犬を飼うこと・・・。悩みました。
寂しそうな目で自分の未来を見つめ、何かを訴えるような目をしていた小さな小さな仔犬。コージとの出会いは、私が知っていた仔犬とは違うものでした。天真爛漫のかわいくて、マシュマロみたいでふわふわして、という印象ではなく、何か悟りきったような目をして、ゲージから外を見つめ、誰もいないとわかると、ゲージの奥へ引っ込み、じっと暗がりからこちらを見つめていた仔犬でした。
 デパートでは、暗がりに置いたほうが、ライトがんがんのところより、犬は落ち着くと言っていましたので、暗がりにゲージを置いていたこと自体はかわいそうだとは思いませんでした。
 ただ、上下で同じようにゲージに収まっていた他の仔犬たちとは違う瞳をしていたのがコージでした。
 「連れて帰らなければならない」と雷に打たれたようになったのがコージを飼うことを予感させる気持ちでした。
 ただ、それからがたいへんでした。犬が苦手な夫に承諾を得(私があまりにもぼろぼろになって泣き続けていたので、夫も承諾するしか他に手はないだろうと思ったようです)、本当に犬を一生面倒見ることができるだろうかと、考えに考え抜きました。
 フード、医療費、欠かせない散歩、外出、仕事に制限が加わる毎日、これを耐えられるのかどうか、悩みました。
毎日、恐ろしい数の犬たちが無責任な私たちによって処分という名の下に「殺されている」現実(ガス室送りです!犬だって苦しいのです!)を知ると、1匹でも生まれてきてしまった犬は救わなければいけないのか?とも思いました。自分に命を預かる自身があるのかと思うと恐ろしくて、一度はケースに入れられたコージを「飼い続ける自信が持てないから」と断って帰ってきてしまったくらいです
断ってしまうと、裏切ったようで罪悪感にさいなまれました。結局、忘れきれずにその仔犬を我が家に向かいいれることになりました。覚悟を決めて迎えに行ったら・・・。
「お渡しするのは2週間後です。お腹から回虫が見つかりました」
2週間もお預け!?助かったような、悲しいような、複雑な気持ちでした。仔犬の2週間は長いです。躾けもしたいし、かわいい仔犬時代をこのデパートのゲージで!!
 この間を利用して、コージを迎え入れる準備をすることにしました。ゲージを取り寄せ、ペットシート、フード、消臭剤、ブラシなど買い込みました。リビングがみるみるうちに犬グッズに占領されていきました。休みの日は、なるべく仔犬に会いに、デパートへ通っていました。
 そして2002年5月4日午後、ついに、私たちは仔犬を我が家に連れ帰ったのです。ピンクの紙製の箱に入れられた小さな仔犬。地下鉄の中で、ちょっと泣き声をあげました。
 見ず知らずの家にこうやって連れてこられたのです。その日から、地獄の日々、糞尿にまみれる育児時代の幕が空けたのでした。
 今ですか?あの頃の大変さがうそのように、楽なものです。コージはしっかりと家犬と化しました。

コージを迎え入れるまで

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