一の巻

「おい、お前」
「?」
「いや、お前だよ」
「うわっ、なんだお前」
「お前とは何だ。失礼なやつだな」
「お前だって、お前って言ったじゃね〜か」
「たわけ!どっちもお前と呼ばれたら読者が混乱するだろ」
「はぁ?読者って何だよ?」
「まぁ、お前には一生理解できないことだから気にするな」
「いちいち気に障るやつだな」
「とにかく、お前と呼ぶな。それ以外なら何でもいいから」
「じゃ、メガネ」
「たわけ!どこをどう見たらメガネをかけているのだ」
「うるせぇ、何でもいいって言ったのはお前だろ」
「だから、お前と呼ぶな」
「じゃ、メガネで甘んじろ」
「致し方あるまい」
「で、何の用だよ。エセメガネ」
「何のことだ?第一、急に呼び方を変えたりするな」
「何のことだ?じゃね〜よ。なんでここにいるんだよ」
「理由などない。エセメガネでもない」
「じゃ、消えろ。ダテメガネ」
「なんだお前は。理由なしに存在してはいかんのか?」
「あぁ、邪魔だから消えてくれ」
「では、お前がこの世に存在する理由は何だ?」
「メガネが付けば分かるからいいだろ」
「タイミングをずらして答えるな。読者が混乱するだろ」
「だから、読者って何だよ?」
「まぁ、お前には一生理解できないことだから気にするな」
「いちいち気に障るやつだな」
「繰り返すな。手抜きだと思われるだろ」
「メガネザルだって繰り返しただろ」
「お前が同じようなリアクションをするからいかんのだ」
「あぁ、腹減ったなぁ・・・」
「ほぅ、無視か」
「じゃ、カップラーメンでいいから作れ、バナナメガネ」
「もはや意味不明だな、お前という存在は」
「早く作れよ」
「ここに事前に作っておいたものがあります」
「なんで、そんなもんがあるんだよ。麺!のびきってんじゃね〜か」
「そして、ここにラーメンを食べ終えたお前がいます」
「は?」
「あぁ〜、やっぱこれだけじゃ足りねぇな」
「そして、ここにもう一つラーメンを食べ終えたお前がいます」
「は?」「は?」
「もっといいもん食べてぇな」
「お前はイチイチ文句ばかりだな」
「うるせぇ、メガネ日照り」「うるせぇ、メガネ日照り」「うるせぇ、メガネ日照り」
「いくら増えてもお前はお前にすぎんな。コメントが一緒か」
「こいつら消せ」「こいつら消せ」「こいつら消せ」
「うむ、うんざりだ。消そう」
「そろそろラーメンできただろ」
「なんだ、最初のお前が残ったのか」
「食う前に消されてたまるか」
「小さい存在だな。もっと大きな野望はないのか」
「ねぇよ。そもそも自分がなんなのかも分かんねぇのに、んなもんあるか」
「一理あるな。では、さしあたってお前に名前を授けよう」
「じゃ、もうお前って呼ぶなよ」
「ところでな、ラーメンマンレディ。お前はこれからどうしたい?」
「待て、ビン底メガネ。なんだ、その名前は!」
「今までの流れで、一番差し障りのない名前を付けてやったのだ」
「確かにラーメンは食ったが、男か女か分からん名前じゃねぇか」
「どこにお前が男である記述が?女である記述が?」
「なんとなく口調が男だろ」
「それは偏見というものだ。お前はやはり小さい存在だ」
「こんなんじゃ、俺がやりづらいだろ。どうにかしろ」
「ダメだ。こういう曖昧なキャラクターがいた方が便利なのだ」
「俺は何のために存在してるんだ?」
「こちらが先ほどした質問にようやく戻ったか」
「うるせぇ、早く答えろっ!メガネ曲げんぞ!」
「メガネはしてないと言うておろう。だが、お前のメガネこそ曲がっているぞ」
「は?俺はメガネなんかして・・・してる?なんだ、これは?」
「いい加減気付きたまえ。言わば私は神、お前は人。そういうことなのだ」
「認めねぇぞ!このイロメガネ野郎っ!」
「また来よう。そのときまで、この世界は時を止める。さらば、ラーメンマンレディ」
「だから、そのダサい名前・・・」

続く