2002年 ワールドカップ 一次リーグ
ドイツ-パラグアイ戦
なんという贅沢なカードだろう。
世界随一のGK二人を同時に観ることができるのである。
かたや名前の通り猿人の様な風貌(失礼m(_ _)m)とは対照的に
教科書とすら言える理論的な守備を誇るドイツのオリバー・カーン。
かたや攻守に渡りチームを支配かつ鼓舞しつつ
正確無比破壊力大なキックにより得点にからみ
自ら得点を挙げることすらあるパラグアイのホセ・ルイス・チラベルト。
稀代のGKを有する両国だけに、守備も強い。
ドイツは伝統をひたむきにman to man。
DFラインだけではなく、中盤からの チェック/ワンサイドカットも素晴らしい。
後方と連動する様は一つの機械を観るようである。
パラグアイの攻撃が淡白であったこともあり、
ピンチらしいピンチは皆無。
パラグアイの攻撃は二、三のパスを繋いで
ペナルティエリア外からシュートを放つものばかり。
裏に抜けることもほとんど無く、 オリバー・カーンは余裕綽々。
対するパラグアイはじっくりと人数をかけるmen to man。
ハーフウェイラインを過ぎてきた敵攻撃陣に対して
必ず一人が遅らせるようなポジションを取り、
スピードダウンしたところにもう一人が詰めて行く。
その間にDFラインはFWを完全にマーク。
この日のドイツのアーリークロスは完全に封じ込められた。
足元のパスを繋がれ、シュートレンジに入ってきても
二人三人と距離を詰め、シュートコースを消す動き。
シュートを撃たれても躰を投げ出す献身的な守備。
速攻以外ではそうそう失点するシステムではない。
ゆったりとした膠着状態が80分まで続く。
おそらく、パラグアイは延長での一発勝負=ゴールデンゴールもしくは
PK戦を狙ったのだろう、一試合を通じて無理はしなかった。
対するドイツは残り10分に賭けた。
やや前のめりに攻撃陣を増やす。
ヘディングされたボールが右サイドのフリースペースに落ちる。
シュナイダーが走り、クロス。
ノイビルはおそらくこの日一度きりのフリーに。
一瞬の隙。
献身的な守備を見せてきたパラグアイDFに痛恨の隙。
マークを外したノイビルはニアサイドにボレー。
あの距離で、シュートコースが限定されていなければ、
GKは触ることすらできないだろう。
どんな名手であろうと。
パラグアイはクエバスを投入するも、
このままタイムアップ。
設定した勝負所の違いが、明暗を分けた。
ドイツは比較的楽に勝利したように見えるかもしれない。
しかしその実、ギリギリの判断が勝敗を分けたのだ。
一発勝負のゴールデンゴールになれば、 どうなったか判らない。
PK戦になれば、なおさら判らない。
ならばまだ判断のつく処で、とでも考えたのか。
ここまでの処、実力も運もドイツにはあるようだ。
このまま上に上がっていく可能性は相当高いと思わせる試合だった。