ユーロ2012 SemiFinal スペイン-ポルトガル
いよいよ準決勝。
ここまで左に張ったままでは仕事をさせてもらえてないCロナウドがどう動くのか、それに連動してポルトガルはどう攻めるのか、またスペインはCロナウドをどう抑え込むのか、Cロナウドのポジションチェンジにどう対応するのか。これが興味の第一点。
第二にはスペインはポルトガルの堅い守りへどうアプローチするのか。
ネグレド先発はその答えなのか。
前半。
ポルトガルは前に出る。最初にかますつもりか。右サイドからのCKを直接狙うがカシージャスは軽くフィスティング。
ポルトガルのラインは高い。この勇気がどう出るか。
3分、シルバからネグレドへ裏。浅いラインにはこれが第一だろう。
スペインはパスワークが緩い。ポルトガルのプレスが強いのもあるが、慎重に回す。
8分、スペインが左サイドを抉る。ポルトガルは最終ラインに4~5枚。5枚になった時は中盤にスペースが産まれる。これは逆に危険かもしれない。アルベロアのシュートは浮く。
10分までCロナウドに見せ場無し。一度中央に入る。
12分、左サイドに出るが縦にしか走れない。クロスはカシージャス。
14分、右サイドのアルベロアへスプレッド。フォローがない。
15分、Cロナウドが縦に抜ける。やはり中には切れ込めない。ファウル。壁。
スペインはもう一つ繋がない。簡単に攻めている印象。
ネグレドはもう一つパスワークに絡んでいない。
ポルトガルは中盤の絞り具合がいい。4-2-2、4-1-2-1と中盤を組み替えつつ守る。中盤でのキープが今ひとつなのはこの辺のゾーンの作り方による。プレスは最初のかましではない。これを継続して行くつもりのようだ。
28分、右サイドのネグレドへスプレッド、キープして粘る。シルバを介し逆サイド、イニエスタのシュートは浮く。
30分、こぼれ球をダイレクトで右にポジションを取ったCロナウドへ。シュートはわずかに右。
ポルトガルのプレスはここまで効いている。果たしてこれがフルタイム保つか。
37分、ネグレドの右への動きにスペース。そこへシルバが入り込んで受ける。スルーパスは合わず。
前半はポルトガルのプレスが奏功。スペインは抑え気味なのか、苦しんでいるのか。攻めにかかる人数を見るにつけ前者と思える。ポルトガルの足が少しでも止まればその時には出てくるだろう。ポルトガルはこのペースを続けるだけではいけない。Cロナウドは左サイドで受けれない。スペインはアルベロアが上がってもCロナウドにスペースもパスコースもほとんど与えていない。アルベロアはコエントラン、Cロナウドに対峙しつつも攻撃に顔を出している。コエントランとCロナウドがいる、左サイドで、である。これが効き続ければポルトガルはCロナウドを囮にしか使えないだろう。ネグレドはチャンスメイクには表面上絡んではいないが、DFラインを広げるスペーサーとしては効いている。このスペースを作り続けられればポルトガルに綻びが生じるだろう。
後半。
スペインはまだ緩い。
Bアウベスはネグレドに激しい。
スペインはパスを回すもDF前のスペースに入り込まない。これが故意かどうか。
5分、簡単に右サイドからクロス。CK。ペペとBアウベスがいるポルトガルにCKでのスペインの得点は難しいだろう。
8分、ネグレドをセスクへ。ポゼッションを奪い返すためか。DF前のスペースを使いに行くつもりだろう。スペインは攻撃に人を増やし始める。
11分、Cロナウドへのコースを消すアルベロア。自由にならない。
13分、Cロナウドは中央に入ってHアウメイダが左へ。シュートは逸れる。この展開を形にしなければポルトガルの勝機は薄い。
直後にはCロナウドは右サイドから切れ込む。セルヒオラモスが対応。
シルバをJナバスへ。
まだCロナウドは右にポジション。
18分、セスクが左でキープ。下げて抜け出るところにJペレイラの手。
20分、セスクのポジショニングにポルトガルの中盤が下がり始める。スペインのポゼッションが息をし始めた。
22分シャビがドリブル、シュート。他に二つ選択肢はあったが。
25分、中に入ったCロナウドにボールが出る。ファウル。いい位置でのFK。これはCロナウドが狙うだろう。わずかに上。
35分、Hアウメイダ→Nオリベイラへ。
36分、初めてCロナウドが左サイドで前を向く。ファウル。FK。アルベロアハンド。前にずれて再度。浮く。
40分、シャビ→ペドロ。
44分、FK。カウンターでCロナウドへ。浮く。初戦を思い出すような展開。
47分、Mベローゾにも黄色。
タイムアップ。
中盤の鬩ぎ合いに終始したゲームだったが、スペインは慎重に過ぎるか。これでPKに入ればポルトガル有利だろう。スペインは延長で得点を挙げた方が良い。ポルトガルは果たしてCロナウドにチャンスが来るか。
延長。
早々にJナバスからクロス。合わない。直後には左からクロスはカット。
緊張感を持続させたまま試合は進む。
ポルトガルのファウルが増える。
カードは避けたい。
7分、高い位置で奪ってCロナウド。切れ込む動きにピケが反応。
10分、右サイドを使ってCK。
ポルトガルの足が止まる。
スペインが迫る。Jアルバがドリブルでペナへ。短いクロス。イニエスタシュート。ルイパトリシオが弾く。スペイン初のShot on goal。
終了直前のFK。セルヒオラモスがわずかに外す。
スペインはじわりとゴールに迫っている。ポルトガルは凌ぎきれるか。
延長後半。
Mベローゾをクストディオへ。
1分モウチーニョが高い位置で奪ってクロスにセルヒオラモス。Cロナウドからは絶対に目を離さない。
4分、スペインキープからセスクのミドル。DFに当たる。
5分、Jナバスからアルベロア、Jナバスに戻してシュート。弾くもペペに当たりルイパトリシオキャッチ。
7分、Rメイレレスをバレラへ。Rメイレレスはゆっくりと交代。凌いでPKに持ち込むつもりだろう。
8分、ペドロが裏に抜けるがコエントランが逆サイドからカバー。
11分Jアルバとイニエスタのパス交換でイニエスタが抜け出すもオフサイド。
13分、ペドロが切れ込む。シュートには至らない。
14分、Jナバスのクロスも合わず。
終了。
PK。
両者とも一人目がStop。
4人目。Bアウベスがバーを叩く。
Cロナウドは5人目か。
スペイン5人目、セスクがポストに当てながら逆のサイドネットに突き刺さるシュート。決まった。
CロナウドがPKを蹴らずに決まってしまった事が、この試合の象徴だった。それほどにCロナウドはこの試合の大部分で消されていた。スペインはこれに腐心したがためにスペクタクルな内容とはなり得なかった。それは致し方あるまい。Cロナウド同様にシャビはこの試合から消えていた。攻守のコンダクターであるシャビがブスケツとともにCロナウドへのパスコースを徹底的に消しにかかり、守備に偏重したために、スペインはサイドからしか攻め上がれなかった。シャビが前に出るよりもCロナウド、コエントランと対峙するアルベロアが前に出た方がリスクが少なかったのだ。シャビが交代するまで、Cロナウドは左サイドで前を向けなかったのだから。書くのは簡単だが、相当勇気のいる戦術であり、実現するのもまた困難な方策である。アルベロアが前に出る事は則ちCロナウドにスペースを与える事である。万一通ればほぼ失点である。なのにスペースを与えるよりコースを切る事を選択したのだ。そして結果的に、これが大正解だったのだ。こうして考えてみるとスペインの交代は非常に論理的である。DF-MF間のスペースで前を向いてキープできるセスクを投入し、中盤の守備にプレッシャーをかけ、ポルトガルのDFラインを下げる。当然コエントランのポジションも下がる。次にサイドアタッカーのヘスス・ナバスを投入。これで元々アルベロアが前に出ていた事もありコエントランの上がりは更に抑制された。その上でシャビをペドロに交代。間延びした上にコエントランが上がって来れなければ万一Cロナウドに出ても人数をかける事ができる。シャビの交替後にやっと前を向いてボールを持てたCロナウドであったが、結局二枚三枚の壁に対峙するしか無かった。
対するポルトガルの守備も賞賛に値する。少なくとも前半の中盤の守備は素晴らしかった。中盤の四人でBoxを作ったり、一列に並んでみたり、臨機応変且つ適切にポジションを取り、ネグレドがDFラインを揺らしてもさほどの効果を与えなかった。もちろんこの点で留意すべきはシャビが攻撃にあまり参加できなかった事にもある。後一枚、そんなじれったいスペインの攻撃が続いたのは先に挙げた理由にもよる。シャビもブスケツもCロナウドに腐心していたためだ。いずれにしろ、前半はほぼ完璧にポルトガルはDF-MF間のスペースを抑え込んだ。足が止まり始めると今度はMFのラインを下げDFとの間のスペースを狭めスペインに自由を与えなかった。結果スペインはサイドからの攻撃に終始せざるを得ず、チャンスらしいチャンスは得られなかった。そして前からプレスは攻撃面でも効果的だった。じっくり運ぶ事が難しければ速攻を仕掛ければ良い。そしてそれはゴールに近い方が良い。ポゼッション能力で劣る以上、こうして仕掛けなければ攻めようが無かったろう。
現代の潮流、というか最近の運の流れは、より積極的、攻撃的な方に向くと何度もこじつけてきた。いずれも守備的ではあったが、またいずれも積極的な守備であった事に相違ない。傍目にはポルトガルの方が積極的に見えただろう。事実、わしもそう思った。だからPKはポルトガル有利だと思い、そう書いた。しかし時間を置いて考えてみれば、スペインも負けず劣らず積極的な守備を行っていたのである。繰り返すが、クリスチアーノ・ロナウドにスペースを与えていたのである。もしかするとCロナウドよりもコエントランを恐れていたのかもしれない。ここまでの4試合でコエントランの攻撃参加は非常に効果的だった。コエントランが上がってCロナウドにスペースを与える、これを絶対にさせないための守備、そしてアルベロアの攻撃参加だったのだとすると、これ以上にない積極的な守備ということになりはすまいか。
いずれにしろ、どちらも攻撃と守備のバランスをとり、攻撃のための守備、守備のための攻撃を繰り出したのだ。同じスコアレスでもイタリア-イングランドとは比べ物にならない面白さだった。
不運を嘆くCロナウドは正しい。どちらもベストを尽くし合った。PKはどちらにころんでも不思議は無かった。CロナウドがPKを決めていたら、ポルトガルは勝っていただろう。なんの根拠も無いが、そのぐらい運に左右された結果だったように思う。
果たしてスペインは決勝でどのように戦うのか。守備を念頭に置いてくるのは間違いないが、今度はどう仕掛けてくるのか。楽しみである。