第3回 クラブワールドカップ決勝
ACミラン-ボカ・ジュニオールズ戦
本年最初で最後のレポートである(笑)
03年TOYOTA CUPの再現となったこのゲーム。
ミラン雪辱なるか、それとも返り討ちに遭うか。
わしはボカJが以前と同じような美しい守備が出来ればボカJの優位は覆らないと想っていた。
昨年、インテルナシオナルがロナウジーニョを封じ込めたように、 カカを封じ込められるかどうか。
ミランもバルサに類似したシステムだ。
インテルエピゴーネンでも十分に対応可能だろうし、
ましてアルゼンチンの守備の堅さはイタリアに勝るとも劣らない。
美しき守備を楽しみにTV前に陣取る。
開始早々ミランはプレス。
前回同様のかましかよと苦笑しそうになった瞬間、わしは目を見張った。
ボカJもわたわたとボールに群がる。
しかもコースの切り方が甘い・・・・
ニポーンダイヒョーの監督さんはボカJの守備を参考にしたいと宣い、
おおたまには正しいことも言うとるがなと想っていたのだが、
このプレスを参考にしてはならない。
加茂よりはましなプレスだが、トルシエには劣る。
局地的に数は多いが、プレスのかけ方に整合性がない。
シンクロナイズドスイミングを見るかのような連動性もまた、ない。
わずか五年で全く違うチームに変貌を遂げてしまった。
既にここでわしはボカJの敗戦と見切ってしまった。
ゲームは、ミランの手中にあった。
ミランのプランニング通りにゲームは進んでいた。
これがゲームを支配することなのだ。
ミランは中盤以降が安定していた。
ピルロ、ガットゥーゾの二枚ボランチに加えセードルフも元来 ボランチタイプの選手だ。
守備力は高い。
対して、ボカJの中盤は不安定だった。
ボールが落ち着かない。
五年前に見た狡猾さも鋭さもない。
バタグリアは五年前同様に精力的にスペースを埋め、カカのチェックに走り、 DFのサポートに入るが、
これに他の守備陣が連動していない。
ワンテンポ遅れるのだ。
象徴的なシーンがある。
引退目前、最後のビッグマッチと言われるマルディーニ。
彼がサイドを駆け上がって行く。
ゴール前に迫る。 シェフチェンコ、カカのみならずカフーの攻撃をも封じ込めたのが、前回である。
元来カフーとマルディーニの攻撃力は比較にならないのだ。
なのに、マルディーニが易々とオーバーラップをかける余裕。
ゲームが崩れるのは時間の問題と想えた。
それでもパラシオ、パレルモ、バネガの三人はチャンスメイクに勤しむ。
哀しいかなチームとしての連動性はここでも欠如している。
失点後のCKで同点に追いついたのはさすがだが、
「決勝」と呼ばれる試合で集中力を欠くミランも褒められたものではない。
この時には既に、ゲームは崩れ始めていたのだ。
後半に入り、ネスタがシュートを突き刺す。
ボカJに焦りが見えた。
いつもならビハインドでも慌てず虎視眈々とチャンスを窺う雰囲気を 漂わせるのがアルゼンチン代表であり、
アルゼンチンのチームなのであるが、 慌てて追いつこうとしているのが見てとれる。
対してミランはイタリアのチームだ。
昨年のワールドカップでDFを崩し点を取りに行ったドイツを カウンターで沈めたのが、イタリアである。
バランスを崩した部分を攻める底意地の悪さでは世界一と言っていい。
ゲームは、音を立てて崩れていった。
記録的な得点数は、崩れたゲームの瓦礫だった。
目が粗く、更に穴の開いた網からこぼれ落ちた雑魚のような得点だった。
もちろん、カカのプレイは素晴らしく賞賛に値するものであったし、
ワールドカップで怪我に泣いたネスタが得点を挙げたのも素晴らしい事であった。
セードルフ、バタグリアは前回同様に素晴らしい働きを見せてくれた。
バネガ、パラシオは将来性も含め今後も注目していたい選手である。
マルディーニ、カフー、インザーギ、パレルモ、 ベテランの彼らも生き生きとしたプレイを見せてくれた。
しかし、チームとして、ゲームとしてどうだったかと問われれば、
あまりに大雑把な、美しさに欠ける試合だったとしか言い様がない。
余談だが、ボカJのルッソ監督は更迭されるようだ。
敗戦するにしても内容が酷すぎる、そういうことだろう。
ボカJの再起を期待したい。