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自民・公明両党のプロジェクトチームが、盗難カードによる預金引き出し被害について、金融機関が原則的に全額
補償し、預金者の軽い過失が立証された場合でも「75%補償」とすることで基本合意したことが報じられている。自民 党は当初「50%以上」の補償を考えていたが、公明党がさらなる預金者への配慮を求めた結果のようである。これに より偽造・盗難キャッシュカードによる預金の不正な引き出し被害について、金融機関に補償を義務付ける法制度が実 現する見通しとなった。さんざん預金者(消費者)の利益を無視し、法制化やむなしの状況とみるや、「自主規制で」と言 い放った銀行業界もとうとう外堀を埋められた形である。
銀行業界の消費者軽視の姿勢は消費者問題関係者には周知のところである。銀行の自助努力に解決を求めて
いては事は進まない。消費者の権利・利益を守る法制度が議員立法の形で実現することはたいへん望ましいことであ り、消費者保護基本法改正でもみられた現象である。与党・自由民主党の国会議員が最近、消費者の権利・利益を意 識した立法活動を進めていることは評価できるし、また公明党が与党であることで、さらにその内容がより消費者利益 を顧慮したものとなっているように思う。さらに民主党、共産党との与野党協議でより消費者の権利・利益が実現される ことを期待したい。大いにこの分野で与野党が政策を競い合ってほしいものだ。
それにしても銀行業界の姿勢はどうしようもない。たとえば、みずほ銀行が発足した2002年4月、システム障害
でATMで預金が引き出せなくなったり、口座振替の未処理、二重引き落としなどが大量に発生し、混乱は1カ月近く続 いた。私はみずほ銀行で自動引き落としを依頼しているが、このとき、東京電力、東京ガス等から自動引き落としの混 乱について詫び状が届いた。考えてみれば、東京電力や東京ガスも被害者である。その被害者から詫び状が届くの に、問題を発生させたみずほ銀行からは何の連絡も無い。そこで、同行本社に手紙を出し、見解を書面で回答するよ うに求めた。ところが口座のある支店から電話があり、書面では一切回答しない方針であるという。そして、お詫びは新 聞や店頭掲示でしているからそれを見ろというのである。要するに不安があればお前の方から尋ねたり、調べろという 態度である。
こんなこともあった。数年前、日本銀行金融広報中央委員会下で消費者教育についての検討会があった。学者、
金融関連の各業界団体、消費者団体等が集まった。ところが肝心要の全国銀行協会が欠席である。その理由が、な んと、協会の会長に人事異動があり、旧会長の「お別れ会」があるために出席できないというのである。身内の論理だ けで物事を進めようとする悪弊に気づいていない。
先日、住宅ローンの融資契約をある銀行と結んだ。契約書の印紙税を全額負担しろということだった。通常、領収
書を依頼すれば、印紙税を負担するのは事業者である。不動産の売買契約の場合は折半であった。なぜ、銀行との 契約だけは一方的に消費者が印紙税を全額負担しなければならないのか? 全国銀行協会の「よろず相談所」にj聞 いた。「明治以来の商習慣でそうなっている。それがだめだというならそのコスト分を金利で上乗せするだけだ」といつ もながらの消費者を小ばかにした態度であった。
金融分野ではまだまだ法制化しなければならない課題がたくさんある。
細川幸一
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