家庭科は本当に学ばれているのか?


  家庭科教育の重要性が理解されていない。高校での家庭科廃止論や、受験に関係ないからとまじめに授業を行わ
ない学校が多いということも良く聞く。

  そんな中、各地の高校で、学習指導要領で必修となっている世界史の授業が行われていないことが発覚した。大半
の学校が、実態は必修科目を履修させていないにもかかわらず、教育委員会に対しては、指導要領通りに履修をして
いたと虚偽報告していたという。文部科学省は事態を重く見て、各教育委員会に対し、実態を把握して回答するよう求
めたという。

  ある高校では、3年生322人のうち普通科理数系と理数科の生徒192人に2年時、必修の世界史も選択科目と
し、日本史と地理を併せた3科目の中から1科目を選ばせて、履修させていた。受験対策で4、5年前から同様の手法
を続けていたのだという。同校長は「責任を痛感している。受験や卒業に影響のないように早急に対応したい」と話した
というが、私には疑問がある。

  現生徒に対しては補習で今後授業を行えば、たいへんであってもそれでよかろうが、卒業生はどうするというのであ
ろうか? テレビで、「卒業生には責任はないので、不利益を被ることのないようにしたい」とある校長がコメントしてい
たが、必修科目を履修していないとすれば卒業要件を満たしていなかったわけで、生徒に責任がないから過去のこと
は問わないでは済まないのではないか?。しかも、履修したように見せかけていたとすれば、成績表の評価はどうなっ
ていたのか? 教育委員会にだけ虚偽の報告をしても、成績証明書に履修の記録がなければ、入学する大学での書
類審査は通らないのではないか? 仮に成績証明書も偽造していたとすれば、内申書等の大学入学に必要な書類も
偽造していたこととなり、大きな問題となる。

  世界史がこのような状態なら家庭科が重きを置かれないのもうなずける。大学の授業で学生に今までに経験した消
費者教育について尋ねているが、進学校出身者ほど消費者教育を受けていない。家庭科の授業が少なく、社会科で
はあまり消費者教育は行なわれていないからである。

  そもそも教育の目的とは何か? 第一は、この現代社会で生きていく知識や知恵を養うことであり、第二に人権等
他人に対する思いやりや社会に対する責任感を育てることではないのか? 第一の課題については、受験勉強偏重で
学科目の知識はあるが知恵のない子どもが増えている。第二の課題については、大人(教員)がルールを無視して、
大学合格率を競うという態度でいながら、社会の一員としての自覚を持つべしなどという教育ができるのか?

  教育をサービスと考えれば、需要があって供給があるはずである。供給サイドの高校だけでなく、需要サイドの親も
よく考えなければならない。そして、受験科目を決定している大学も何が人間にとって重要であり、大学教育の使命は
何なのかについて自問する必要があろう。

                                                              細川幸一

トップへ
トップへ
戻る
戻る