主体的学習の重要性 〜 実践的 消費者教育


●自ら考え、表現することの重要性

  日本消費者教育学会は毎年「消費者教育学生セミナー」を開催している。これは教員を目指す大学生等を対象
に、消費者教育の重要性を理解してもらい、将来の消費者教育の担い手を養成することを目指している。

  2005年度は独立行政法人国民生活センターとの共催で、同センター本部(神奈川県相模原市)の研修施設で9月4
日から一泊二日で行われた。

  横浜国立大学、日本女子大学、鎌倉女子大学、相模女子大学、椙山女学園大学等の大学生・大学院生を中心に
53名の受講生があった。

  セミナーは消費者教育を専門とする大学教員等の講義と学生のグループ討議で構成され、最後にはグループごと
に消費者教育の重要性等について発表する機会が設けられた。 
  

 
                                     

  グループ発表は6つのグループに分かれ(一グループ6名から11名)、それぞれ、特定のテーマ(「消費者教育の原
点」、「消費者政策と法制度」、「消費者教育とマーケティングの視点」、「家庭科教育と消費者」、「市場経済のなかの消
費者」、「消費者教育と社会福祉の視点」)のもとで、教員がアシストしながら、学生自身が議論して、発表内容を固め、
模造紙2枚にまとめて発表する形式であった。

  グループ討議ではわずか2時間ほどの中で学生が自主的に司会や報告者を決め、ポスター作成にいろいろ工夫を
施しており、感心した。講義のときとはまったく表情が違う。ここで感じたのは主体的な学習の重要性と、グループで競
わせる(最後に投票を行って表彰した)ことによって学生の学習態度が飛躍的に向上するということである。

  消費者教育は単に教科書を読ませたり、事柄を覚えさせるのではなく、主体的な学習、体験学習を通じて、消費生
活上の知恵(「消費者力」)をつけさせることが重要であると指摘されているが、まさにその思いを強くした。

  ただし、そこでの問題はこうした教育には手間がかかるということである。今回のセミナーも10名を超える大学教員
等の指導と国民生活センターの事務的な支援があってはじめて開催することができた。消費者教育が学校の現場でな
かなか進まない理由がこうした点にあろう。

  セミナーの受講生は何らかの形で大学で消費者問題や消費者教育関連科目を受講したり、研究している学生が中
心であるが、53名中男性はわずかに4名であった。これは消費者関連科目を教える大学が女子大に偏重していること
による。総合大学や教員養成大学で消費者教育等の科目や指導者を充実させる必要がある。

  学生セミナーの指導教員中、数名は十数年前の「消費者教育学生セミナー」受講生である。とすれば、今回の受講
生の中から10年後、20年後に消費者教育を専門とする大学教員等が生まれるかもしれない。そんな思いを胸に抱きな
がらのセミナーであった。
   
    
  

    「消費者教育学生セミナー」の詳細: 日本消費者教育学会HP 



●楽しみながら学ぶことの重要性
 
  3年生のゼミで悪質商法対策ゲーム(編集・発行 消費者教育支援センター、840円)をしてみた。すごろく式のいわ
ゆる人生ゲームで、途中で就職、結婚、トラブル、悪徳商法等を経験しながらコマを進め、最後にスコアを競うものであ
る。中学生くらいから成人までを対象として、5人まで参加でき、30分〜40分程度で終了する。

  ゲームを通して、どのような悪徳商法があり、それの防止や被害にあっ場合の対処方法(消費生活センターへの相
談依頼やクーリングオフ)について学ぶものである。はじめる前は半分ばかにしていた学生もはじめってみると夢中とな
り、非常に盛り上がる。このゲームを通信教育のスクーリングでも学生にさせてみた。ゼミ生に比べ学生の平均年齢は
かなり高く、20歳代〜60歳代であったが、十分に楽しみながら学習できたという感想が多かった。年齢を問わず、こうし
た参加型の学習は効果があるように思う。






  学校で、教科書を読ませて、クーリングオフできる商品やその行使の方法を教えても生徒の頭にはなかなか残ら
ず、それを将来知恵として活用することはなかなか期待できない。それよりこうした形で悪徳商法を疑似体験させた方
がはるかに効果的であると思う。ゲームシートの裏側には悪徳商法の解説があり、ゲームが終了した後で教員がコメ
ントしたり、生徒・学生に議論させることもできる。また、教員側の負担も少なく、扱い易い。

  こうした教材の普及に行政・学校は努めるべきである。


                                                                細川幸一




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