「災害消費者」について考えるときでは?

  

  最近、大規模な地震が相次いでいる。8月16日には宮城県南部を中心に強い地震が発生した。この地震で東北
新幹線が10時間に渡り、ストップし、停車した車内に8時間も閉じ込められた乗客もいる。電気がストップしたために冷
房が切れた車内に缶詰にされ、気分が悪くなる人が続出したという。

  過日の、新潟の大地震で、上越新幹線が脱線した光景を目の当たりにみれば、地震で脱線せず、急停車したこと
は評価しなければなるまい。しかし、それでもこれほどの長時間にわたり、車内に缶詰にされるような状況は何とかなら
ないのであろうか? 線路の安全確認をした上で、列車の運転再開を図るの当然であるから、それに時間がかかるの
はやむをえない部分もあろう。しかし、電気の供給や、救援措置はもう少し機敏にできないのであろうか? このような
猛暑のときに、冷房の効かない車内に8時間も閉じ込められることは、場合によっては身体の危険性を生じさせる。停
車した列車から線路に降りるための非常用階段が2つしか装備されておらず、全員が降りるまでに1時間かかったとい
う。エンジンで走る救援車両等も検討すべきである。


  東海地震の発生も予測されているが、こんな話を聞いた。東海地方で大地震が発生すると、かなりの本数の東海
道新幹線の列車が静岡県内で立ち往生するという。今回の宮城の地震のように線路に影響がなければよいが、もし打
撃を受けていれば、列車の運行は中止となる。その場合、何千人にもなり得る乗客のその後の安全確保、帰宅できる
までの生活援護の責任について、静岡県とJR東海でなすりあっているのだという。乗客を列車から安全に降ろせば、
あとは自治体の責任であると主張するJR東海と、自治体には住民のために責任はあるが、輸送中の乗客については
運輸機関が責任を持つべきとする静岡県で意見の対立があるらしい。結論が出たのか承知していないが、われわれ
消費者も出かけるときには、携帯ラジオやある程度の食料と飲み物を持参するくらいの対応が必要かもしれない。

  宮城の地震ではトンネル等、携帯電話が使えないところで列車がストップし、車内の公衆電話長い列ができたとい
う。公衆電話がテレフォンカード専用で、車内のテレフォンカード販売機が旧千円札しか使えず、買えない消費者が続
出したなどという話まであり、非常時になってみないと分からないことはたくさんある。車内販売、自動販売機の飲食物
もすぐに売り切れたそうで、非常時のためのある程度の飲食物のストックも必要かもしれない。

  話は変わるが、最近東京では湾岸地区の高層マンションが流行である。30階、40階の部屋から海を眺めて暮ら
すなどだれもが夢のように感じているだろう。しかし、最近、高層避難民などという言葉が聞かれ始めている。もし、電
気が長時間ストップし、エレベーターが動かなかったらどのように住民は出入りするのであろうか? また、水道の供給
が止まった場合、給水車が手配されるだろうが、ポリ容器に水をもらって、30階、40階の部屋まで階段を上って運ぶ
のか? 地震による揺れについても構造上は耐震性に問題ないとされているが、現在の建築物は揺れない構造では
なく、わざと揺れるようにすることで崩壊を防ぐ設計という。そのため、高層の部屋では数メートルも横揺れするという情
報もある。室内で怪我をして救急車を呼んでも、エレベーターが止まっていたら救助は困難である。

  「災害消費者」についての政策を早急に考えるべきである。
  細川幸一

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