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不祥事相次ぐ日本航空(JAL)だが、5月14日のJL726便 (ジャカルタ−成田)において、客室乗務員の不手際で、
ミールサービスが遅れ、乗客70名分の機内食トレーを回収できず、座席の下に置かせて着陸するという事件が起き た。乗務員は機長には着陸準備が完了したと虚偽の報告をしていたという。アメリカの国内線に乗っているとサービス や清掃が適当だなと思うことはたびたびあるが、トレイを座席の下に置かせて着陸するなど聞いたことがない。
離陸許可を得ないで離陸しようとした不祥事はJALにも全日空(ANA)にもある。また、羽田空港の管制官全員が滑
走路の閉鎖を失念して、着陸許可を出すというような監督官庁側の信じられない不祥事もある。こうした状況をみると 鉄道もそうだが、飛行機に乗っていて、本当に安全なのかと思う。
サービスの低下も著しいと思う。国内線エコノミークラスでは各社一律機内食が出なくなった。空の旅の楽しみのひ
とつは食事であると私は思うのだが、その提供を航空会社は一切放棄した。それどころか、茶菓子の提供もやめ、最 近では新聞雑誌もあまり置いていない。また、国際線、国内線ともシートピッチがやたらに狭い。以前はシートピッチが 広めと感じたため、ANAを利用していたが、個人テレビ導入の新型シートの飛行機に乗ったときに狭くなったと感じた。 ANAに問い合わせたら、個人テレビの導入で娯楽性を増したので、狭くしたのだという。「娯楽性」と「居住性」は違うも ののはずである。エコノミー症候群が有名になったが、この狭さはサービスの良し悪しにとどまらず乗客の安全性に関 わる問題である。10時間以上の長距離フライトで、トイレに立ちづらく、我慢して病気を悪化させるような事態もあるよう である。最低限の広さを法律で定めたり、情報開示を義務付けるべきである。JAL、ANAともシートピッチをHP等では 表示していない。
このようなサービスの低下を招いてるのは、航空業界の談合体質に原因があると私は考えている。競争原理の導
入で、航空業界でもスカイマーク、エアドゥ、スカイネットアジア航空などが参入して、一時は競争原理によって料金が下 がり、より良いサービスが受けられと思ったが、新規参入組みの経営は芳しくなく、結局、JAL、ANAの巨頭の影響下で の経営にシフトしてきている。そうしたなかで、どんどんサービスを低下させてきている。通常、サービスの低下は顧客 を競争事業者に奪われることにつながるから、慎重であるはずだが、ANAとJALの従来のサービスの廃止はほぼ同時 期に行われており、談合のにおいがする。
もうひとつ談合のにおいがするサービス低下の例を挙げよう。マイレージのサービスにアップグレードがある。たとえ
ば、エコもミークラスのチケットでマイルを利用してビジネスクラスが利用できる。しかし、JAL、ANAともにこの条件を同 時期に変更している。JALでは「JAL悟空」、ANAでは「GET」料金の航空券のうち、事前購入割引の航空券について は、今年の春よりアップグレード利用をできなくしてしまった。両社ともこのお知らせはこっそり行ったという印象を持た ざるを得ない。
たしかに、空の旅が身近になったのは事実である。しかし、国内線の正規片道運賃をみるとむしろ以前より高くなっ
ている。以前のJAL、ANA、JASの3社体制よりも寡占化が進んでいるのではないか? 航空業界の安全性やサービス の低下の原因が過当競争にあると簡単に断じる論者もいるが、もう少し、考察が必要である。
安全性を確保した上で、競争原理によるサービス向上を目指す方策が消費者の参画を確保しながら議論されるべ
きである。
細川幸一
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