福島原発事故に関するサル理解

Upload:2011.3.31未 明 同日21時制御棒に関し追加)

 

TVではどうしても情報に限度が有り、また文系であろう アナウンサーと専門の学者では意思の疎通自体も難しいようで要を得ない。

そこでわしなりに勉強し、サル並ではあるが理解した 処と現状から原子炉がどうなっているのかを推測してみたい。

これはあくまでも2011.3.31までに知り得た情報から考えたものである事をお断りしておく。

 

その1

原子力発電所の基本構造

 

核燃料の熱で水を沸騰させ、その蒸気圧でタービンを 回して電気を起こす。蒸気となった水は冷やされて圧力容器に戻される(図1

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(図1

http://www.tepco.co.jp/nu/knowledge/system/index-j.htmlより転載

原子力発電所は放射性物質が外に漏れないように五層 からなる遮断を行っている。

A.酸化ウランペレット:これ自体に放射性物質を閉じこ める働きがある。2800℃で溶ける

B.ジルカロイ:A.を 密閉する。1200℃で溶ける。

A.B.を 併せて燃料棒と呼ぶ(図2

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(図2

燃料棒を数万本合わせたものを炉心と呼ぶ(図3

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(図3

 

C.圧力容器:超高圧に耐える鋼鉄製の容器。1500℃で溶ける。圧力開放バルブを持つ。

D.格納容器:C.や パイプ、ポンプなどを容れる。鋼鉄+コンクリート製。圧力開放バルブを持つ。

E.第二の格納容器:D周囲を取り囲む分厚いコンクリート(図4

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(図4

 

建屋はただの屋根囲いであり放射性物質の閉じこめに はなんら関係がない。

 

その2

なぜ核燃料は熱を持つのか

 

そ もそも原子自体は莫大なエネルギーにより陽子と中性子が結合して成り立っているが、ウランやプルトニウムはこの原子が比較的分裂し易いため核燃料として用 いられる。原子は分裂すると結合に関わるエネルギーが熱として放出される。ウランが分裂すると中性子を放出しその中性子のエネルギーが次のウランの分裂を 促す。これを原子核連鎖反応と呼び、分裂により放出された中性子の数が安定している状態を臨界状態と呼ぶ。

更にウランは分裂してすぐ安定した物質になるわけで はなく、安定した物質になるまで分裂を繰り返す。その課程に生じるのがプルトニウム、セシウム、ヨウ素、テクネチウムなどである。

したがってウランの核分裂が停止、すなわち原子炉が 停止しても他の生成物質の分裂は続き、余熱が生じることになり、その熱量は臨界状態の7%程度であ る。

 

その3

メルトダウンとは

 

日本語で書けば炉心溶融となり、上記ABからなる燃料棒が溶ける事である。

つまりは燃料棒が発熱しおおむね2400℃を超えなければ起こらない。(先ほどのAの 融点と異なるのは生成法や原子炉稼動履歴で融点が変化するため)

しかし一旦これが生じると2400℃ 以上の熱を発し続けるため、冷却が行われなければ圧力容器、格納容器をも損傷し続け、最後には環境内に大量の放射性物質が放出されてしまう可能性がある。 マスコミで恐怖の大王扱いされている「メルトダウン」とはこの事であろうと思われる。つまりマスコミに於けるメルトダウンとはいわゆるチャイナシンドロー ムの事であろう。(図5

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(図5) 向かって左が狭義のメルトダウン。

右はおそらくマスコミが恐れているメルトダウン。

ただしスリーマイル島での事故の際、圧力容器内に滴 り落ちたメルトダウンを起こした燃料棒、つまり炉心溶融物は炉心の50%に至ったが、23cm弱の圧力容器の内損傷を受けたのは1.6cm弱 であったという記録があり、メルトダウンにより圧力容器自体が破壊される可能性は極低いと思われる(注:下記追加の如くの構造なので底部は脆い)。もちろ ん、既に地震で破壊されていれば話は別である。

 

その5

福島原発の構造から損傷部位を考える。

 

http://nikkei225kuroiwa.blog90.fc2.com/blog-entry-4338.html

http://nikkei225kuroiwa.blog90.fc2.com/blog-entry-4340.html

正しい構造図は上記リンクを参照されたい。

ここでは損傷を推測するための略図であるので細かい 構造は無視している。

broken.jpg

(図6

1.使用済み燃料棒と使用済み燃料プール

2.炉心(核燃料+ジ ルカロイ)

3.圧力容器

4.再循環ポンプ

5.格納容器

6.圧力抑制室

7.セメント構造(第二の格納容器)

8.圧力開放ベント(圧力容器、格納容器にそれぞれ付 随)

9.主蒸気管(熱せられた蒸気が通る)

10.給水ポンプとパイプ(復水器で液化された水が原子炉 に戻る)

11.タービン

12.発電器

13.復水器

14.原子炉建屋

15.タービン建屋

16.制御棒(下方から炉心に挿入される)←追加

 

まず放射性物質の源は1.2.である。

現時点123号機で2.のメルトダウンが生じている可能性が高いと言われており、1.もプール内の水が干上がり加熱したため少なくとも燃料棒の損傷は生じていると思われる。

4号機では原子炉は休止中であったので1.のみの損傷であろうと考えられる。

1.の損傷(ジルカロイの損傷)だけでも相当量の放射性 物質が放出されると考えられるが、その放出を遮るものは事実上皆無である。

2.の損傷、メルトダウンの場合は更に多量の放射性物質 が放出される事になるが、その場合は放出経路が下記の如く多岐に渡る可能性がある。

a)3.5.7.の損傷

放射性物質を閉じこめる為の構造自体の崩壊を意味す る。これら全ての損傷が最悪の状態である。

なお福島原発では制御棒を下方から炉心に挿入する構 造となっており、このため圧力容器下方が比較的脆弱であるためこの部での損傷が疑われている。

b)4.6.の 損傷

圧力容器または格納容器に付属する構造の損傷。2号機では6.付近で爆発音が生じたと の情報もあり、a)よりも可能性は高いと考えられる。

c)8.の損傷

開閉に不具合が生じていたのは事実であるが、内圧の モニターが上下していることを考えると可能性は低い。

d)9.10.の 損傷

構造上もっとも脆弱な部分であり、損傷の可能性は最 も高いと思われる。高濃度の放射性物質を含む水が漏出、15.内に貯留していたが、 炉心が損傷しているのは必至であり、かつ海水の注入を行っていたのだから、圧力容器内の水は当然超高濃度の放射性物質を含む事になり、その圧力容器に直接 に繋がっている9.10.が 損傷していれば当然漏出する水は超高濃度の放射性物質を持つことにもなろう。

e)13.の損傷

 復水器に穴が開いて、海へと繋がるパイプにも穴が あれば15.内に水をたたえても不思議はない。しかしその場合には相当薄められる事 になり、超高濃度になりうるかどうかは疑問である。ただし海水内での放射性物質の検出には影響があるだろう。

 

ところで昨日付けで14号機の廃炉は決まったようだ。いやこれまでの経 緯から廃炉は必然の結果ではあったのだが。いろいろと推論までしてみたが、結局どこがどうなっていたのか解明されるのだろうか。事実が解明される事無く、 石棺の中に葬られる可能性もあるのだろう。

 

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