行政の怠慢が被害を拡大させた住宅リフォーム



   9月15日付「訪販ニュース」が「透けて見える行政の怠慢 住宅リフォーム騒動の背景@」で興味深い指摘をして
いる。悪質な住宅リフォームで高齢者や認知症者に被害が拡大しているが、この問題を3年前に指摘した国民生活セ
ンターの要請に経済産業省と国土交通省が応えず、適切な措置を取らなかったことが被害を拡大させたとの趣旨であ
る。


   国民生活センターは2002年には「訪販による住宅リフォーム工事に係わる消費者トラブルの現状と被害防止策
と題する調査報告を公表して、手口の悪質化、契約金額の高額さ、社会的弱者である高齢者への被害の集中などの
問題を指摘していた。同時に、同センターは経済産業省に対しては特定商取引法違反者に対する指導と取締りの推進
を、国土交通省に対しては、トラブルは建設業法上、業者登録を必要としない軽微な工事(一件あたり500万円未満)に
多いとして、同法の見直しと標準約款の策定を要請していた。両省庁がこの要望を棚ざらしにしたことが被害の拡大を
招いたと同新聞は主張している。


   今年の7月になって、政府〈内閣府)は「住宅リフォームに関する消費者トラブルに係る関係省庁等担当課長会議
を立ち上げ、省庁ごとの対策を決めたが、遅きに失した感は否めない。なぜこのようなことが起きるのか?


   第一に、消費者苦情の情報源である国民生活センターと実際に規制を行う各省庁との連携不備である。国
民生活センターの関係省庁への要望には法的権限の裏づけがない。そのために言い放し、聞き放しということも多い。
国民生活センターに法的な勧告権を付与するとか、あるいは各省庁に要望に対しての対策を義務付ける等の法整備
も必要であろう。国民生活センターは内閣府所管の独立行政法人であるために、監督下にない法人からの要望等に
対して各省庁はあまり真剣に耳を傾けない傾向がある。国民生活センターの意向を受けて内閣府が関係省庁に要望
を出すとか、内閣府が政府における消費者行政の主務官庁なのであるから内閣府の権限で各省庁に対策を指示する
等のイニシアティブを取るようにすることも検討すべきである。


   第二に、日本の行政に伝統的に存在する中小企業への行き過ぎた配慮である。今回のトラブルは建設業法
上規制を受けない少額工事を行う業者によるものが中心である。国土交通省は未だに500万円未満の工事の許可・届
出制度については規制強化につながるとして法制化の意向はないという。中小企業が影響を受ける消費者法制の立
法過去の論議でも、必ず、「中小企業をつぶす気か?」といった官僚の反対論がよく聞かれた。結局こうした悪質な業
者を放置することの方がまっとうな中小企業も市場での信頼を失い、商売ができなくなるという側面に気付いていない。
  

細川幸一

国民生活センター2002年発表資料

国民生活センター2005年発表資料

関係省庁等担当課長会議資料


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