至る。
決定的な場面こそ無かったが、数回これを繰り返している内にロシアは前に出れなくなっていた。
フェルナンド・トーレスをグイサに、シャビをシャビ・アロンソに交代。
結果的にはこれが当たった。
楔を打ち込むより走り込む方を選択したのだろうが、これは効果的だった。
更にロシアが前に出れなくなった。
しかも28分、カウンターからグイサが右のセルヒオ・ラモスに流し、セスクに下げる。
セスクはワンタッチで絶妙な浮き球をグイサに合わせる。
グイサはこれまた絶妙なトラップの後、飛び出したGKをかわすようにシュート。
いよいよ追い詰められたロシアであるが、どうにもならない。
ヒディンクは選手交代でペースアップを示唆するが笛吹けど踊らず。
ロシアの選手は恐怖と疲労を顔に浮かべる。
無慈悲にもとどめを刺すスペイン。
37分、左サイドに抜けたイニエスタからまたもセスクを介しシルバへ。
簡単に決める。
ロシアは時間とともに脚を止める。
前に出る気力も体力もない。
全て打ち砕かれたという体であった。
最初から最後まで、スペインが完全にゲームを支配していた。
先の準決勝がドイツの圧勝であれば、こちらはスペインの完勝である。
先制中押し駄目押しと三点を挙げ、ロシアのプレスを完全にいなし、 最後には気力をも奪い去った。
最後まで諦めないことを信条とするのがヒディンクのフットボールであるが、
後半の失点後には諦観がロシアを覆い始めた。
完膚無きまで、という表現はこの大会でこの試合が最も相応しい。
スペイン贔屓としては最高の試合であった。
さてこれでわしの好きな二チームが決勝で当たることになった。
どちらが勝ってもわしは嬉しいので存分に内容を楽しめる。
素晴らしいゲームになることを期待しよう。
5-4とかいいなあ・・・・(爆)
いよいよ決勝である。
ここまで無敗で勝ち上がってきたスペインと、
一次リーグでクロアチアに敗れたものの危なげない戦いを続けてきたドイツ。
面白い戦いになるであろうことは必至である。
スペインはビジャの負傷を受けセスクを先発に。
システムはアラゴネスが拘ってきた4-1-4-1。
ドイツはトーナメント以降のシステム、4-2-3-1。
どちらもワントップだが中盤の構成が違うと言えば違う。
いずれにしろ中盤に人を割いた形であるが、この攻防は一つのポイントである。
ただしシステムなどは基本の形であり、これをどう運用するか、これが問題になるのである。
そしてここまでのところ、双方ともハイレベルなシステムの活用である。
しかしドイツはクロアチア戦で手詰まりになった時の打開が今ひとつであり、
逆にスペインはここまで綻びを見せていない。
つまり綻びが生じたらどうなるかは不明である。
ここがもう一つのポイントになるだろう。
キックオフ。
スペインは激しくプレスをかける。
常時画面には7人程度が映る。
ここまで体力的にはきつい試合をこなし、且つ日程的にも一日少ないスペインだが、
そんなことでなりふり構ってはいられないのだろう。全力で走りきるつもりか。
対してドイツは激しさはあまりないものの、綺麗に整えられたフォアチェック。
予想通り中盤での攻防が始まったが、早々に危うく事故が起こるところだった。
セルヒオ・ラモスの横パスを飛び出したクローゼがカット。
あわや、というシーンであったがクローゼはコントロールしきれない。
これでスペインのパス回しが更に慎重になった。堅い。
ドイツは中盤で繋ぎながらサイドへの展開。
4分にはラームが攻撃を仕掛ける。決定機には至らず。
スペインは裏を狙う。まだ精度は低い。慎重になり過ぎか。
フェルナンド・トーレスだけでなく中盤からも人が飛び出していく。
この点、イニエスタとシャビの存在は大きい。
二人とも攻守に優れた選手であり、出し手にも受け手にもなれる。
そしてひたすら狙いは裏。
13分にはイニエスタが左サイドを抉り、危うくオウンゴールのシーン。
19分にはフェルナンド・トーレスが裏に抜ける。
浅いラインを引くドイツの裏を徹底的に狙う。
これが功を奏すかどうかがまた一つのポイントになる。
22分、右サイドで裏に通る。クロス。
フェルナンド・トーレスのヘディング。ポスト。クリア。
25分、ドイツ左からのCKを折り返したところにバラック。
枠に向かうもセルヒオ・ラモスが躰全体でブロック。
そしてここからカウンターでまたもフェルナンド・トーレスへ。
一途に裏を狙う形である。
ここは凌がれたが、狙い続けることで針の穴が開いた。
33分、右サイドでまたもフェルナンド・トーレスが裏に抜ける。
予測されていたプレイにレーマンが飛び出す。
フェルナンド・トーレスはラームと競り合いながら、
飛び込んでくるレーマンがコースを塞ぐよりも一瞬早くタッチ。
ボールはレーマンの足を越えゴールに。
やっていることは単純なスルーパスからのシュートなのだが、
あのタイミングであの状況でよくもゴールできたものだ。
神の子と称されるのも不思議はない。
素晴らしいゴールだった。
これでドイツは前に出る。
ボールを運んでセットプレイは得られるものの
ペナルティエリアにはほとんど入れない。
スペインは守備の時にも人数をかけている。
若い選手が多いとは言え、凄まじい体力である。
しかも奪ってからがまた速い。
44分にはドイツが左サイドから攻撃を仕掛けるもカウンターに遭う。
一瞬で前半が終わった。
スペインはここまでほぼ完璧。
ここまでドイツの得点に絡んできたポドルスキー、シュバインシュタイガーにほとんど仕事をさせていない。
ドイツはこの二人が攻撃にどう絡めるかがポイントになる。
逆にスペインがここを抑えきればドイツはパワープレイに頼るしかなくなるだろう。
ドイツの守備は裏を取られるのを覚悟でラインを上げている。
ここで迷いが出ると更なる失点に繋がるだろう。
後半に入る。
ドイツはラームをヤンゼンに交代。
負傷交代だそうだがこれは痛手である。
ラームが上がれなければポドルスキーが活きない。
ただでさえポルディへのパスは全然繋がっていない。
ドイツベンチ、ヤンゼンもそれは解っているだろうが、果たして。
スペインはじっくりとボールを回す。
ボールを前後させる動きにドイツのDFラインが乱される。
フォアチェックを緩め、中盤が下がって一旦DFラインに入ってから前に出る動きなのだが、
スペインの中盤が分厚いためにどうしても遅れ気味になる。
このスペースを与えるのは危ない。
10分、ヒッツルスベルガーをクーラニーに交代。
パワープレイを仕掛けるのかと思えばそうでもない。
一応放り込んではみるのだが、しつこさが足りない。
もちろんスペインがサイドでプレッシャーをかけて
アーリークロスが簡単には上げられないのもあるし、
プジョル、マルチェナが安定しているので
如何にクローゼ、クーラニーといえどキープは元よりパスを落とすのも難しいのはあるのだが。
ドイツの交代に意図と結果が見えてこない時は危ない。
クロアチア戦が良い例である。
ここを打開できればドイツにも芽はあるのだが。
それでも15分、なんとか左サイドに抜けたバラックがクロス。
クーラニーはフリーで逆サイド。
カシージャスのファインセーブである。
全く以て交代が早いアラゴネス。
セスクをシャビ・アロンソに。
シルバをサンティ・カソルラに。
守備固めというより、中盤の動きが生命線と知っての交代だろう。
中盤が薄くなればドイツのサイドが生き返る。
わずかにでも動きが落ちれば簡単に攻守が入れ替わるだろう。
このペースを譲りたくないのだ。
そしてこれは大当たりであった。
リフレッシュした中盤が攻守を安定させた。
20分過ぎ、FKからセルヒオ・ラモスの頭、
直後のCKからイニエスタのシュート。
いずれもレーマンが凌いだが、ここで得点を重ねていても不思議はなかった。
30分、フェルナンド・トーレスをグイサに。
ドイツはクローゼをマリオ・ゴメスに。
「サイドアタッカー二枚ずつ」を採りたいドイツにサイドの交代が難しいのは判るが、
クローゼを落とすのはいくらなんでも痛い。
この辺りの意図が微妙である。
35分にはここまで中盤を底から支え続けたマルコス・セナが持ち込み右サイドに叩く。
サンティ・カソルラから逆サイドのグイサへ。
グイサが更に折り返したところにマルコス・セナ。
不憫にもタイミングが合わず。
わしはMVP級の働きだと思っている彼なのだが、
得てしてこういうものなのである。
40分にはスペインのFK。マルコス・セナに蹴らせてやれよ・・・・(^^;
この後にはメルテザッカーを前線に置きパワープレイを仕掛けようとするが時既に遅し。
チャンスらしいチャンスを作れないまま、タイムアップ。
残念ながらわしの期待する打ち合いにはならなかったが、
これはもうスペインが守備を固めつつ中盤の支配に主眼を置いた以上仕方あるまい。
仕方ないという言い方もアレだが(笑)
ここまで勝ち抜くために徹底してきた形である。
それを決勝になってかなぐり捨てる筈もなく、
当然の如く自分達の創りあげたスタイルを徹底したのである。
これが最大のポイントであったように思う。
ゲームを支配する事は単純にボールを支配することではない。
実際のボール支配率はドイツの方が上である。
むしろ「持たされていた時間」が長かっただけなのだが。
スペインはここまで、イタリア戦を除きゲームを支配してきた。
ドイツもクロアチア戦を除き、そうである。
そしてゲームを支配することに、少なくとも経験上、長けているのはドイツである。
ゲームの支配を譲らないためにはあのような形しかないだろう。
ただし、前半硬かったという向きもあるらしいが、
「硬い」と「堅い」は区別して欲しいものである。
おバカちゃんたちにも解るように簡単な区別を教えてあげよう。
「硬い」は前に出れないが「堅い」は出れる。
前半早々からひたすら裏を狙い続けたのがその答えとして必要十分である。
リスクを避けて尚且つ攻撃するのが「硬い」なのだろうか。
しかもドイツのフォアチェック/ワンサイドカットをかいくぐってスルーパスを狙い、
それを幾度となく通しているのである。
慎重に「通す」事が第一になり、その結果「ギリギリのボールを通す」事に
ならなかった嫌いはあるにせよ「硬い」とまでは言えない。
ましてDFラインでインターセプトされているのである。
慎重にならない方がおかしい。
「硬い」状態ではパスすら出せまい。出しても精度は上がるまい。
果たしてスペインはスルーパスを狙い続け、精度を上げていった。
そしてその結果が得点である。
「虎視眈々」という四文字熟語までは理解できないだろうが、
せめて「硬い」と「堅い」の意味ぐらいは理解して欲しいものである。
慎重になり過ぎたのを「硬い」というのであれば、3分から13分の10分間、だけだろう。
後は堅く、である。
さて冒頭に述べた、中盤の支配がポイントになる、それはもちろんセオリーであるが、
それだけでドイツを御することは不可能である。
中盤を無視してでも点を取れる戦術があり、選手がある。
それをもさせないためには最前線から出所を押さえる必要がある。
この点でスペインの守備は素晴らしかった。
前から誰かがチェックし、後ろは後ろでマークきっちり。
結果ドイツの中盤はほとんどチャンスに絡めていない。
それでもクロスを上げ、シュートを放ったバラックをむしろ褒めるべきだろう。
特にポドルスキーの抑えは完璧である。
ビジャとの得点王争いのせいでもあるまいが、
この試合ポドルスキーの姿をほとんど観なかった。
ポルトガル戦でクリスチアーノ・ロナウドを半分は消したドイツだったが、
この試合では逆にポドルスキーが消されてしまった。
これでラームがいなくなってしまっては片羽もがれたようなものである。
事実として前に向かえなくなってしまった。
いくらシュバが頑張ろうとしてもこれではどうしようもない。
一応データとしてはこうである。
左サイドのラームが出したパスが前半だけで46本。
ポルディが一試合を通じて出したパスが31本。
このデータだけでポルディが如何に消されていたかが見える。
ラームがキープしても、その先がない、そんなデータだ。
話は横に逸れるが、昨期、今期とバルセロナが無冠に終わったのも
ロナウジーニョを消すことに相手チームが心血を注いだ事に端を発する。
リーガに属する選手はその技の効果を誰よりも知っているだろうし、
そのノウハウもまたよく知っていることだろう。
逆にその痛みもよく知っているだろう。
イニエスタなどはその最たるものだ。
その技をドイツにぶつけたのだ。
八つ当たりと言え無くはないかもしれないが(笑)。
更に消す選択肢としてもポルディは当たりだった。
シュバでも良かったが、ラーム×ポルディとシュバ×フリードリヒでは前者の方が脅威だろう。
しかもラームがいなくなってしまった。
この時点でスペインの戦術は大当たりになってしまった。
こうしてみるとわしが挙げた試合のポイントは全てスペインが奪っている。
中盤でのボール支配はスペインが全員一丸となって圧倒しているのに対し、
ポルディはゲームに参加できなくなってしまった。
スペインは徹頭徹尾ゲームを支配し得た。
裏を狙い続けたことでも得点という結果を出した。
全てのポイントでスペインが勝っていた。
そのためにスペイン/アラゴネスは先手先手を打った。
守備においては前線からプレスをかけて中盤以降の守備を固め、
攻撃はひたすらスルーパスを狙い、得点してからは前後左右へのパスを増やし、
中盤の動きが僅かにでも落ちたらリフレッシュ・・・・と。
とにかくゲームを完全に掌握しようという動きであった。
頑なに握ったものは離さない、それを徹底していたのだ。
スペインがゲームを支配し続け、このゲームはスペインのものであった。
ドイツにはゲームを奪い返す手段がなかった。
少なくとも、形として見えなかった。
この辺りは今後への課題だろう。
しかし是非この攻撃的な形は続けてもらいたい。
今回のメンバーでは右サイドからの攻撃が物足りなかった感は強い。
だから当初ラームを右サイドに置いており、2トップでの攻撃を目指したのだろうが、
マリオ・ゴメスの不調もあり機能せず1トップに修正せざるを得なかった。
まだまだ未完成、未熟であったのだ。
是非とも完成型を見せて貰いたいものだ。
スペインはこの大会で優勝すべきチームであった事は間違いない。
完成度も高ければ、メンバー一丸となって走り続けた体力も素晴らしい。
個人個人の能力は言わずもがなである。
正直に言って前回のWCとは全然違うチームである。
攻守ともに成長著しい。
以前は攻撃は攻撃守備は守備的な分裂があったのだが、
今回に関しては全くない。
明確に「攻撃のための守備」ができていた。
一つの理想形を提示し得たのではないか。
ここは特筆しておきたい。
また総論として述べることにするが、この大会でスペインが優勝し、
ドイツが準優勝したことも特筆すべきである。
攻撃的な2チームが決勝を争ったのである。
そうでないチームは敗退していったのである。
これが世界の潮流になればわしは楽しい(笑)
さて以後は総論に譲ろう。
とりあえずは興奮を冷まさなければ(笑)
大体半分ぐらい(トーナメントは一応全部)に目を通したのだが、
総じていい走り方をしたチームが勝っている。
一次リーグでドイツを下したクロアチア、
イタリア、フランス、ルーマニアの強国ばかりのリーグで全勝したオランダ、
奇跡的な逆転劇を繰り返したトルコ、
そして「オランダがオランダを倒した」ロシア、
これら全て、勝つために全力で走りきったチームである。
不利な条件を打開するために相手よりも少しでも速く、少しでも多く走ったチームである。
もちろんスペインに対峙したロシアのように走ろうにも走れない状況、
頑張ろうにも頑張れない状況に追い込まれてしまうこともあろうが、
頑張ったチームが勝つ、というのは、教育上良いだけではなく、多大な示唆を与えるものである。
逆に言えば頑張らなければ勝利はないのだ。
強豪国ですらそうなのに、弱小国がどうかは考えるまでもない。
従って弱小国を指導するものにはどういう要素が求められるか、
その答えはこの大会にあるのだ。
当の本人が全く気づきもせずにのほほんとTVに出ている凄まじい現状には呆れ返るばかりである。
おっと話が逸れてしまった。
準決勝、決勝でヨタ話を聞かされた怒りはそう収まるものでもないのでご容赦願いたい。
と考えてみると、決勝でスペインがあれほど元気が良かった理由にも気づく。
リーグでの二試合で早々にトーナメント進出を決め、三試合目ではメンバーを落としている。
この点は大きなアドバンテージだった。
いきなりイタリア戦で延長PKという過酷な戦いを強いられたが、
その次はスペインとしては御し易くしかも一回勝っているロシアだった事も大きい。
自分達は楽にボールを持って回しているだけで相手が来なくなったのだ。
ここで疲労を蓄積せずに済んだのは大きい。
圧倒的な破壊力と支配力を持って大会に臨んだ事、
更に一度戦った相手との再戦があるという組み合わせがあった事、
この点でスペインは体力的にアドバンテージを持っていた。
対してドイツはクロアチア戦を落としたことで休める試合がなかった。
ポルトガル戦はピークでハイレベルな試合内容だったが、
この内容でスペインに対峙できなかったのは惜しい。
元々省エネフットボールではあるが、走らないフットボールではない。
むしろ走る距離だけは長いのだ。
先を読んでの動きになるので急激なダッシュは少なく、その分楽をする、
そういうフットボールなのである。
トルコ戦では抜くところを抜いてでも勝つことはできたが、
スペイン戦に残された体力は余り無かった。
インターバルが一日長いというアドバンテージを差し引いても、
中盤が分厚いスペインに対応できる状態ではなかった。
わしが望む点の取り合いにならなかったのはこの点も大きいだろう。
言うなれば戦略をそのまま遂行できたのがスペインであり、できなかったのはドイツだ。
なんだか決勝の内容だけで云々言われているが、こういう処もちゃんと考えて発言してもらいたいものだ。
戦略の話になったので戦術についてもシステムの事も含めちょっと考えよう。
とはいえいつも言っているようにシステムなどはただの基本的な並び方であり、
それを運用できるかどうかが問題なのである。
従ってシステムに優劣などはない。個人的な好き嫌いはあるが(笑)
ドイツは当初マリオ・ゴメスとクローゼの2トップで4-4-2を敷いていた。
06WCの時からのサイドアタック重視で両サイドに二枚ずつサイドアタッカーを置き、
中盤にはボランチ二枚を置くのが基本形であり理想形である。
どこかの国で司令塔司令塔と嬉しそうに茸が生えているが、
そんなサッカーを真っ向から否定するシステムである(爆)
好き嫌いをさておくと、こんなフットボールは実際理に適っているのである。
数ある列強の中で最も個人がボールを扱う能力に劣るのはドイツである。
中盤でのボール支配を鬩ぎ合うのは難しいのである。
それは決勝で証明されたことでもある。
だがサイドでキープして中央にスペースを作ることができれば中央でも勝負ができる。
いきなり最初から中央に持ち込まれる事はどんなチームでも避ける。
守備の基本中の基本である。
ましてドイツはそれをさせない技術戦術ではトップクラスである。
中と両サイドを巧く使い分ける為のシステムなのである。
ただし本大会に於いてはマリオ・ゴメスに加えサイドアタックもあまり機能しなかったため
4-5-1(4-2-3-1)へのシステム変更を余儀なくされた。
理想通り予定通りに進まなかったのだ。
4-4-2であればバラックが後方で起点になれるのだが、
これで攻撃の起点は左サイドのラームに絞られることになった。
スペインは左サイドのポドルスキー、中央のバラックへのパスを絞るだけで良かった。
バラックは疲労か負傷か、少なくともいいコンディションではなかった。
コンディションが十分ならそれでもチャンスメイクに絡めたかもしれない。
しかし決勝はそのような状態ではなかった。
いずれにしろドイツはシステム変更がうまく行かなかった、と言えるだろう。
最初の形は機能せず、代替案では狙い所ができてしまったのだ。
対してスペインはどうだろう。
こちらは予選からアラゴネスが4-1-4-1に拘り、頑なに批判をはねのけて採用してきた。
予選で負けなかった事もあり、このまま行くのかと思われていたが
ビジャの好調を受け基本システムを4-4-2に変更。
一次リーグではこれが大当たりしたが、交代では4-1-4-1に戻してきた。
言うなれば二枚看板が十分に機能を果たして決勝まで来た。
従ってビジャの負傷欠場は理想形ではなくなったにしろ、さほどのダメージはなかった。
当たり前のようにあるオプションの中で対応できたのだ。
やはりスペインの中盤の分厚さは大きい。
マルコス・セナは本来は守備偏重なボランチではないし、
イニエスタやシャビも攻撃だけのMFではなく本来はボランチである。
攻めにも守りにも秀でた選手達だ。
どこかでも言及している者がいたが(残念ながらTVではなく)、
スペインにはこんな選手がゴロゴロいるのである。
攻守どちらにも対応できるが故にシステム変更にも簡単に対応できたのだ。
この点はドイツと対照的である。
苦し紛れのシステム変更とあくまでオプションの中での変更。
どちらが有利かは考えるまでもない。
しかもスペインは狙い目を絞った。
ドイツの浅いラインの裏である。
右に左にひたすらスルーパスを狙った。
フォアチェックをかいくぐりパスを出せる技術があってこそだが、
裏に通せばチャンスにならなくとも直ぐにカウンターを食らうことはない。
上手くすればドイツのDFラインが下がり中盤にスペースが生まれる可能性もある。
実際に後半にはスルーパスを警戒してDFラインが下がり、
その前でボールが前後するというシーンも生まれた。
33分に入っていなければ、おそらくスペインは入るまでスルーパスを続けていただろう。
逆にドイツは狙い目が絞れなかった。
単純に放り込むだけの戦術でもなければ、それをさせてくれるスペインでもない。
攻撃の起点をラームに絞られ、そのパスの行き先を絞られて打つ手を見失った。
WCの準決勝でもそうだったが、この点で詰めの甘さが残っていた。
攻撃を徹底するわけでもなく、バリエーションも広げられなかった。
クーラニーを入れたのは開き直ってひたすらにツインポストに当てて
そこからの展開を臨むつもりかと思ったが、そういうのでもなかった。
この点で単純な方法を徹底したスペインに分が移ってしまった。
つまらないと揶揄される事への反発かもしれないが(笑)、
つまらない単純な攻撃を繰り返す事も勝つためには必要になる。
スペインであってさえそうなのだ。
ドイツが一つの攻撃に絞っていれば、また違った内容になったかもしれない。
・・・・ま、それで打ち合いして欲しかっただけなんじゃが(^^;
中盤の選手層が厚い事で選手交代によりパフォーマンスが落ちることがなかったスペインだが、
それを最大限に利用できたのも大きい。
アラゴネスはシャビやイニエスタを早めに交代させ休ませることも怠っていないのだ。
試合中にはさほど動きが落ちたわけでもないのに?などと感じたりもしたが、
こうして振り返ってみるとよく解る。
アラゴネスは完全に先を見越して、つまりは決勝で勝つために
戦略的な交代を行ってきたのだ。
一次リーグでは早々にフェルナンド・トーレスが交代させられ拗ねるというシーンがあったが、
おそらくはそれも戦略的な交代の一環だろう。
だからこそフェルナンド・トーレスは決勝でスーパーゴールを決められたのだ。
とまでは言い過ぎかもしれないが(笑)、どこかで戦略的な交代である旨の説明は受け、
それをフェルナンド・トーレスは理解できたのだろう。
だから最後までコンディションもモチベーションも落とすことなく戦えたのだ。
総括といいながらスペインの話ばかりになってしまった(笑)
スペイン好きだからこうなってしまうのは致し方ないのだが、もちろんそれだけではない。
このスペインほどの好例はなかなか無いのだ。
WCやユーロのように、短期決戦で全6〜7試合を戦うにあたり、
如何に勝つべきかを体現してくれるチームは。
優勝するための必要条件を列挙してみればいい。
ざっとこんなものだろう。
・メンバーの充実
・戦術の充実
・戦略の充実
・組み合わせ
・運
全てに於いてスペインが有しており、しかもどの国よりも秀でていたものである。
上の三つはそれぞれに絡み合っているのは説明するまでもないだろう。
それぞれの詳細は既に述べた。
下二つもそれなりに絡み合っている。
組み合わせの抽選は運以外の何ものでも無いはずだ。たぶん。
どこも強豪揃いのユーロだから一次リーグの組み合わせにさほどの差はないといえば無いのだが、
オランダのようにイタリアやフランスといきなり戦っていたら
ここまでコンディションが維持できたかどうか判らない。
スペインにとって一番戦いやすいロシアが初戦というのも大きい。
三戦目でカウンターフットボールの権化・ギリシャと戦って
その後で元祖カウンターなイタリアと戦ったというのも大きい。
控えの選手がカウンターに遭わずギリシャを下せたのだ。
カウンターの被害に遭わないよう、細心の注意と調整が可能になった。
フランスがリーグ敗退で出てこなかったのも大きい。
トーナメントでのフランスはWCを見るまでもなく扱いにくい敵だ。
疲弊したオランダがエピゴーネンであるロシアに敗れ、
ロシアが準決勝の相手になったのもまた大きい。
こうやって見ると決勝までどうぞとレッドカーペットでも引いてあるかのような組み合わせである。
唯一危なかったのはイタリアだろう。
この試合は内容的にはイタリアのペースだった。
この試合、PKに入るまで、スペインの支配があったのはただ一つ、スペインのゴールだった。
失点しないこと、これだけは譲らなかった。それだけを頑なに守った。
しかしここで運を味方につけた。
PKはほぼ100%、運である。
どっちのサポーターの前でやるとか、
PKの巧い下手だとか、GKの優劣だとか、その辺はもうおまけ程度である。
運が良い方が勝ち上がる。それだけのものである。
そしてスペインには運があった。
こうやってみるとスペインは優勝するべくして優勝した、という感が強い。
スペインのための大会だった、と言われてもなるほど納得である。
後はこれをWCまで維持して欲しいのだが・・・・
スペインの事はまあこれぐらいにしておこう(笑)
また全体のことに話を戻そう。
一次リーグを突破した8チームを眺めてみると、総じて攻撃的なチームが多いことに気づく。
前回WCで無失点だったスイスや前回大会優勝のギリシャなどは姿を消した。
もちろんフランスも(笑)。
この季節としては比較的気温の低いスイス/オーストリアでの開催という条件にも依るのだろうが、
本大会では積極的にフォアチェックを行った、行えたチームが勝ち上がっている印象が強い。
従って中盤での攻防が増え、好きな人間にはたまらない展開の試合が多く観られた。
走らないフットボールより走るフットボールの方が面白いに決まってる。
ポンポン蹴るより中盤でグジャグジャやってる方が楽しいに決まってる。
準決勝の「Ole!」な楽しさがなんで解らないんだろうと不思議なぐらいである。
ニポーンな人々はこういうのを語ってくれないのでどうしようもないが。
やってる方はしんどいだろうが(笑)、中盤での攻防が増えると
トラップ一つパス一つ採っても緊張感が全然違うのである。
この点ではWCより面白い試合が多かったのは特筆しておきたい。
フォアチェックが厳しかった理由は積極的な理由だけではあるまい。
わしが常々言ってきたミドルシュートへの対策である。
中盤でのチェックがルーズになるとぶれ落ちるミドルが来る。
これは世界中で大流行なのである。
それに気づいてないのは・・・・もうやめとこう(笑)
ところが今回の公式球、ユーロパスはあまりその手の変化をしないようだ。
クリスチアーノ・ロナウドも落とせなかった。
わしを初め(爆)GKには喜ばしい限りである。
技術でなく、ボールの特性で揺れそれがゴールになる、というのは
ただ得点が入れば良いという視点ならともかく、競技の楽しさを損なうものとわしは思う。
あのシュートはGKにとって、DFにとって相当のストレスである。
相手チームにストレスを与えられるのはともかく、
ボールにストレスを与えられるのではたまったものではない。
ミドルシュートがWCに比べ目立たなかったのは、
対策を練ってフォアチェックを強くした各チームとボールの特性の変化(是正)、
そういうことが理由になるのだろう。
それにしてもゴール前のスピード感はもう極限かと言うほどに増している。
ポルディ→シュバのゴール然り、イニエスタ→シャビのゴール然り。
ニポーンのマスゴミには「シュート」と書かれてしまうほどのスピードのクロスに合わせるのだ。
単純且つ比較的スローなクロスは淘汰されていくのだろうか。
決勝のバラックのクロスがカシージャスに止められたように。
カシージャスでさえ零しそうになるほどギリギリのクロスなのである。
現時点ではあのセーブはファインセーブであるが、
近い将来当たり前のセーブになってしまいそうである。
鋭いスピードのクロスか、特別な変化を持つクロスか、
それともクローゼのようにGKの前に飛び出せるクロスか。
そういうものでないと通用しない時代が来るのだろうか。
こうしてみると密度の濃い大会であったな、と思う。
至極真っ当な内容と結果だったな、とも思う。
かなり示唆に富んだ大会でもあった。
スペインが勝ったこともあるが(笑)、
わしの中では相当上位にランクされる大会であった。
次のWCもこんな大会であらんことを。