ワールドカップ2010 準決勝 ドイツースペイン
穏やかな立ち上がり。
カシージャスのワンミスで試合が決まってしまうという言の通り、お互いに慎重過ぎる出だしである。
スペインはひたすらドイツDF裏へのスルーパスを狙うがほとんど読み切っており通さないドイツ。
万が一通ってもいつもより深めのラインは誰かがカバーに入れる状態である。
ドイツは前述の通りラインを下げ、スペインのポゼッションにはつき合わない構えである。
最初からポゼッションを争うと体力が保たないとの判断であろう。
勿論、従来通りの準決勝の戦い方でもある。
準決勝に於けるドイツは後半半ば過ぎまでは穏やかに過ごすのである。
そして最後の20分 に爆発させる勝ち方がパターンなのである。
果たして前半、ビジャの飛び出しがあったぐらいで穏やかに過ぎて行く。
ドイツはスペインの浅いラインの裏を狙おうともせず、カプテビラやセルヒオ・ラモスの裏のスペースも狙わない。
スペインに持たせてスペースをしっかり作り、狙う時期が来たら、という考えであろう。
瞬時に前半が終わる。
後半に入り、スペインがやや前のめりになってきた。 ドイツはまだつき合おうとしない。
培ってきた伝統的な戦略に任せたのか。
20分を過ぎた。
ここまで攻撃にかける人数はせいぜいが5人だったところに6人目、7人目が入り込んでくるドイツ。
サイドのスペースもしっかり作れてきている。
エジル、ポルディと繋ぎ、クローゼを飛び越えてク ロース。
甘いシュートだった。攻撃に転じるという狼煙は上がった。
しかし。
この大会の神は無慈悲である。
ここまで攻撃的な試合を続け、この試合に限りポゼッションを許したドイツにそっぽを向いた。
CKからプジョルのヘッド。所属チームの同僚でもあるピケを押しのけてのヘッド。
ドイツゴールに突き刺さる。
ゴールから離れて立つプジョルへのマンマークはいなかった。
一瞬の隙。
僅かな、ほんの僅かな綻び。
一時間以上かけて作ったスペースが消えて行く。
ラインを下げるスペイン。
中盤のラインも厚みを持たせる。
マリオ・ゴメス投入も形にならない。
シュバインシュタイガーがワンツーから抜け出そうと するがプジョルがここでも体を張る。
ポゼッションに勝るスペインは時間をどんどん経過さ せて行く。
あっさりと、タイムアップ。
ニュース記事に於いては、いつまで経ってもボールの支配とゲームの支配が同義であるようだ。
スペインが先制して勝ったからスペインの完勝に見えた試合なのであり、
逆にドイツが先制していればドイツの完勝というべき内容だったのだ。
しかもドイツの守備が崩れてるとは・・・・
あれで崩れてるならニポーンはどう表現すれば良いの だ。
わしの国語力で表現できないのは間違いない。
正しくは、ゲームの支配は五分五分、むしろプラン通 りと言う意味では失点まではドイツの支配であったのだ。
得点からのゲームの支配は確かにスペインだろう。
それまでは、ボールの支配はスペインでもゲームの支配はドイツだったのだ。
ワンチャンスをものにしたかどうか、それだけが違った。
返す返すも得点のタイミングはスペインにとって最高だった。
ドイツにとっては最悪だった。
折角作ったスペースが霧散してしまい、攻撃の手管がなくなってしまった。
その場合まで想定して戦術を練らなければならなかったのか。
そんな事ができるチームがこの世に存在するのか。
強いて言うならば、あのCKは絶対に守らなければならなかったのだろう。
全員が引いてマンマークを全員につけるべきだったのかもしれない。
その上で攻め直す、そう考えるべきだったのかもしれない。
しかし攻撃の狼煙は上がっていたのだ。
非常に難しい判断、タイミングだった。
最初から、せめて後半開始からドイツは攻めるべきだったのか。
しかし仮に先制できたとしても、疲労は隠しようがない。
足が止まるとポゼッションに勝る相手、しかもそれがスペインでは守りきれる保証はない。
むしろ逆転される保証があるとすら思える。
更にスペインの守備は、カウンターを易々と許すような甘いものではない。
断じてない。
これまでとの相手とはレベルが違うのだ。
イングランドやアルゼンチンとは違うのだ。
こう考えてみれば、スペインとの準決勝であれば、これがベストな戦術であったという結論にはなるのだろう。
ベストを選択しても負けた、という点で見れば、完敗と言われても仕方がないのかも知れない。
まあ個人的意見、一ファンの意見として言えば、とことん攻撃的な展開を観てみたかったし、そこにも勝利への一縷の望みを感じているのではあるが、ワールドカップの準決勝でそんな後先考えない試合などできる筈もないだろう。
対してスペインは、ここまでの試合よりも攻撃的な意 識が強かったように思える。
フェルナンド・トーレスをスタメンから外した事もあるのだろうが、
カウンターを怖がらず(無論最大限にケアしながら)人をかけて攻め、
その結果CKを得、更には得点を挙げたのだ。
先に攻撃に転じ、ドイツが攻めてきても人をかけて前に出た、その自信と勇気。
ここに結果が付いてきたのだと思う。
確かにスペインのポゼッション能力はずば抜けている。
この点だけはドイツより、いや他の出場国全てと比較してもずば抜けている。
パスサッカーとか訳の判らない標語を某国(亡国?)の中継ではがなり立てているが、一人一人のキープ能力が高いのが大前提であり、持って良し出して良し受けて良しだからポゼッションで優位に立てるし、チャンスメイクも簡単にやっているように見えるのである。
ここに攻撃的な意識がより強く表れたのだ。
これまでの試合、格下相手との戦いよりむしろ、同格もしくはそれ以上のドイツとの試合に於いて。
プジョルのシュートは、その象徴であったように思える。
その攻撃的意識、気迫を体現していたのだ。
結局この大会は、ここに帰結すると確信してきた (笑)
攻撃的に戦おうとする方に、勝利が転がり込むのだ。
そうであれば。ドイツは早めに攻撃に転じるべきだったのかもしれない。
危険すぎる賭けに。