五月るか(さつきるか)
 涙を流さないのは、幸せを知らないから。

±0才 ♂ 12月6日生まれ

好き:(特になし)
苦手:むくなもの、夜月
得意:営業スマイル

家族:父・下院鏡介、母・五月友子、異母姉・下院恵理、異母兄・下院一

氷の暇人
 下院鏡介の愛人の子。母親の支配的な愛情から脱却したくて、中学生の時、下院家にやってくる。中学時代は不登校気味で、南になにかと世話を焼かれた。高校には通わず、近所のコンビニでバイトをしている。協調性皆無のクールな人。いつもは無愛想だが、営業スマイルは秀逸。

るかと恵理(SS)
「ただいま帰りました」
 前髪をつたう雫が落ちて、その向こうにいる姉は、ずいぶんと驚いた顔をしていた。

「あんたも雨に濡れることがあるのね」
 トンと、こちらの目の前に湯飲みを置きながら言う。
「そりゃあ僕だって、雨が降って傘を持っていなかったら、雨に濡れることもあります」
 濡れた髪をタオルで拭きながら、当たり前の答えを返す。
「……まあ、それはそうだけど」
 姉はぼやいて、自分の分のお茶をすすった。
「私はね、るか」
 声に出して言ってから、姉は少し考え込んだ。
「昔、雨の中本を読んだことがあるわ」
 唐突に、そんなことを言う。
「もちろん、傘は差していたけれど、それでも本が濡れない訳じゃなかった。冷たい雨だった。ページをめくる指も悴んでた。それでも私は読んだわ。どうしてもその本を読んでしまいたくて。あのとき、私の身体は雨の中にあったけれど、心は何処までも自由に本の中を旅してた」
 姉の瞳は輝いていた。普段あまり見せない晴れやかな顔をしていた。
「私はね、るか。あなたがこんなにびしょ濡れになって、それでも心奪われたものがあったんだって。あなたの心を留める何かが、あったんだって、それで驚いたのよ」
 姉は薄く笑った。そしてその後に、今の話ネタにならないかしらと呟いた。
 るかは湯飲みを握り冷えた手を温めながら、雨の中の少女を思い出していた。

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