車中にて

2004年7月、コージの初長距離ドライブ決行の日。
それまでは、クレートに入った状態で、数キロばかり車で移動、というだけだったので、本格的なドライブというのは今回が初挑戦。夫には大丈夫、大丈夫、なーんて言ってたけど、私の内心はびびっていた。だって、車酔いをする犬もいれば、車が嫌いで終始吠え続ける犬もいるとあちらこちらのHPに書き込みがあるのだから。

しかも、出かける時になって、クレートが入るスペースなんてない!と言われ、ますますあせる私。ペットシーツを後部座席に敷き、この上にコージを座らせておくしかない。もしここで、コージが車内で吠えまくり、嘔吐したら・・・。考えるのはよそう、もしそんなことになったら、父が「お前たち、ここで降りろ!」と怒り出すに決まっている。無事山形にたどり着けるのか?なにせ、予行練習もなく、いきなりコージを車に乗せたからなあ・・・。

渋滞に巻き込まれる前に首都高を脱出したいドライバー(父)は、先を急いでいる。早く荷物やコージを車に乗せなければ!とあせる母が彼を車に乗せようとすると、へたれ犬コージ、地面にぺしゃんこになって猛抵抗。「こわいよー!」と顔が言ってる。それを見た母は大爆笑。笑っていてもしかたがないからよいしょと抱き上げてとにかく車中へ。玄関を出てから出発まで所要時間は数分間。嵐のように車は山形に向けて出発進行したのであった。

強制車中の犬となったコージは、座席の上におすわりポーズ。心臓はバクバク、呼吸も荒く、緊張しまくり。隣で私は彼を撫で、「これからねえ、涼しいところに行くんだよ、緑もいっぱい、自然の中で遊ぼうね」とコージを落ち着けるのに必死。とにかく、無事に山形まで連れて行かなければならない。
撫で続け、話しかけ続けたのが功を労したのか、飯田橋の首都高入り口までの間に、コージは2、3声吠えただけで、それから先は、一声たりとも声を発しなかった。景色が後ろに飛んでいくのがおもしろいのか、外を見るのに夢中になってしまった。さすがは好奇心旺盛犬である。
私の心配をよそに、東京を脱出する頃には、ご機嫌な趣で車中の犬となったコージであった。

ドライブも中盤戦となると、コージも外の景色には興味を示さなくなり、緊張が取れると同時に疲労と睡魔がやって来たようだ。
大人しくその場で寝てくれれればいいものを。
思いっきり甘えようと企んだのか、奴なりに甘えの極意を使ってきたのだ。

1.まず、私の方に向きを変えて、私の二の腕と背もたれの間に自分のあごをねじこみ、それはそれは愛らしい瞳で私を見つめる。(私はあなたが大好きよ、という夢見る乙女のようにきらきらとした瞳であって、おやつのおねだりのときの瞳とはちょっと違う。もっともっとキラキラ、ウルウルしたお目目なのだ)
「なんてかわいいんでしょう」と騙されていることに気づかぬ私はコージの瞳に見入る。

2.数分後、コージのあごは、私の肘の上にある。
(この時点でもまだ次に何が起こるのかがわからない間抜けな私)

3、それから1、2分後、彼の首は片腕を超え、膝に差し掛かっている。(???なんじゃ?)

4.またまた1、2分後、彼はほふく前進のまま、私の腕を超え、片側の膝の上にあごを乗せてしまう。
(私の腕を前足で引っかきながら前進するので、痛い)

5.あれよあれよという間に、彼はほふく前進を続け、私の両膝の上に、とっぷりと長い胴を埋める。後半戦はかなり強引に膝の上に乗ろうとするので、私の腕は彼の足の爪にひっかかれて、かなり痛い。
(暑い、重い!
私の膝やお腹にはじっとりと汗が・・・
おまえは暑くないのか、コージよ。お前は暑いのが嫌いのはずでは?)

6.暑さにたまりかねた私は「暑いから、独りでそっちに行きなさい!」と12キロ近い彼の体を抱いて、もとの座席に彼を強制送還。

7.が、数分後、また彼のあごは私の二の腕と車のシートの間にねじこまれ、上記1から6の繰り返し。

何故に暑いのに膝の上が気に入ったのか。
私は延々と数時間、コージを膝から引き剥がし、引き剥がし、を繰り返したのだ。こんなにコージがあきらめの悪い奴だったとは知らなかった。
こんなことに何度か根負けした私は、何度かコージを膝の上に乗せ続けた。どのくらい経ったら暑くなって自分から膝を降りるかなと実験も試みたが、数時間経ってもコージ自らの意思で膝を降りることは無かった。やれやれ・・・

当初は車に乗るのを嫌がったコージであったが、旅も後半戦になると、自ら車に乗り込んで来るようになった。今やすっかりドライブがお気に入り。これで何処にでも連れて行けると、明るい未来を見る私であった。
さあ、次は飛行機に挑戦だ!
(いつのことやら?)

外も見飽きたな
次はママの膝の上さ!

よし、ここまで来たぞ、後一息だい!

これで完了。全身膝の上に乗ったよ

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