マルチ商法


 販売と消費が一体化したしたビジネスです。米国ではマルチレベルマーケティング(multi level marketing)と呼ば
れていることから、マルチ商法と呼ばれるようになりました。友人や知人などを勧誘して販売組織を拡大し、ピラミッド
型の多層的な組織形態を作ることから、マルチと表現されています。法律上は、特定商取引法により、連鎖販売取引と
して規制を受けます。

  マルチ商法と言った場合、違法なビジネスというイメージがあるため、マルチ商法を行なっている人たちは、マルチ
商法とは呼ばずに、ネットワークビジネスあるいは、MLMマルチレベルマーケティング、multi level
marketingの略称。米国でよく使われている)と称するようです。


  いわゆる良いマルチ悪いマルチの二元論がありますが、これはどういうことでしょうか。日本でマルチ商法が社
会問題化したのは、米国からホリディマジック社のマルチが1970年代に上陸し、被害をもたらしたことが始まりです。
ホリデイマジック社は米国連邦委員会(FTC)の審決(1974年)により違法とされ、日本でも公正取引委員が違法と判
断しました。これが悪いマルチであり、ピラミッド商法ピラミッドスキーム等と呼ばれました。

  その後、アムウエイ社マルチがFTCの審決にかけられ、FTCは1979年に同社の販売方法の一部については違
法性が認められるものの、アムウェイ社の販売方法自体には違法性はないと判断しました(違法なピラミッドスキー
に陥らないためのセーフ・ガードがあると判断)。このFTC判断を御旗として、いわゆる良いマルチが米国で流行
し、世界に拡大していきました。

  たしかに、米国では、マルチ商法についての消費者問題をあまり聞きません(近年問題になったインターネットマ
ルチSkyBiz等はある)。問題は、それを受け入れる人々の国民性や習慣にあるようです。日本や韓国等アジア諸国
では、年齢や職場での役職、先輩・後輩等の人間関係が上下関係として存在していること多くあり、そうした上下関係
を利用してマルチ商法が広がり、トラブルが発生する傾向があるように思われます。

 米国では、仮に良いマルチであっても、他の国で問題がないとは言えないのです。日本では、MLMの良さを高らか
に謳う本とマルチ商法を断罪する本の双方が多数出版され、論争合戦にもなっています。


参照:細川幸一「米国におけるマルチレベル販売(連鎖販売)規制の現状」早稲田大学法研論集第74号(1995年)239頁


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