銀行の常識は世間の非常識


 銀行はいったいどういう判断規範、行為規範をもって業務を行っているのだろうか?
  
  東京地裁は9月26日、倒産状態で夜逃げした会社に誤って振り込んだ約120万円を東京三菱銀行が返還せず、送
金先への貸金と相殺して回収したのは不当として、武蔵製鋼所(東京)が同銀行に返還を求めた訴訟の判決で、請求
通り全額の返還を命じた。

  同行は誤送金先の会社に融資していたが、同社が倒産状態となったため、振り込まれた金を貸付金と相殺する形
で回収していた。判決は「誤送金と知りつつ自らの債権回収を優先させたのは、棚からぼた餅的な行為で許されない」
と批判している。至極当然の判断である。

  それにしても送金が誤りだと知りつつ、自分の債権回収にそれを充ててしまい、なんとも思わない銀行の判断はな
んなのだろうか? 非常識にもほどがある。

  日本には大きく分けて二つの産業があるといわれる。一つは自動車、家電産業のように市場における熾烈な競争
の中で創意工夫し、良いものをより安く提供するよう努力し、世界の消費者に支持されている産業である。もう一つは
官庁に保護され、あるいは官庁と癒着し、競争をすることなくどっぷり談合につかり、コスト意識を持たず、消費者を軽
視する金融や建設業である。
 
  霞ヶ関の顔色ばかり伺う姿勢が染み付いているから、銀行は自分たちがいかに非常識なことをしているのか、未だ
に気付いていないのであろう。

  細川幸一


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