Beatnik Tour 2001

at Hiroshima

2001.6.2

 

 

ちんぴら

ダイナマイトが150屯

きんぽうげ

フェアリー

眩暈のSummer Breeze

シーズン ナイトウェイブ

ビューティフルエネルギー

BLUE LETTER

テレフォン・ノイローゼ

円舞曲

安奈

裏切りの街角

LADY

嵐の季節

氷のくちびる

翼あるもの

漂泊者(アウトロー)

 

HERO

観覧車'82

 

破れたハートを売り物に

100万$ナイト

 

 

 

  ちんぴら

 演奏が始まった瞬間、それと判るフレーズ。

きんぽうげでもキラーストリートでも、ブライトンロックでもない。

一郎はいつも通りの笑顔でビブラート。

ほぼ全員がサングラスをかけての演奏。  

 ダイナマイトが150屯 

 躰に響くリズム。自然と躰が踊り出す。 いつものマイク・アクション。

一郎はもう腕をぶん回している。 勢いもん二連発。

もう汗が噴き出してきた。 ベースに乗せられた。 いいリズムだった。  

 きんぽうげ  

 大森さんのいないきんぽうげ。 瞬間、頭が冷静になろうとする。

しかし瞬時に佐藤英二のリードにのめり込む。

躰を包むビートが、心地よい。

ドラムとパーカッションのリズムがまた変わっていた。  

  フェアリー  

 ライトがカラフルに変わる。 揺れるリズムが妙に気持ちいい。

波が寄せてくる様。 間奏のツイン・ギターも息ぴったり。  

  眩暈のSummer Breeze

 「夏の轍」の一曲目。 ゆったりとしたリズムに包まれた。

こういう、躰に直結するようなリズム感を新しいアルバムでは表現したいのだろうか。

  シーズン

 客席に向かい唄えと催促。 言われるまでもなく唄いまんがな、大将。

でもふっと痛みを感じて声が出なくなった。

代わりに心の汗が滴る。

なんでこう、来るかなあ(笑)  

 ナイトウェイブ  

 う〜ん。 ここんとこジョージのギターで泣かされてきたけど、

一郎のギターでも同じかあ・・・・ なんでじゃろ・・・・ 効くなあ・・・・・・  

  ビューティフルエネルギー  

 一旦甲斐さんはソデへ。 松藤さんがギターを抱えて出てくる。

ここでジャスミンでも演ったら面白いのに・・・ と思うがやはりここは定番。

一郎は自分のマイクを奪った甲斐さんに苦笑を向ける。

フルコーラス松藤さんのヴォーカルは初めて。

昔のライヴアルバムで聴くより、松藤さんの声は甘くなくなっていた。

  BLUE LETTER  

 これで海の唄5曲連発。 プロモーションきっちりやっとるがな(笑)。

この5曲は「夏の轍」への伏線と見た。

それはそうとして、前野さんのこの曲のキーボード、いいねえ。

胸の痛みを気持ちよく感じた。  

  テレフォン・ノイローゼ  

 ギター一本にてプチmy name is KAI(笑)。

間奏はサービスたっぷり。 デケデケデケデケ・・・・・・

相変わらず客席のリズムは迷いっ放し(爆)   

  円舞曲  

 崩れたブルースブラザースと(爆)。

これは生では初めてじゃね。

最後の円舞曲・・・・

明るい曲調なのに、 重いし、怖いんよね。  

  安奈  

 大森信和登場!!

アコギを抱えて、懐かしいフレーズを弾く。

決して巧いギタリストではないけど、その音は暖かくて切ない。

ステージの雰囲気ががらりと変わった。   

  裏切りの街角

 切なく、忘れそうな感情を思い起こす。

幾度となくこの曲を聴いたが、初めて泣いた。

松藤さんの刻むリズムが、胸に滲みた。  

  LADY

 こんな感情をどうやれば伝えられるのだろう。

胸の中にある言葉に出来ない感情を。

中にあるもどかしさをステージが包み込む。

大森さんのチョーキングが胸を掻きむしった。  

  嵐の季節  

 リズムが以前と変わったような気もするが、

正確には憶えてないので 誰か教えてください(笑)。

リズムが妙に心地よく、ふわりと包まれたような気分だった。

陳腐な言い方ではあるが、やはりこの曲を聴くと頑張ろうって思うよね。

日々の生活も、仕事も。   

  氷のくちびる  

 全員のテンションが凄まじかった。

わしは宇宙戦艦ヤマトの波動砲でぶち抜かれたような気分でした。

例え悪いけど、どう言えばいいのか判らない。

元々好きな曲ではあるけど、こんなテンションは、感じた事がない。

もう、凄まじいの一言。  

  翼あるもの  

 これはもう、大森さんと一郎の間奏で決まり。

もう、最高。     

  漂泊者(アウトロー)  

 KAI FIVEからソロにかけて、16ビートでこれ演ってたけど、

今回はまた別の16だったように思う。

明らかに16を叩いている訳ではなかったと思うけど、

わしの躰は16で踊ってました。

自然と。

しかも、気持ち良く。   

  

 

  HERO  

 甲斐バンド・ヴァージョンというのかな、これは。

懐かしいような新しいような・・・でも全然古くない。

今のわしの気分には、もう完全にマッチ。

勢いとか、疾走感っていうのは絶対に捨てたくないもんね。  

  観覧車'82  

 間奏の一郎のギターが絶品。 切なさがこみ上げてくる。

こういう感情って言葉にできんのんよね。

簡単に伝えられたらいいのになあ・・・・

ってことなんよ、えりちゃん(爆)  

  破れたハートを売り物に  

 テープ。これが甲斐バンドといえば、甲斐バンド。

いつものように大森さんは後ろに控える。

独りで彷徨う痛みを忘れがちな自分に気づく。

もう、ない方がいい。   

  100万$ナイト  

 ミラーボール。

 シャウト。

 チョーキング。

 瞬間、幻想の中にいた。  

 

 

 

 

 

 

 なんだろうね、この後味は。

う〜ん、言葉にするのが難しい・・・・・・・

今回はね、あまり理屈で語れない部分が大きすぎるんよね。

 語弊を恐れずに正直に言えば、Big Nightで観た甲斐バンドとは全然違うって思う。

飛天で観たのともまた違う。

Big Nightとか飛天はね、なんかね・・・・

こう、精錬されたというか、 型に填ったというか、

窮屈なっていうか、機械的っていうか、 適当な言葉が出てこんけど、そんな感じ。

あくまでも比較的、なんじゃけど。

 それに別にジョージやメッケンが無機的っていうのでは無いんで

誤解して欲しくないんじゃけど。

 メンバーだけの問題じゃなくてね、うん。

飛天のレポで、集合っていうキーワードで書いたこともあるけど、

それどころじゃないものを感じたね、うん。

 集合体ではあるんじゃけど、今回のとは全然違う。

塊まり方が違うって感じなんかなあ・・・・

とにかく、より有機的、むしろ生々しいっていう方が当たりかなあ。

甲斐バンドっていう一つの生物じゃったよね。

これは「いきもの」でも「なまもの」でもええんじゃけど(笑)。  

 リズムなんか、こう言うたら怒られるかも知れないけど揺れまくりじゃしね。

ただみんなそれを解った上でね、合わすのか合うのか判らんけど、

完全に渾然一体となっとるもんね。

それを楽しんでプレイするのがビシビシ伝わって来たよ。うん。

 甲斐さんがね、言ったでしょ。

「みんなが楽」って。

あれは完全にキーワードなんじゃけど、それを言葉でって・・・・

難しいよ、 この屁理屈こきのわしですら(笑)。  

 完全に書きながら考えとるんで、このままじゃレポートじゃないねぇ。

感想文だわ、ほんまの(笑)。

いや、いつも感想文なんじゃけどね、本質的には(苦笑)。  

 しかしここは一つ、やたら格好良すぎるオヤジ達に敬意を表して、

いつもの文体に戻しましょう。

 

 どこまで理屈になるものやら・・・・・・・・・  

 

 まず今回のキーワードは先にも言ったように、

「楽」と考える。

もちろん純然たる「楽」、安楽の楽という側面がある事に疑いはない。

定番と呼ばれるような曲がその大半であったのは事実である。

幾度となく演ってきた曲達である。

演奏する事自体は元より、ライヴへのリアレンジも

さして難しいことではあるまい。

基本とその応用編、という意味では上に挙げた両者は確かに

「楽」そのものだろう。

まして長らくサポートメンバー、というよりむしろ、

「甲斐バンド」の一員であったと言ってもいい佐藤英二がそこにいるのだ。

安心感という面でも「楽」であった部分もあるだろう。

 もう一つ、これも甲斐よしひろ自身が言った、

「楽しいっていう意味もあるんだから」

である。 ステージ上も、それを観る者も楽しみ易い様に、

入り込み易い様に、定番曲を多く取り上げたのではないか。

異論はあるだろうが、やはり定番曲になるとどよめきを起こす客席なのだ。

大多数の者は素直にそれを喜んでいるのだ。

そして演奏する側も、確実にこなせる曲、できあがった曲を演奏する方が

おっかなびっくり演奏するよりも楽しいだろう。

そのような演奏する側の楽しさをも伝えるスタイルは、

一貫して変わることのない甲斐よしひろ、

そして甲斐バンドのスタイルである。  

 つまり、「楽」で「楽しい」ライヴだった訳だ。

本当に楽しいライヴだった。

楽しませてくれたメンバー、スタッフに感謝してこの稿を終わらせたい。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筈がないっ。

 

 

これで終わりと思って貰ったら困りますよお客さん。

そんなものだけで終わるぐらいなら、

わしは最初っから こんなもの書きません。

広島まで行った甲斐もない。

まして大阪もなんとか行こうと画策することもない。

あの体感が、たったこれだけの文章で済ませられる筈もない。

あの感覚は、なんだったのだ。

 「楽」の裏側にあるものをわしは書こうとしているのである。  

 

 以前、上岡龍太郎との会話で甲斐よしひろはこう言ったことがある。

「とにかく楽に、というのが自分のスタイルである」

という上岡氏に対する言葉である。

例によって正確に記憶しているわけではないので

その意を述べるに留まることは ご容赦願いたいが、それは次のようである。

「『楽』っていうその裏側には、

ヒリヒリするような緊張感が必要になるだろう」と。

もちろんこれは上岡氏の言葉を肯定的に捉えた上での発言であるが、

「楽」である為には、ある種の緊張感を必要とすると述べているのだ。

 翻って、あのステージを思い起こしてみたい。

否定的な意味合いでの緊張感はなかったと言い切ろう。

手足が縮こまるような、息を詰めるような緊張感はなかった。

たとえアーティスト達が実際にそのような緊張感を持っていたとしても、

少なくともわしには伝わっては来なかった。

ならば、肯定的な意味合いでのそれはどうか。

独特のビブラートをストラトから奏でた田中一郎、

アクセントの効いたドラムと絶妙のハーモニーの松藤英男、

途中出場ながら泣きのチョーキングをかませた大森信和、

音程が外れるほど叫び続けた甲斐よしひろ。

彼らのどこに緊張があったか。

 わし自身に伝わってきたものは。

わしを包み込もうとする圧倒的な迫力だった。

わしを包む様に打ち抜き、微塵と化すようなエナジィだった。

それは甲斐バンドの内部組織として等身大以上の力を見せようとする

彼らそれぞれから発せられたものだと信じる。

彼ら自身の味を最大限に見せようとする、

膨張に伴う緊張感ではなかったか。

限界まで膨らんだ風船のような緊張感ではなかったか。

 リラックスした精神状態と肉体に、

集中力という緊張感を張り詰めていたのではないか。

それらが甲斐バンドとして一塊となり得た時。

そしてそれが炸裂した時。 

  観客は爆風にも似た衝撃、勢いを感じたのではないか。

凄まじいまでの迫力に包まれたのではないか。

Big Nightや飛天とは違うと書いた。

わしが言いたいのは正にこの迫力、衝撃である。

 思うに。 Big Nightや飛天での甲斐バンドは、

この迫力を見せようというものではなかった。

あくまで甲斐バンドという集合体による演奏を見せたのではないか。

Beatnik Tourでは。

甲斐バンドという集合体が持ち、放ちうる迫力やエナジィは

どれほどのものなのか、 それを示したかったのではないか。

自分達の持つ力、またはそれ以上のものを

見せようとしたのではないだろうか。

 

 

 およそ大人のやる事ではない。

自分の力を誇示するような真似を大人がするものではない。

等身大、もしくはそれより小さい自分をを見せようとするのが、

良くも悪くも大人、である。

それを敢えて、いきがり、勢い、迫力、衝撃、

そしてそれに伴う緊張感を見せたのだ。

50近いオヤジ達が、である。  

 

 しかし彼らがこれを自覚的にやっている事は明白である。

大人になれない者。

自分の力を誇示しようといきがる者。

力尽くで物事を押し進める者。

勢いと衝動で動く者。

これらを呼ぶ三人称をなんと呼ぶか。

その答えはもちろん、一曲目に演奏された曲にある。

 

 「ちんぴら」である。

 

 これを一曲目に持ってきたのは、意表を突いただけではなく、

甲斐バンドの持つ迫力や勢いを表現するのだという宣言そのものであろう。

御丁寧にいきがりの象徴、サングラスをほぼ全員が付けて。  

 

 まだある。 甲斐バンド名義の楽曲の中で、

勢いとか、疾走感とかいう言葉で表現される曲といえばもうお解りだろう。

 

 「HERO」である。

 

 アンコールの一曲目が、これなのである。

甲斐バンドの勢いを知らしめたこの曲が、

この場所で演奏されているのである。

大人げない自分達の勢いを見せつけるため、

というのは穿ち過ぎた考えだろうか。

過大評価し過ぎだろうか。

 

 しかし。

こんな事でも言わなければ、わしが感じた衝撃と迫力は表現できない。

ここまで書いてもなお、わしはわしを包み込んだ爆風を表現し得ていない。

 

 

 わしは自分の感性を信じて言い切ろう。

 

 

 

甲斐バンドは自らの

勢いと力を見せつけるために

このBeatnik Tourを

行っているのだ。

 

to KAI Lives