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ユーロ2012 一次リーグ デンマーク-ポルトガル


わしの興味は本当のデンマークを観る事、そしてクリスチアーノ・ロナウドをデンマークがどう抑えるか、である。


開始から10分、クリスチアーノ・ロナウドにはボランチで最大限のチェック。

パスコースは空けず、パスが出そうになるとマンツー気味に寄って行く。

これではいかなクリスチアーノ・ロナウドでもパスはもらえない。囮になるのが最も容易な展開にも思えるが。

11分、中央でクリスチアーノ・ロナウド受ける。持ち込むも二枚の壁が聳え立つ。中央では持たせても可、なのか、空けてしまったのか。

にしてもデンマークの躍動的な前方へのボールの運び方はいい。観ていて気持ちがいい。98年のワールドカップでもこんな感じだった。わしはこれを期待していたのだ。というか、これがあるからニポーンがデンマークに勝てるなどとは到底思えなかったのだ。

19分ロングボールにポスティガ。クリスチアーノ・ロナウドに落とせない。苛つく。今日のクリスチアーノ・ロナウドは苛ついているように見える。

24分、CKからペペの頭。ニアサイドに刺さる。

これでデンマークはどう出るか。

ビハインドに焦りが出ると、WCの二の轍を踏む事になるが。

しかしデンマークはまだ焦らない。

じっくりと、しかし躍動感は変わらず前に運ぶ。

32分、左寄りで受けたクリスチアーノ・ロナウドが前を向く。チェックが緩い。加速。倒される。FK。壁。CKはアンデルセンがキャッチ。

35分、コエントランのクロスはクリア。ナニに渡る。低いクロスにポスティガ。防ぎようのないシュート。二点目。

デンマークはまだ浮き足立つ感じは無い。37分にはエリクセンのミドル。ルイパトリシオがキャッチ。

41分。左サイドからベントナーが逆サイドへ。ヤコブセンがキープする間にベントナーは中央へ。オフサイドのポジション。ヤコブセンが中に切れ込み巻くボールを左サイドへ。ベントナーは知らん顔。これではオフサイドは取れない。左サイドから折り返し。ベントナーは平気な顔でターンしてゴール前。無人のゴールへ。大胆かつ狡猾。わしはこういうデンマークが昔から好きなのである。

前半終了間際、じりじりとゴールに迫るデンマーク。開くと思えば中へ、ショートと思えばロング。ポルトガルの逆へ逆へ、そんな意識。無理に前に運ぶ事無く、DFラインでのパス回しも多い。これが実は布石であるとは。

前半が終わる。ポルトガルのリードではあるが、ゲームの支配はデンマークに見える。クリスチアーノ・ロナウドはほとんど参加できていない。ナニとポスティガにこの試合、そしてポルトガルの命運が懸かっている。


後半。

デンマークがボールを走らせる。

ポルトガルとしてはポゼッションにつきあうよりはカウンターを狙う方が良いだろう。とか思ってたら4分、右サイドから逆サイドにいたクリスチアーノ・ロナウドに渡る。ドフリー。アンデルセンに阻まれる。ポルトガルはじっくり守ってこの展開がベストと踏むだろう。

7分、ポルトガルがキープして右サイドからクロスをあげる。デンマークは我慢。焦ってはいない。

しかし9分、ミスパスからポスティガ。中途半端なドリブルはタックルに遭う。デンマークはこういうプレイに気をつけないと。ペースが崩れてしまう。

さらにロンメダール負傷。肉離れか。ミケルセンに交代。これがどう転ぶか。

16分、左サイドから中に入ったベントナーが右のスペースへ。この展開は効果的。クロスがこぼれてクレストがダイレクトでミドル。逸れる。ミケルセンも躍動的に前に進む。

ポスティガはネルソン・オリベイラに交代。

20分を過ぎてクリスチアーノ・ロナウドがなんどかドリブルを仕掛けるがスピードに乗れない。ピッチコンディションの影響か、自身のコンディションか。そのための苛立か。

26分、ロングボールがベントナーへ。独りで持ち込みシュートまで。外す。ベントナーはこれもできるのが強みだ。

28分、クリスチアーノ・ロナウドがサイドをドリブル。切れ込めない。

残り15分。デンマークは攻撃への人数を増やし始める。右サイドから左へ。ハンド。FKはいやらしいボール。ルイパトリシオがはじき返す。ここからポルトガルのカウンター。ナニからクリスチアーノ・ロナウドへ。まさかのシュートミス。

直後の35分、中央でキープ。後ろに下げてキープを繰り返して来たデンマークにポルトガルが釣られる。ターンして右へ。クロス。ゴールを横切ってベントナー。強い。ヘディングが決まる。同点。

ポルトガルは勝たなくてはならない。前に出る。FKは難しいボールだがアンデルセンキャッチ。

38分、スルーパスがクリスチアーノ・ロナウドへ。二人が追いすがる。シュートは力が無い。

39分、コエントランが上がる。CK。バレラ頑張る。またCK。クリスチアーノ・ロナウドはゴール前で合わない。

コエントランは上がりっ放し。クロス。空振りするバレラ。しかしちょうどいい場所にボールが落ちる。振り向き様。突き刺さる。ルイパトリシオはベタ読みでなければ止められないシュート。ディフェンダーがもう半歩左に寄れていれば。わずかな隙間を突いた。

デンマークはアッガーを上げパワープレイに走るが跳ね返される。タイムアップ。


クリスチアーノ・ロナウドが機能しなかったポルトガルではあったが、決めるべきところを決められた事は大きかった。全て簡単なゴールではない。前試合はその意味で「アンフェア」と宣ったクリスチアーノ・ロナウドではあったが、この点で逆にポルトガルにはツキがあった。引き分けで良い、そんな戦い方を徹底したデンマークは、その分ツキに見放されたか。前回大会からの傾向はまだ続いている(断言)。

わしとしてはやや残念な結果だったが、デンマークはやはり強い。二点とも狡猾な点の取り方だった。一点目はオフサイド崩し、二点目はチームで作り上げたフェイントからの展開。随所に見せたダイナミックな展開もすばらしい。観ていて爽快な攻撃なのだ。わしはこういう、頭も躰も使って見せるフットボールが好きなのだ。

しかし思っていたよりもクリスチアーノ・ロナウドへのチェック、パスコースのカットは甘かった。クリスチアーノ・ロナウドが普通でさえあればもう一点や二点は取られていても不思議は無い。この程度の守備であれば、ドイツは易々と崩してしまうだろう。ドイツは狡猾という点でも頭脳的という点でも、同等以上の力を持っている。ついでに性格の悪さという点では追随を許さない。この敗戦でデンマークはドイツ相手に勝ちに行かなくてはならないのだ。わしは98年のブラジル戦のような展開を是非見てみたい。守って守りきれる相手ではないのだから。デンマークとドイツの打ち合いが観られれば幸せである。......そうなったらデンマークの負けじゃんとかツッコまない事。